大阪「船場吉兆」の福岡の出店で消費期限改竄 古いものから販売 2週間以上過ぎたものも→社長が謝罪会見
吉兆。
湯木貞一が、鯛茶漬けの店から始めて、日本を代表する一大料亭に育てた。今はかなり巨大化している。
吉兆の悪い噂が出るようになったのは、湯木貞一存命中の15年以上前からだったと思う。曰く、
まだ店内で客が食事中なのにもかかわらず、店員が食事用テーブルに上がって、掛け軸を掛け替えていた(もちろんテーブルは拭いたりしない)
など。その頃から、料金の高さとサービスとの齟齬に疑問を抱く人がいた。
わたしが最初にその手の話を聞いたのは、『四季の味』に連載されていた鶴田純也のエッセイでだったと思う。鶴田純也は、ABCの「歴史街道」で名前を見たりする大阪在住の放送作家だ。その後、似たような話を別な人からも聞いた。一人ではなかった。同じ吉兆でもどこそこはやめた方がいい、などという話になっていった。
吉兆は、親孝行な人がお金を貯めて、年老いた両親にご馳走する、という店でもある。年配の方の憧れの店でもあるからだが、この手の一見の客の扱いは粗略だ、という話もあった。ビルにも店を出す多店舗展開の料亭で、お年寄り連れに冷たい扱いはどうかと思う。
そんな悪評が、こっそり語られていたのは、まだインターネットになる前のBBSでだった。
巨大化した老舗の名前を冠した店では、どこかで綻びが出る。
吉兆の内、「船場吉兆」の出店で起きた不祥事は、根が深い。
菓子の消費期限を改竄、消費期限を2週間以上過ぎた商品も堂堂と売っていた
というのだ。おさらいしておくと、消費期限は〜「消費期限」と「賞味期限」〜によると、こういうものだ。
消費期限・傷みやすい食品に表示される
・製造日を含めて概ね5日以内に著しい品質低下が認められる食品に記載が義務付けられている。
(例)弁当、調理パン、生菓子、惣菜
↓
期限を過ぎると腐敗など衛生上の危害を生じる恐れがあるので、必ず期限内に消費すること。
朝日より。
「吉兆」菓子、偽装表示 福岡天神店 消費期限切れ販売
2007年10月29日02時59分高級料亭「吉兆(きっちょう)」を展開するグループ会社の一つ「船場(せんば)吉兆」(大阪市)が福岡市中央区の百貨店で、ラベルを張り替える偽装を繰り返して消費期限切れの菓子を販売していたことがわかった。匿名の通報を受けて調べていた同市は28日、食品衛生法に基づき、同社に適正表示などを勧告した。日本農林規格(JAS)法違反(不正表示)の疑いもあるとみて農林水産省九州農政局と合同で調査している。
同市などによると、船場吉兆は同市中央区の百貨店・岩田屋の7階に「吉兆天神店」を構え、地下食料品売り場の「吉兆天神フードパーク」で吉兆ブランドの総菜やデザートを販売している。
消費期限の偽装が判明したのは、同フードパークのみで販売していた「黒豆プリン」「桜ゼリー」「抹茶ゼリー(抹茶涼み)」「タルト」「ほうじ茶ケーキ」の5種類の菓子。消費期限は製造日から4〜5日間だが、4月以降の帳簿を調べたところ、売れ残った商品のラベルを毎日張り直して消費期限表示を1日ずつ延ばしたうえ、おおむね製造日の古い順に販売していた。
本来の消費期限を何日も過ぎてから販売されたケースも確認されただけで約100個あり、期限を2週間以上すぎていたものもあった。
市は通報を受けた9月11日に調査を開始。船場吉兆は翌12日からフードパークでの菓子販売を自粛し、今月27日から全商品の販売を取りやめている。吉兆側は市に対し、「ラベルを張り直す習慣は以前からあった」と説明しているという。
朝日新聞の取材に対し、船場吉兆天神店の店員は28日夕、「店長の判断で、現段階では取材に一切応じられない」と話した。
吉兆は大阪発祥の料亭。ホームページなどによると、知的所有権を管理する株式会社吉兆のもとにグループ10社があり、このうち本吉兆、神戸吉兆、船場吉兆、京都吉兆、東京吉兆の各社が計約20店の料理店を運営している。船場吉兆は大阪、福岡両市内で計4店を持つ。
料亭の名を冠して売られる菓子は、そうそう売れる物でもないだろう。普通は、総菜の方を求める。気が向いたら、総菜のついでに、菓子も買うという位だろう。
でも、デパートに店を出している以上、ガラスケースに隙間を空けておくわけにも行かない。
プリンやゼリーは、場所を塞ぐのには格好の商品だ。見場もあるから、タルトやケーキも置いたのだろう。
もとより、売れればいいや、程度の商品で、管理も杜撰になる。賑やかしに置いてあるような商品だから、消費期限が切れたからといって、すぐには廃棄しない。ラベルを付け替える。
お客というのは有り難いもので、そうした「賑やかし」の商品でも、吉兆のものだから、と名前を信用して、買ってくれる。
そうした客の信用を逆手に取って、
古い商品から売っていた
のが、今回の不祥事だ。
看板で商売をする料亭が、こんなことを平気でする。
きちんと管理できないのならば、出店しないのがいいのだが、「吉兆」という名前を付ければ、高値で売れる。
お店に来る客はともかく、デパートで総菜や菓子を買う客層はどうでもいい、という考えが根本にあるとしか思えない。
今頃、直接料亭に足を運ぶ「常連客」には、
分家の出店がしたことで
と言い訳をしているかも知れないが、社会的信用は地に墜ちた。
今回の不祥事は、匿名の告発が発端だそうだが、
高級料亭の高い商品を扱う側が、安い給料でこき使われている
から、チクられたんじゃないのか。
続き。(13:50)
昼のNHKニュースで
謝罪会見
が流れた。(画像はクリックすると拡大します)
「船場吉兆」偽装表示を謝罪料亭などを展開する大阪の「船場吉兆」が福岡市のデパートで菓子の消費期限のラベルをはり替えていた問題で、
期限切れで販売された商品はおよそ3000個に上ることがわかりました。会社の役員らは、会見で「消費者の信頼を裏切ることになり、心からおわびします」と謝罪しました。
大阪に本店があり料亭などを経営している「船場吉兆」では、
福岡市天神のデパート「岩田屋」に出している店舗でプリンやゼリーなどの消費期限のラベルをはり替え、期限切れの菓子を販売していていたことが明らかになりました。この問題で29日午前、「船場吉兆」の湯木尚治取締役と「岩田屋」の速水俊夫社長が
「深くおわび申し上げます」
記者会見しました。
この中で、
少なくとも去年1月から先月までに販売した6種類の商品でおよそ3000個を消費期限が切れたあとに販売していたことを明らかにしました。そのうえで、湯木取締役は
船場吉兆 湯木尚治取締役「大いなるモラルの欠如伴った販売 行われていた現実に深く心が痛み」
キャプション「非常識なる不正販売の実態を把握で来てればと責任を痛感」
「消費者の信頼を裏切ることになり、心からおわびします。表示ラベルのはり替えを誰がなぜ行ったのか、現在調査しています」と述べました。この問題では、福岡市が、食品衛生法に違反しているとして販売の自粛や改善報告書の提出を求める勧告を行っています。また、
農林水産省の福岡農政事務所も、食品の適正な表示を義務づけたJAS法に違反している可能性があるとして調査を行っています。10月29日 12時27分
湯木尚治取締役は、湯木貞一の孫。
下は、2002年の食ビ研例会レポート 「吉兆」今昔物語。
今回は泣く子も黙る日本料理の雄、吉兆グループの船場吉兆の心斎橋店・博多店店長の湯木尚治氏から、吉兆と日本料理についての昔と今を語っていただきました。
沖縄サミット福岡蔵相会議では、晩餐会の料理を担当した。
なかなか恐ろしい話が書いてある。
「生まれた時から家は料理屋」−−
湯木尚治さんは、芸者が出入りするのが当たり前の環境で育った。
遠足の弁当は塗りの膳に入った松花堂弁当。誕生会はお友達を呼んで吉兆本店で流しソーメン。
「派手だからやめてくれ」とPTAで苦情がでて以後誕生会は中止になったこともあったとか。
またある日、家政婦が子供の食事にインスタントの味噌汁を出そうとした。すると祖父の貞一氏が「子供にインスタントの味付けを食べさせるのはやめてくれ」と怒ったこともあったという。
ところで、湯木貞一は、『暮しの手帖』に連載していた「吉兆味ばなし」の中で
吉兆の料理がおいしい、といわれた秘密は「味の素」
だと書いていた。
「味の素」がなければ、味を出すのにもっと材料費がかかって、人様に食べていただける値段の料理を出せない
という主旨だ。単行本の方に、この話が収録されているかどうかは未確認。
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