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2007-11-23

博士残酷物語 研究開発人材の質量低下は当然

今時
 最短ルートでも、最低で24歳(高校2年で大学→大学3年で修士→修士1年で博士と飛び級した場合)、普通なら27歳
になるまでかかり、かつ
 奨学金という借金
を数百万円背負い、そして
 まともにアカデミックポストに就職できるのは1/3以下、少子化でさらにアカデミックポストは削減されて椅子は常に不足している
と言われる
 博士課程
に、好きこのんで進学するのは、かなり奇特な若者である。
 東大・京大で学位を取っても、「ポスドク」の次
が見つからず、
 高学歴ワーキングプア
にならざるを得ない博士はたくさんいる。そのために、人材という側面から見ると
 優秀な学生ほど、さっさと研究に見切りを付けて、卒業・就職してしまう
というジレンマに陥っている。大学によっては
 卒業してすぐ就職する学生の方が、大学院に進む学生よりよほど成績がいい
というのが、当たり前になっているし、有名大学は
 大学受験より、修士で入る方が簡単
となってるのが現状だ。いわゆる
 学歴ロンダリング
が行われるのは大学院で、外部から優秀な院生も入ってくるけれども
 単に「〜大」という名前を最終学歴に欲しいだけの院生
もいて、大学院教育は、とんでもないことになっていたりする。いまから20年ほど前、すでに、いわゆる
 旧七帝大の一部の文系大学院

 修論が書けないマスター(結局、修士をアリバイ修了するか退学)
が問題になってたけど、いまや、そんな院生は珍しくも何ともない。場合によっては
 とんでもない修論が通ってしまって、博士課程に進学
なんてこともあるのだ。以前は
 留学生
で、そうした
 超法規的措置
が取られたりしてことはあったが、それが日本人院生、それも旧七帝大クラスの大学のあちこちで囁かれるようになってきて、
 日本の大学院教育は末期的段階ではないか
という、危機感が漂っている。
こうなってしまうと、もう、士気を保つのは難しい。

で、今更感が漂う調査結果が出ている。
毎日より。


研究開発人材:5年で質量とも低下 文科省調査

 国内の研究開発人材が、この5年で質量ともに低下していると、第一線の研究者が感じていることが、文部科学省科学技術政策研究所の意識調査で分かった。国は96年から5年ごとに科学技術基本計画を立て、10年間で科学技術分野に約38兆7000億円を重点配分してきたが、人材育成に関しては期待したほど成果が上がっていないようだ。

 調査は昨年11~12月、大学の学長や研究所の管理職、基本計画で重点の置かれた生命科学や材料科学、エネルギーなど8分野の一線の研究者ら約1400人に実施。研究資金や人材、産学連携などの現状を質問し、約1200人からの回答を分野ごとにまとめた。

 研究者の数や質を5年前と比較する設問では、「質が上がった」という分野は皆無。情報通信やものづくり、エネルギーなど5分野では「やや低くなった」と評価された。研究者の数もほとんどが「横ばい」か「やや減った」とされた。

 自由記述では、「ポストの減少で数も質も劣化」(環境)▽「博士号取得者は増えたが、全体として質は低下」(ナノ・材料)▽「分野内の領域ごとに偏りがある」(生命科学)--などの回答があった。

 同研究所の桑原輝雄・総務研究官は「現場の実感では、政策の効果が十分に表れていないと受け取れる。今後、聞き取り調査などで理由を探りたい」と話している。

 現在必要な取り組みとしては、各分野とも「人材育成と確保」がトップ。特に、基礎研究を担う人材育成が急務とされた。また、若手育成では、博士やポスドク(任期付き博士研究員)の就職支援を求める声が多かった。【西川拓】

毎日新聞 2007年11月23日 2時30分

こうなるのはわかりきっていたこと。
入り口を広くしたのは結構だが、
 就職先が全然ない
んだもん。誰が好きこのんで
 徒弟制度に身を置く
だろう。たとえば人文系では
 数カ国語ができないと一流の研究者になれない
と言われたけれども、今は
 数カ国語ができるなら、研究者になるより、もっと稼げる道がある
わけで、目端の利く若者は、さっさと稼げる仕事に就いていく。
 才能を金に換える
には、
 大学はコストパフォーマンスが悪すぎる
というのが、昨今の風潮だし、確かにそうだと思う。

これから、少子化は進み、良質な働き手は引く手あまただから、
 優秀な人材は稼げる方へどんどん流れる
だろう。大学が
 自助努力
で何とかなっていたのは、日本の貧富の差がそれほど大きくなかった時代の話で、今は
 格差社会
である。
 才能を生かすには、大学人は負け組
と判定されている以上、
 最高の人材を研究開発に残す
のは、難しいだろう。それを文科省が望んでいるのだとしても
 やらずぶったくりの現在の大学院教育体制では無理
だ。院生の指導で、教員は疲弊し、あるいは
 国の思いつきの突発的プロジェクト
に、院生は使い捨てられ、死屍累々だ。プロジェクトに金が出ている時だけはいいけど、それが終わっちゃったら、もう院生・博士の使い道はない、なんて
 人材無駄遣い
を続けてきた
 科学技術政策の抜本的見直し
の方が、急務だ。
だいたい
 大学院教育拡充
なんて言っても
 質を見ずに、「学位取得者の数」だけを数えていた
のが、これまでの文科省で、いま現在は
 「質」は「数量的に可視化できる」
という立場で、大学院教育を引っかき回しているところだ。
今の政策が続く限り、大学院がよくなることはないし、人材が集まることもないし、日本の研究開発人材の質も量もさらに低下するのは、はっきりしている。どうして
 官僚は数でしかモノを考えられない
のか。

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コメント

政策評価において、定性的な評価が認められず、(ほぼ?)全ての分野
で定量的な評価が求められているため、官僚は数でしかものを考えられ
ないと感じられるのでしょうね。

文部科学省の立場としては、数で評価しないと総務省と財務省に滅多切り
にされて、一つも政策が残らないよということでしょう。
まぁ、官僚に裁量があるのは、けしからんという議論から導入された仕組
みなんですから、国民が望んだ結果といえるのではないでしょうか。

自分の経験では、政策評価のやり方が、おかしいと声を上げても、「従来
の裁量行政に戻すつもりか? けしからん。」と言われて終わりです。

理性的な議論も空気には勝てません。KYと言われて終わりです。KYと
言われて疲れ果てて、辞めていく人が多すぎです。空気よりも理性的な議
論に国民が耳を傾ける(政治家は国民の鏡像ですから)ようにならない限
り、文部科学省にできることは、少しでも予算・人員の減少を防ぐことだ
けでしょう。
現場の望む仕組みにして、予算も定員も消滅する。
財務省や総務省の言うとおりにして、現場が疲弊する。
のどちらが望ましいんでしょうね。文部科学省は現在後者を選択している
訳ですが・・・・これはどの省庁も変わらないですね。うちもなぁ・・・

投稿: 竹馬 | 2007-11-23 05:04

>どうして官僚は数でしかモノを考えられないのか。

それは簡単

現状を見てしまうと何も提案できなくなるから。

投稿: 仔鹿 | 2007-11-23 05:45

現場から一言。
今余ってるポスドクは大学院が拡張される前に院生になった人たちです。大学院生の質が低下して云々というのはこれから日本の科学をさらに破壊するでしょうが、今表出している問題の原因ではありません。今日本の科学が低下しているのは国の科学破壊政策(?)が順調に花開いているからです。具体的には、任期制の研究者を増やすことによる人件費の削減、今までアメリカなどに比べかなり平等的だった予算配分の不平等化などです。先端科学は数年のスパンで花開く物ではなく、数十年というスパンが必要です。アメリカではポスドクとして使い捨てられる研究員を助手、講師、助教授として国が雇っていたこと、小さいけど平等な予算配分が功をなして、日本の科学はアメリカの十分の一という予算規模にも関わらず、世界堂々の二位です。それをアメリカの破壊政策をまねすることにより破壊していこうというのが今の国の政策です。

投稿: ruru | 2007-11-26 13:46

教育改革・大学改革とは?

敵国の弱体化のため、特に教育においては「改革」という名の改悪をいつも継続させる。そして我々は教育の中から市民権や政治の語彙を削除する。

我々はかつて義務教育の中に社会の安定秩序を廃退化させる利己心や刹那主義による諸原理を埋め込んできたが、我々の世界統治後は騒乱を起こす全事項を駆逐して、我々にとっての安定平和社会を構築する。

我々にとって不利益な歴史を消去し、敵国家や政府を糾弾しうる便利な歴史を創作する。世界統治後は、従順な奴隷化の歴史教育を徹底させる。

敵国民の脳の働きを低下させ、物を考えさせないで洗脳奴隷化するための視覚・聴覚教育を実行する。

だそうです。よく効いてきていますね。(苦笑)

ruruさん、ruruとは奴隷という黙示的意味があるそうですが、皮肉がきいていますね。無理矢理競争させる奴隷制を推し進めているのはたしかでしょう。かつて、日本を弱体化させるには、皆で協力しながら仕事を進めるという人的基盤を壊すのがよいと、ワシントンで提言されたことがありますね。現場の人達には柳のようにしのいでいってほしいです。

投稿: さてはて | 2007-11-30 01:50

[大学院生物語」を書いた伊良林と申します。世間では、約一万六千名もの博士研究員という失業者予備軍が存在しております。私が大学院生をやっていた頃に比べて、博士研究員のポストと待遇ははるかに良くなっております。あの頃は、学術振興会のグラントでも当たらなければ無給の博士研究員にならざるを得ませんでした。ところが、現在ではその先がありません。三十五歳の壁を越えてしまえば、助教になることも困難になります。一方で、研究費の傾斜配分が行われています。これでは、地方大学は一部の有名研究室に勝てるはずがありません。大学間格差が広がりつつあります。「科学立国日本」という旗印は、一部の有名研究室のために掲げられたものだといえるでしょう。政策担当者の方々には費用対効果を厳密に評価していただきたいものです。

投稿: 伊良林正也 | 2009-04-19 12:52

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