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2007-11-18

浅田真央優勝@仏エリック・ボンパール杯 17歳の階段

浅田真央が泣いていた。
昨日のSPが終わり、不本意な演技だった浅田真央は、キス&クライから降りると同時に、堪えきれず、指先で涙を拭った。伏せた目元からは、止めどなく涙が溢れる。失敗の許されない、構成要素を確実にこなす演技を求められるSPで、最初のコンビネーションジャンプを失敗、その後の3Lzは不正エッジで減点され、点数が伸びなかった。SPは1位で通過したものの、前回のスケート・カナダと同じ過ちを犯した自分を浅田真央は許せなかった。
1時間後、浅田真央は報道陣の前に姿を見せ、笑顔でインタビューに応えた。1時間という時間は、浅田真央のショックの大きさと、それでも尚、それを乗り越えて、一流のアスリートとして報道陣の取材に応じて責務を果たそうとする、17歳の選択を表している。浅田真央は、今、一歩一歩、世界的な、成熟した一人前のアスリートとなるべく、階段を着実に上っているところなのだ。それが、トリノ五輪の時に18歳だった安藤美姫とは明らかに異なる。
 明日は3Aを飛びます
と、宣言した浅田真央は、今日のフリーの演技の最初に、ステップなしで3Aを飛んだ。
転倒。
回転不足だった。

昨季は、3Aを失敗すると、そのショックを引きずり、演技に精彩を欠いた。
しかし、今日の浅田真央は、進化した姿を見せた。
続く3F+3Loのコンビネーションジャンプは、両足着氷か、と思われたが、審判の判定は成功。今季女子で初めての3Loで降りる三回転のコンビネーションジャンプを決めた。先日のスケート・カナダ、昨日のSPで残った課題を、今日のフリーでは解決して見せた。浅田真央は着実に進歩を遂げているのだ。
CSp(キャメルスピン)・FSSp(フライングシットスピン)・CoSp(コンビネーションスピン)とSpSq(スパイラルシークエンス)ではレベル4を取り、抜きんでたスケーティング技術を評価された。ジャンプでは珍しく2A+2Lo+2Loの三連続ダブルの最後で躓きそうになり、回転不足を取られ、減点されたが、ジャンプの失敗を、スピンやステップがカバーした。まだ身長が伸びており、身体のバランスが取りにくい状態であっても、浅田真央のスケーティング技術は、磨かれ、身体的な問題を練習量でねじ伏せているかのようだ。タラソワコーチについて、たたき込まれた、動作の隅々までに気を配る体線や指先の美しさは、浅田真央の演技を大きくまた繊細に見せ、今回出場した選手の中で、ただ一人、異次元の滑りを見せていた。
他の選手達が、失敗を重ね、点数が伸びない中、転倒と時間オーバーで2点減点、3A失敗と3Lzの不正エッジ、2A+2Lo+2Loの回転不足でもGOEを大幅に減点された浅田真央が、2位のキミー・マイズナーに20点以上の差を付けて、ぶっちぎりで優勝した。まだ、シーズンが始まってから日が浅く、どの選手も今季のSPやフリーのプログラムを完成させていない中で、この点差なのだ。果たして、浅田真央の今季のプログラムが、もっと滑り込まれて、完成に近づいたら、一体、何点をたたき出すことだろう。

興味は、もはや、点数にはない。
この難しく、手の込んだ、いろんな要素が隙間なく詰め込まれたSPとフリーのプログラムを完成させたら、どれほど美しい、すばらしい演技になるのか、ちょっと想像を超えている。
今でも、浅田真央の滑りは美しい。
それが、更に進化し、氷の上に、わたしたちが見たことがないような、イリュージョンが展開されるのだ。
今年、浅田真央のSPとフリーに選ばれたのは
 ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア
 幻想即興曲
だ。曲名の通りに、今季、浅田真央が見せてくれる、氷上の幻想の進化を、シーズンと共に楽しみ、味わいたい。

エリック・ボンパール杯 女子シングルプロトコル
ショートプログラム
フリー

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コメント

浅田真央ちゃん、がんばりましたね。
ジャンプは失敗しましたが、演技力でカバーしていました。今後の活躍に期待です。

投稿: tosiki | 2007-11-21 19:32

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