福島県立大野病院事件第11回公判@12/21(しばらくこの記事をトップに表示します)→「墓前で土下座してこい」K先生に遺族がさせたこと
昨日
福島県立大野病院事件第11回公判
が開かれた。
今回は当初求めていた弁護側証人尋問が認められず、
被告人質問
となった。
ロハス・メディカルブログの川口恭さんが傍聴記を現在アップ中。
福島県立大野病院事件第11回公判(0)
福島県立大野病院事件第11回公判(1)
(追記 12/22 15:40)
遺族感情の激しさだけでなく
福島県立大野病院の事故調査委員会の態度
には、恐ろしいものを感じるのは、わたしがおかしいのだろうか。ロハス・メディカルブログの川口恭さんの傍聴記
福島県立大野病院事件第11回公判(1)
より。
弁護人 お葬式には行きましたか。
加藤医師 いえ伺っていません。
弁護人 なぜですか。
加藤医師 病院と県の病院局との話し合いで、私は出席しない方がよいということになったので伺いませんでした。
(略)
弁護人 遺族へ謝罪には行かれましたか。
加藤医師 はい12月26日に伺ったと記憶しています。
弁護人 誰と行きましたか。
K医師 院長、事務長、H先生と私です。
弁護人 次に遺族と会ったのはいつですか。
K医師 事故調査委員会の結果が出た時、その説明をするからということで病院に来ていただいて説明しました。墓前にも報告して謝罪してくれというので行きました。お墓を教えるから土下座してきてくれと言われたので、してきました。
弁護人 どういう気持ちでしたか。
K医師 亡くならせてしまったという気持ちが強くて本当に謝罪したいと自然に土下座しました。
弁護人 その後もお墓参りに行っていますね。
K医師 はい、逮捕前までは、月命日の前後の休日に行かせていただいていました。逮捕後は年1回命日に行っています。
弁護人 まさに命日が過ぎたばかりですが今年も行きましたね。
K医師 はい。
(略)
弁護人 最後にAさんとご家族に対して、どう思っていますか。
K医師 私を信頼して受診してくださっていたのに、亡くなってしまう悪い結果になって本当に申し訳なく思っております。当時、突然亡くなられて私もかなりショックでした。亡くなられてから一日中、初めて受診した日からお見送りした日までの色々な場面が頭に浮かんで離れませんでした。ご家族の方に分かっていただきたいとは思っておりますが、なかなか受け入れていただくのは難しいのかなと考えております。こういう風にすれば良かったのかなとか、いい方法はなかったかなと思いますが、あの状況で他のそれ以上の良い方法が思い浮かばないでいます。亡くなってしまった現場に私がいて、その現場の責任者が私のわけで、亡くなってしまったという事実があるわけで、その事実に対して責任があると思われるのも当然だと思います。できる限りのことは一生懸命しました。亡くなってしまったという結果はもう変えようのない結果ですし、私も非常に重い事実として受け止めております。申し訳ありませんでした。最後になりましたが、Aさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
それが病死であっても
医師の処置を受けて、亡くなったら、必ず「墓前で土下座」をしなくてはならない
のか。
ご遺族のしていることは、
1人の熟達した産科医を現場に二度と戻らせない仕打ち
だとわたしは感じる。
復讐の念
に燃えるのは、遺族感情だからしょうがないけれども、その結果
福島県立大野病院の産科が立ちゆかなくなっている
のも事実なのだ。
個人の感情と公共の福祉の齟齬
が、こうした形で21世紀の
産科医不足に悩まされている福島で起きている
ことに慄然とする。
K先生がご遺族と話をしたときには、福島県立大野病院の関係者もいたと思うのだが、
医師に墓前で土下座させる
というご遺族の要求を、平然と受け止め、促したとしか考えられない。
誰も止めなかった
というのは
福島県立大野病院がK先生を見捨てた
ということと同義ではないのか。
難しい、不幸な転帰を迎えた産科の症例で、病院が医師を守らない。患者さんを治療するのは
病院ではなく、個々の医師
なのに。
このままでは、福島の産科崩壊は、今後更に続くだろう。
(追記終わり)
NHK福島ニュースから。
医師があらためて無罪を主張県立大野病院の産婦人科の医師が、帝王切開の手術で女性を死亡させたとされる事件の裁判で、被告の医師は、「手術にミスは無かった」と述べあらためて無罪を主張しました。
この裁判は来年の5月に審理が終わる見通しです。
大熊町にある県立大野病院の医師の、K被告(40)は、3年前、帝王切開の手術の際に女性の胎盤を無理にはがし、大量出血を引き起こして死亡させたとして、業務上過失致死などの罪に問われています。
21日、福島地方裁判所で開かれた裁判では、K医師に対する3回目の被告人質問が行われました。このなかで、K医師は、まず、手術前の対応について、「事前の診断では危険な状態と判断するような所見はなかったが、輸血用の血液製剤などは準備しており、十分な態勢で手術に臨んだ」と述べました。
また、手術中の対応について、K医師は、「子宮から胎盤をはがす際に手術用のはさみを使ったのは子宮を傷つけずに素早くはがすためだった。手術にミスは無かった」と述べあらためて無罪を主張しました。
次回の裁判は、来年1月25日に開かれる予定で、すべての審理が終わるのは来年5月になる見通しです。
河北新報より。
「医療行為は適切」 大野病院事件福島地裁公判福島県立大野病院(大熊町)で2004年、帝王切開中に子宮に癒着した胎盤を剥離(はくり)した判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死罪などに問われた産婦人科医K被告(40)の第11回公判が21日、福島地裁であった。3度目となる被告人質問で加藤被告は「亡くなられたことは重く受け止めるが、できることは一生懸命やった。適切な医療行為だった」と無罪を主張した。
警察に医療過誤と届け出なかった点について、K被告は「届け出は院長の役割。手術後、院長から過誤ではないから届けないと言われた」と説明。手術直後に自分から届け出るかと院長に聞いた事実を挙げ、「クーパー(医療用はさみ)使用が適切だったかなど正直迷ったが、当日夜には正しかったと悩みは解消していた」と述べた。
患者の死亡については「胎盤剥離が大量出血の原因の1つ」と認めながらも、「剥離を途中で中断しないのが普通だ」と強調した。
起訴状によると、K被告は2004年12月17日、女性の帝王切開手術で胎盤と子宮の癒着を確認し剥離を開始。継続すれば大量出血すると予見できる状況になっても剥離を続け、女性を失血死させた。
2007年12月21日金曜日
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コメント
川口氏の傍聴記を拝見する限り、裁判官の心証はかなり被告人側に傾いているような印象があります。検察の粘着的な質問にさすがに辟易としておられるようですから。
かの石川弁護士でさえ次のように述べておられるそうですから、検察の戦略は失敗といえるという感想を持っています。
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藤田:石川弁護士の「裁判」観とは、どんなことですか。
勝村:「裁判は被告を負かすことではなく裁判官にわかってもらうこと」「被告側の尋問はあまり長くやりすぎると慣れてしまって良い証言が得られなくなる」など、医療裁判をするための方法論から、被害者にとって裁判とは何か、という哲学論的なものまで、知り合った当初はいろいろと断片的に石川弁護士の話を聞いて納得することが多 かったです。
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http://www.yfujita.jp/01/0103_katsumura.htm
投稿: ただの(ry | 2007-12-22 14:52
土下座させられて,本当にお気の毒。ベストをつくしても悪い結果が出てしまえば,自責の念に駆られるのが普通の医者。しかし、その自然な気持ちで謝ってしまうと、やはりミスがあったとの誤解を増長させ、手が付けられなくなる人たちが増えすぎました。本当にお気の毒な先生だと思います。
投稿: 欧州の消化器科医 | 2007-12-23 00:15