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2007-11-06

医療崩壊 外科は崩壊前夜→医療費削減でエリート医師の海外流出はもうすぐ

京大医学部にいる高校の同級生と話をした。
「最近どう? 産科も小児科も麻酔科も足んないけど」
「ああ。麻酔科はどうってことないわ。単に病院から辞めてるだけで、フリーになったらすごいからな。儲かるぞ」
「そうらしいね。ちょっと知ってる心臓外科の麻酔の女医さんも、医局辞めてフリーになったらしいけど、あちこち呼ばれてるみたいだし」
「腕さえあれば、麻酔科は大丈夫だな。病院だと待遇悪いからな」
友人はマイナーの医師だ。
「それよりお前、外科だよ、外科。とんでもねえぞ」
「人いない?」
「もうすぐ日本じゃ、これまで普通に助かってたヒトが、手術を受けられなくなって、死ぬことになるぞ」
「そんなに来ないのか」
「で、マイナーに大量に流れてくるんで。オレもマイナーだからあれだけどさ」
京大医学部の現場にいる友人の言葉だから、かなり切実だ。京大にいても外科の将来は危機に瀕してる、と他科の医師が感じる所まで来ている。

話は、医師の海外流出に向かった。
「最近、オイルマネーで、あっちの方の医療がやたら充実してるらしいじゃん。金に飽かせて、いい医者獲得してるんだってね」
「おお。結構行ってるな。あとシンガポールかな」
「シンガポールいいでしょ? 街綺麗だし」
「あと食い物な。日本人が行って、食い物の問題ないのは大きいな。オレも行くとしたら、アジアならシンガポールかマレーシアかな。結構、口はあるよ」
もちろん、これは仮定の話で、友人がすぐにどこかへ行くわけではない。

今のところ、日本の医師の海外への大量流出はまだない。だが、日本の医学部としてはトップクラスの一つに数えられるところで働く友人でさえ、海外流出を選択の一つに考えても意外ではないところまで来ているのは、深刻だ。おそらく友人はそんなに難しく考えてないところが、もっと深刻なのだ。以前なら、大学病院にいる医師が、海外で働く、なんて選択肢は、大学のポストがある時以外には考えられなかった。
元々日本の大学病院の労働環境はよくないが、医局が権力を生み出し、講座の教授を頂点とするピラミッドを築いていた。いまや、新臨床研修医制度で、多くの医局はガタガタになっている。さすがに京大クラスは、選ばれる立場だろうけれども、そうした環境でも、海外へ行く医師が出てくるだろう。ある程度高齢になったら、実際に海外に行ってる医師はいるという。

教育の話になった。彼の子どもが大学に行く頃には日本の大学はどうなってるだろう。
「従弟の子どもがさ、シアトルにいるんだけど、中学でかなり出来がいいらしい。で、受験対策で日本に帰すとか言うんだけど、やめとけ、って一応は言ったんだよね」
「そうだな、日本に帰ってくることないだろ。シアトルなら、向こうの高校にそのまま行けばいいんだし。うちの子だって、高校は向こうに行かすかもわかんないしな」
「そうだよね。日本の大学に進んでいいとも思えないし」
彼の子どもが大学に進学するまでにあと10年以上ある。友人に聞かれた。
「お前、日本の大学10年後にどうなってると思う?」
「まあ、このままだとヤバイ。たぶんダメになってる。今だってこれなのに、よくなるはずがない」
「オレもそう思うんだよな。日本の大学に行くメリットって、その頃まであるかどうかもわからんからな」
もし、子どもがアメリカの大学に行くことになったら、海外での生活も考えるという友人。
「ハワイに住んで、向こうで仕事してもいいじゃん」
ハワイは半分冗談だが、友人はアメリカに留学していたから、その点は問題ない。

医師の海外流出は、英語が自由に使える上位の医師から始まるだろう。
エリートから抜けていくことになるのだ。
すでに、アメリカの大学でポストを得ている日本人もいるわけで、それがもっと一般的になり、英語の使える、もっと待遇のいい国で働く機会が、大学教授クラスの医師だけでなく、もっと普通の医師のレベルにまで拡がる、ということだ。
財務省は医療費削減を絶対とし、厚労省は診療報酬を下げたいらしいが、それは
 優秀な医師から日本を抜け出す機会を広げる
ということだ。
 数値目標だけの医療費削減は亡国の策
であることに、恐らく政治家も官僚もまったく気づいていない。

英語に関しては、友人は
 最近は医学論文もpodcastあるから、他のことしながら、聞いてる。読んだだけだとわかんないとことか、注目して欲しいとことか、ちゃんとショーアップして分かりやすく解説してくれるからな
と言っていた。高校の頃はそう英語が得意という訳でもなかったけど、普段から論文を書いたり、読んだり、podcastで耳も鍛えていれば、英語力は常に鍛錬されている状態だ。意欲があって、勉強する医師は、忙しくても、こうして英語力は保たれる。そして、今のやらずぶったくりの診療報酬の行き方では、おそらく、こういう日々努力を怠らない、高度の教育を受けた、日本の医療が必要とする医師から、海外へ流出していくだろう。
腕のいい医師、エリート医師に厚遇がなく、どの医師にも均等に診療報酬が配当されるやり方では、待遇に不満のある力のある医師達は、やがて、自分の実力を応分に認めてくれるところへ行く。
経済がダメになるだけでなく、知力でも勝てなくなったら、資源小国日本に未来はない。
腕一本と英語力があれば世界中でやっていける医師は、坑道のカナリアのようなものだ。彼らが流出を始めたら、日本は終わりを迎えたことになる。日本は、一気に衰退し、「老いた小国」に成り下がるだろう。

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