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2007-10-08

福島県立大野病院事件第八回公判@9/28(しばらくこの記事をトップに表示します)

私事で忙しく、公判前後に情報収集できなかったので、遅くなったのだけれども、
 福島県立大野病院事件の第八回公判
が9/28に開かれた。今回は
 弁護側の病理鑑定を引き受けた中山雅弘・大阪府立母子保健総合医療センター病理科部長
が証人として法廷に立った。
詳細な傍聴記がすでにアップされているので紹介する。

例によって、
 ロハス・メディカルブログの川口恭さんが傍聴
している。
福島県立大野病院事件第8回公判(0)
福島県立大野病院事件第八回公判

周産期医療の崩壊をくい止める会のサイトにも、第八回公判の詳細がアップされている。現在までにアップ叉rているのは
 午前中の証人尋問の詳細
である。この日の尋問は夜7時半まで続いた。

第八回公判傍聴記(平成19年9月28日)

日経メディカルオンラインの橋本佳子編集長による傍聴記。
全文を引用する。


2007. 10. 1
検察の起訴根拠を揺るがす展開に 福島・大野病院事件の第8回公判が開催

 福島県立大野病院事件の第8回公判が9月28日に開催され、注目証人の一人である胎盤病理を専門とする医師(以下、弁護側病理医)への尋問が行われた。最大のポイントは、検察側が起訴の根拠としていた鑑定書に疑問を呈する証言が行われたことだ(事件の概要などは、「福島・大野病院事件の初公判、被告は無罪主張」、「医師が刑事裁判の被告になったとき」を参照)。

 本事件の争点の一つは、子宮と胎盤の癒着部位やその程度であり、鑑定書では、「(胎盤と子宮)の癒着部位は、子宮前壁から子宮後壁まで及んでいた」とされていた。前壁への癒着であれば予見可能であり、それを怠った被告のK医師に過失があるというのが検察側の主張だった。ところが、弁護側病理医は、癒着は子宮後壁に限られ、前壁や後壁の上部にも絨毛が見られ、癒着を疑わせるものの、これらは「アーチファクト(人為的に絨毛が付着したこと)の可能性がある」と証言した。

 さらに、医療は不確実性を伴うものだが、病理鑑定においても例外ではないことが、浮き彫りになったことも特筆すべき点だ。病理所見において、「正常」な所見は一義的に決まるが、「異常」の場合、その所見の解釈や異常が生じる原因を同定するのは容易ではないが、その不確実性を検察側があまり理解していない局面が散見された。

5万例の胎盤解剖実績を誇る病理医

 この日の公判は、午前10時20分開廷、途中、計1時間半ほどの休憩をはさんで、午後7時半まで続くという、前回と同様、長丁場だった。証人は胎盤病理を専門とする医師一人のみ。この弁護側病理医は、弁護側が病理鑑定を依頼した人物だ。本事件では、検察側が依頼した病理医(以下、検察側病理医)と、この弁護側病理医の2人が鑑定を行っている。検察側病理医への証人尋問は既に5月に行われ、弁護側は胎盤病理の専門家ではない点を問題視していた(「病理の鑑定結果の信ぴょう性に疑問符」参照)。

 弁護側病理医は、2006年11月8日と2007年8月28日の2回、鑑定を行っている。

 午前中の弁護側の主尋問は、(1)検察側鑑定医と異なり、胎盤病理の専門家であること、(2)鑑定内容も信頼性が高いこと——を確認した上で、検察側鑑定の問題点を突くという展開になった。
 弁護側病理医は、これまで約5万例の胎盤を病理診断した経験を持つ。この症例数はわが国でもトップクラスだ。子宮の病理診断の実績も、710例に上る。約5万例の中で、本事件の女性と同じ癒着胎盤の症例は24例にすぎず、癒着胎盤がいかに珍しいかが改めて裏付けられた。

「子宮前壁の絨毛はアーチファクト」

 また鑑定に当たって使用した資料については、(1)胎盤の写真、(2)ホルマリン保存されていた子宮組織片、(3)子宮組織のプレパラートを自ら顕微鏡で観察・撮影した写真、(4)診療記録——などであることを証言、検察側病理医が鑑定に使用したもののとほぼ同等であることが示された。

 その後は、弁護側が、胎盤の写真や子宮組織標本の写真を示しながら、尋問が進められた。弁護側病理医は、(1)胎盤の癒着は子宮後壁を中心としている、(2)その深さは子宮筋層の5分の1(検察側はより深く、2分の1であると主張)、(3)子宮前壁にも絨毛があるが、部位が子宮頸部に近いなど、本来、絨毛が存在するはずのない部位であり、これはアーチファクトである可能性が高い、(4)胎盤には鋭利な刃物で切った跡はない(帝王切開時に胎盤を切ったわけではない)——などと証言した。

 このアーチファクトが今日の公判のカギだ。検察の鑑定では、子宮組織に絨毛があれば、そこが胎盤の癒着部位であるという論理展開をしていた。これに対し、弁護側病理医は、(1)(胎盤を剥離するなどの)手術手技の過程で、本来、絨毛がない子宮部位に絨毛が付着することもあり得る、(2)プレパラート作成の過程でも、他の組織に絨毛が付着することがある——とした。胎盤の大きさや形状などを総合的に考え合わせると、子宮後壁の上部や子宮前壁における絨毛の存在は、子宮の広範囲に胎盤が接していたことになる。それは不可解であり、アーチファクトの可能性が高いと証言、子宮前壁にも癒着があるとする検察側病理医の意見に疑義を呈した。

「弁護士と相談はしたが、考えは変えていない」

 午後は、主に検察側の反対尋問が行われた。検察は、1回目と2回目の鑑定に相違がある点や、病理鑑定のやり方が果たして妥当なのかと問題視したものの、弁護側病理医の鑑定や証言を揺るがすには至らなかった。
 
 例えば、検察側は、(1)1回目の鑑定では、アーチファクトという言葉を使わなかった、(2)検察側病理医の鑑定と比較しているところとそうでない部分がある、(3)2回目の鑑定では、前回使用した写真のみを用い、プレパラートを見直す作業はしなかった、(4)2回目の鑑定の際に、弁護士と相談した——などを問題視した。

 これに対して、弁護側病理医は、(1)不可解な部分に絨毛があることで、他の可能性も考えられたが、考察を深めるうちにアーチファクトである可能性が高まった(1回目のときもアーチファクトは念頭にあった)、(2)病理鑑定はすべてを網羅するわけではなく、重要と思われる部分を中心に進めたのであり、都合の悪いところを排除したわけではない、(3)プレパラートを見直すのは大変な作業であり、その時間的余裕などはなかった、(4)確かに弁護士と話し合い、表現などが分かりにくいところは修正したものの、それによって意見を変えたことはない——などと反論した。

病理にも不確実性あり

 この日の公判は、胎盤と子宮壁との癒着部位を同定するため、様々な標本写真を提示し、そこに絨毛があるか、脱落膜があるかなどを一つひとつ確認する形で尋問が行われた。

 病理診断や鑑定の際、組織標本を作成するが、子宮という臓器全体を網羅する組織標本を作ることは事実上不可能だ。おのずから標本がない部位も生じる。本事件の争点の一つに、癒着していた部位で、絨毛が子宮筋層にどの程度入っていたかがあるが、弁護側病理医は、ある標本写真から「5分の1程度」とした。これに対して、検察は、「別の部位ではもっと深く入っていた可能性があるのでは」と反論したが、弁護側病理医は、「切り方によって当然厚みは変わってくるので、推測の域は出ない」と退けた。

 病理では、「正常」であれば、どんな医師が見ても一致した意見が得られるのだろう。しかし、本事案のように、子宮壁の不可解な部分に、絨毛が存在しているという「異常」所見の場合、その意味や原因をどう解釈するかは容易ではない。一見、病理診断・鑑定では、確定した見解が得られると思われがちだが、そうではない。弁護側病理医は病理の限界も認識した上で証言を行っていたが、検察側がこの点をあまり理解していないのか、「どんな場合でも答えが一つに定まるはず」という認識での質問が散見された。

 今回で検察側と弁護側それぞれが鑑定を依頼した病理医への尋問が終わった。検察側病理医の専門は腫瘍であり、胎盤および子宮の病理の専門性は、弁護側病理医の方が圧倒的に上だ。刑事裁判における証拠という観点からは、検察側鑑定書の方が重要性が高いのだろうが、2人の病理医の専門性や実績の相違を裁判官はどう判断するのだろうか。

 次回の公判は10月26日、次々回は11月30日で、いずれも周産期医療の大学教授への尋問が行われる予定になっている。

(橋本 佳子=日経メディカル オンライン)

ああ、
 腫瘍学の専門家が検察側病理鑑定を行った「専門外の医師に鑑定を任せた問題性」
が浮上したのだな。
果たして、裁判官がこの事実をどのように解釈するのかが、この裁判の一つの見所である。

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コメント

はじめまして、こんにちは。
荒川修作のテレビ出演の記事を拝見して、トップページへと参りました。

そうして私も大いに関心を持っています、福島県の医師による「事件」の最新記事も充実した内容で、「すばらしい!」と小声を出してしまいました。

これからも記事更新を楽しみにしています。

投稿: でんでん虫 | 2007-10-15 15:58

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