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2007-09-19

産科崩壊 「飛び込み出産」を日経BP「時代を読む新語辞典」が取り上げる@9/18→産科未受診妊婦の新生児死亡率は通常の18倍

9/18付の日経BP「時代を読む新語辞典」が
 飛び込み出産
を取り上げている。
非常によく練られた記述だ。


2007年9月18日 「飛び込み出産」

(もり・ひろし=新語ウォッチャー)

産科医療の世界で「飛び込み出産」が問題視されている。飛び込み出産とは、かかりつけ医を持たない妊婦が、臨月になってからいきなり産科医に飛び込んで分娩に臨むことを指す。このような出産は、医師がその妊婦に関する情報を把握できないために大きなリスクを伴う。だが妊婦の中には、経済的に困窮しているために検診費用を負担できず、そのまま臨月を迎えてしまう人もいる。この問題を解決するには、どうすればよいのだろうか?
先月、奈良県橿原(かしはら)市の妊婦が救急搬送中に死産する問題が起こった。この問題は当初、「受け入れ病院探しが難航した」という側面が大きく報道された。だがその後の調査において、この女性がかかりつけ医を持っていなかったことが判明している。女性は妊娠24週で流産経験があるにもかかわらず、妊娠後の検診を受けていなかった。かかりつけ医を持たない妊婦の場合、救急搬送時の病院探しは困難さを増す。この報道を契機に、「飛び込み出産」の問題を想起した産科医も多かったようだ。

通常は、分娩までに13〜14回の検診を受ける

妊娠した女性はふつう、妊娠判定後から妊娠23週までは4週間に1回、35週までは2週間に1回、分娩までは1週間に1回ぐらいの頻度で検診を受ける(厚生省児童家庭局長通知が示した目安による)。受診の総数は13〜14回程度だ。ところが飛び込み出産の場合、これらのプロセスがほとんど存在しない

感染症などが把握できないと、胎児や医療従事者の安全が保てない

飛び込み出産の事例数は、総分娩数と比較するとほんのわずかに過ぎない。だが産科を取り扱う多くの医療機関が、その受け入れを経験している。例えば館林厚生病院(群馬県館林市)の医師が発表した論文によると、同病院(1997年1月〜2002年9月)における飛び込み出産は25例(総分娩数の1.01%)。また日本赤十字九州国際看護大学(福岡県宗像市)の医師が発表した論文によると、福岡県内60施設(2002年)での飛び込み出産は68例(同0.36%)存在した。
このような出産には大きなリスクが伴う。医師がその妊婦に関する情報を把握できないからだ。例えば、母体に感染症があると、胎児や医療従事者にも感染するかもしれない。妊婦が母体合併症を持っている場合は、母児に後遺症が残る危険性もある。慢性的にマンパワーが不足する医療機関では、このような出産を受け入れる余裕はない

最大の原因は経済的困窮

ではなぜ、検診を受けない女性が存在するのだろうか? その原因のひとつとして考えられているのが「妊婦の経済的問題」だ。妊婦が出産までに負担する検診費用は10万円以上になる場合もある。これを捻出できないため、検診を諦める女性がいるのだ。中には、飛び込みで分娩した後、分娩費用を支払わないままにする母親もいるという。
妊婦の経済問題の背景には、様々な社会問題が隠れている。前述の日本赤十字九州国際看護大学の論文は次のように指摘している。飛び込み出産者の12%は、住所不定や家出中など生活拠点が定まっていなかった。また27%は健康保険にも加入していなかった。妊婦が複雑な家庭環境下にある例も多い。これらが原因となって、将来、幼児虐待が発生する可能性もあるという。

考えられる解決策〜行政により経済支援

この問題を解決するには、どうすればよいのだろうか? まず最初に考えられるのは、行政による経済支援だ。地方自治体の中には出産支援金を提供したり、一部の検診費用を無料化するところもある。厚生労働省の母子保健課は、今年1月に「妊婦健康診査の公費負担の望ましいあり方について」と題する通知を発表。その中で「(地方自治体は)5回程度の公費負担を実施すること」が望ましいとの意向を示している。
次に考えられるのは、妊婦に対する教育支援だ。例えば、中学・高校などで出産に関する教育を拡充することが考えられる。再び日本赤十字九州国際看護大学の論文によれば、飛び込み出産における「10代の妊婦」の割合は13%を超えている。これは「10代の妊婦」の通常割合である1.8%を大きく超える数字だ。

中高生、経産婦への教育・啓蒙も必要

また経産婦(出産経験者)への啓蒙も大切だ。館林厚生病院の論文が指摘するところによると、飛び込み出産者には経産婦も多い。経産婦は分娩を経験しているため、出産に対して安易な考えを持っている場合がある。日本の周産期死亡率(妊娠22週以後の死産と早期新生児死亡の総計)は2005年現在で出生1000あたり3.3だった。これは諸外国(アメリカは7.0、ドイツは5.9)に比べると低い数字だが、決して「ゼロ」ではない点に留意する必要がある。
現在、日本の産科医療は、壊滅的な状況にある。産科医は、過酷な労働条件に絶えながら高水準の医療を支えているが、それと同時に、訴訟や逮捕のリスクにおびえる日々を送っている。その結果、人口当たりの産科施設や産科医の数が少なくなってしまった。この状況は、妊婦の「出産難民」化も招いている。出産を取り巻くあらゆる問題について、早急な対策が必要になっている。

もり・ひろし

新語ウォッチャー。1968年、鳥取県出身。電気通信大学を卒業後、CSK総合研究所で商品企画などを担当。1998年からフリーライターに。現在は新語・流行語を専門とした執筆活動を展開中。辞書サイト・新聞・メルマガなどで、新語を紹介する記事を執筆している。NPO法人ユナイテッド・フィーチャー・プレス(ufp)理事。

基本的なところは大体押さえられていると思う。あとは「外国人の飛び込み出産」について言及されていると、いいかな。言葉の壁もあるだろうが、制度の違いが大きい上に、経済的な問題も孕んでいる。日系外国人が働く工場のある地域では、「未就学児」が問題になっているが、「飛び込み出産」もあるのではないか。

「飛び込み出産」の前提となる
 産科未受診妊産婦
には、
 高リスク妊産婦が多発
という報告もある。
9/15付時事より。


未受診で出産、高いリスク=子の死亡18倍、未熟児4倍−日本医科大分析

2007年9月15日(土)14:43

 妊婦検診を受けずに出産した場合、子の死亡率が通常の約18倍に上るなど非常にリスクが高いことが15日までに、日本医科大多摩永山病院の分析で分かった。

 救急搬送先が決まらず死産した奈良県橿原市の妊婦も、検診を受けておらず、この問題が注目されていた。中井章人教授は「検診の重要性を再認識させる結果だ。母子保健に関してさらなる啓発が必要」としている。

 同教授らは、妊婦検診を受けずに同病院に救急搬送されるなどした出産例を詳しく調べた。1997年1月から2006年1月までの9年間に34例あり、最年少15歳、最年長44歳。24歳以下の低年齢層が多く、24人が未入籍だった。

 このうち、死産と生後間もない死亡が各2例で、子の死亡は4人(12%)。妊娠22週から生後1週までの「周産期死亡率」は、全国平均の17.6倍だった。

 2500グラム以下の低出生体重児は12例(35%)で、約4倍の頻度だった。10例(30%)が、新生児集中治療室(NICU)への入院を要した。 

[時事通信社]

妊婦の産科検診は自費なので病院によって扱いが異なるのだが、一度も検診を受けないまま出産を迎えた場合、赤ちゃんもおかあさんも生命の危険が高まる。
NICUに一ヶ月入院すると、その医療費は1000万円と言われているが、家族が実際に支払うのは、ごく一部だ。
産科未受診で生まれた赤ちゃんがNICUに入院、無事退院という段階になってから、果たしてどうなっているのかについては、上記の報告には記されてない。
幸せに育っていて欲しいと願うばかりだ。

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コメント

ニンフ検診は教育という側面もあります。
1人の女性がせいぜい3人産む現代と,
10人くらい産むのが当たり前の60年前では話が違います。
母たる厳しさとか、自己管理の重要性とか、配偶者の理解とか。
小生も、検診に付き添って,産科医に分娩台に上がらされました。
やはり、出産とは想像を絶する作業です。
我が相方に謝意を表すると同時に,これから母となる方々に
自制と準備を希望します。
来るべき我が子への最初の愛情表現のはずです。
社会の産科検診への援助も希望します。

投稿: amigudara | 2007-09-20 01:11

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