福島県立大野病院事件第12回公判@1/25(しばらくこの記事をトップに表示します)→情状のための遺族側証言「遺族の厳しい処罰感情」は「公共の福祉」に優先するのか
(追記 2/7) 来る2月18日は
K先生が福島県警に逮捕された日
です。2年前のことでした。
K先生のネット上での支援をYosyan先生が呼びかけておられます。興味を持たれた方は、Yosyan先生のblog「新小児科医のつぶやき」の本日付の記事
2008-02-07 今年も2.18企画
をご一読下さい。
(追記おわり)
現在、日本中で
産科崩壊
が問題となっているが、そのきっかけとなった
福島県立大野病院事件第12回公判
が今日開かれた。
メインは
亡くなられた産婦さんの夫君と実父、ご兄弟の方の証言
である。遺族感情の激しさが伺われる証言内容だ。
いつものようにロハス・メディカルブログの川口恭さんが傍聴記をアップしてくださっている。今日は河口さんが傍聴できなかったので、M先生のメモに基づくとのこと。
福島県立大野病院事件第12回公判(速報)
随時加筆予定(18:43)
(追記 1/26 13:40)
遺族側の証言は、検察が要請しているわけだけれども
墓前でK先生に土下座
させただけではまだ、足りないらしい。遺族感情が厳しいのはしょうがないにしても、
個人の感情
に振り回されて、
福島県立大野病院の産科が休止したまま
という
公共の福祉の阻害
をこれ以上続けさせていいのか。
妻が、娘が死んだ
という事実、それをあくまで
病死ではなく、「医療ミス」
と信じたい気持ちは分からないでもないが、遺族側証言を読むと
かなり経過の良くない状態で帝王切開になった
ことが見て取れるのだ。ご遺族は、そこを完全に勘違いされていると思う。
証言の以下の部分がそれを示す。上掲のロハス・メディカルブログより。
姉は1ヶ月前から病院に長期入院していたのにもかかわらず、このような事故がおきて残念です。
1ヶ月前から入院を勧められる分娩は、
経過に問題があり、出産時にはかなりの危険が予想される
ために取られる措置である。つまり
長期入院は母子共に命に危険が迫っている
というのが、常識的な判断だと思う。
わたしが不思議で堪らないのは
どうしてそれほどよくない状況の産婦さんが「命に関わるかも知れない」とご遺族が一度も考えなかったのか
ということだ。
分娩前に1カ月以上入院する
と聞けば、普通は
これは良くないのだな、場合によっては大変なことになる
と覚悟するのだけれども、どうしてそういうことにならず
医師の医療ミスだ
とだけ、信じようとするのか、わたしには理解が難しい。
しかも、
公共財である医療資源、その根本をなす医師
を、
遺族感情だけで「私的に処罰」=墓前で土下座をさせるなどの行為
があったその上で、いまも
K医師へ応分の処罰を望む
のは何故か。
福島県立大野病院の産科は休止のまま、そして熟達した産科医であるK医師は、産科医としての活動を一切禁じられたままだ。果たして、このご遺族に
福島県の大野病院産科を必要とする他の市民達の医療を奪う権利がある
のか。
こんな歪な刑事裁判が続く日本では、
産科医療は崩壊し続ける
だろう。
K医師の無罪を祈る。もし、K医師が有罪となれば、日本の産科医療は確実に崩壊するだろう。
そして、ご遺族の峻烈すぎる(というか正常な判断が下せない状態になっていると思う)感情をマスコミがこれ以上報道で垂れ流さないことを切に願う。
一般的な「産前の長期入院は危険なお産」という常識すら無視していらっしゃるご遺族について、これ以上報道を続けるのは、残念ながら
医療破壊に与する行為
に他ならないと思う。
(追記おわり)
続き。(1/26 8:00)
僻地の産科医先生がコメント欄で他の報道をご教示くださった。どうもありがとうございます。
こちらに再掲する。
大野病院の裁判 女性の遺族が意見陳述
福島中央テレビ 2008年1月25日大熊町の県立大野病院で、帝王切開の手術を受けた女性が死亡し、医師が起訴された事件の裁判で、女性の遺族が意見を述べました。
業務上過失致死などの罪に問われている県立大野病院の産婦人科医、K被告は、2004年に、当時29歳の女性の帝王切開の手術をした際、無理に癒着した胎盤を引き剥がして死亡させたとされています。
きょうの公判では、亡くなった女性の夫や父親など3人の遺族が意見を述べました。
この中で、夫は「問題がないならば、なぜ妻は死ななければならなかったのか。真実を明らかにして責任を取って欲しい」と訴えました。
また、父親は当時、病院側の対応に不満を持ち、「病院の壁の厚さから、何一つ真実を聞き出せなかった」と語りました。
被告の医療行為の正当性を争点に検察側と弁護側が激しく争ってきた裁判は、きょうで証拠調べが終わり、次回、3月21日の公判では、検察側が求刑を行います。大野病院裁判で遺族が訴え
NHK 2008年1月25日県立大野病院の産婦人科の医師が、帝王切開の手術で女性を死亡させたとされる事件の裁判で、遺族が初めて意見を述べました。女性の夫は、「手術後に医師から受けた説明はとても納得できるものではなかった。手術に何が欠けていたか、何をミスしたのかを医師には、真正面から受け止めて欲しい」と訴えました。
大熊町にある県立大野病院の医師のK被告(40歳)は4年前、帝王切開の手術の際に女性の胎盤を無理にはがし、大量出血を引き起こして死亡させたとして、業務上過失致死などの罪に問われています。これに対しK医師は無罪を主張しています。
福島地方裁判所で開かれた裁判では、遺族が初めて意見を述べました。遺族のうち、女性の夫は、「手術の後に医師から受けた説明はとても納得できるものではなかった。加藤医師は言い訳することなく、手術に何が欠けていたか、何をミスしたのかを真正面から受け止めて欲しい」と訴えました。
そのうえで、夫は、「この裁判を通じて閉鎖的な病院に対し真に開かれた医療を求めたい。医療の実態が明らかになれば、妻もうかばれるし、全国の女性が安心して出産できるようになれば、遺族の心のなぐさめになる」と述べました。 裁判は、ことし3月21日に検察側の求刑が行われたあと、5月16日に弁護側の最終弁論が行われてすべての審理を終えます。
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コメント
大野病院の裁判 女性の遺族が意見陳述
福島中央テレビ 2008年1月25日
http://www.fct.co.jp/news/#200801255181603
大熊町の県立大野病院で、帝王切開の手術を受けた女性が死亡し、医師が起訴された事件の裁判で、女性の遺族が意見を述べました。
業務上過失致死などの罪に問われている県立大野病院の産婦人科医、加藤克彦被告は、2004年に、当時29歳の女性の帝王切開の手術をした際、無理に癒着した胎盤を引き剥がして死亡させたとされています。
きょうの公判では、亡くなった女性の夫や父親など3人の遺族が意見を述べました。
この中で、夫は「問題がないならば、なぜ妻は死ななければならなかったのか。真実を明らかにして責任を取って欲しい」と訴えました。
また、父親は当時、病院側の対応に不満を持ち、「病院の壁の厚さから、何一つ真実を聞き出せなかった」と語りました。
被告の医療行為の正当性を争点に検察側と弁護側が激しく争ってきた裁判は、きょうで証拠調べが終わり、次回、3月21日の公判では、検察側が求刑を行います。
大野病院裁判で遺族が訴え
NHK 2008年1月25日
http://www.nhk.or.jp/fukushima/lnews/03.html
県立大野病院の産婦人科の医師が、帝王切開の手術で女性を死亡させたとされる事件の裁判で、遺族が初めて意見を述べました。女性の夫は、「手術後に医師から受けた説明はとても納得できるものではなかった。手術に何が欠けていたか、何をミスしたのかを医師には、真正面から受け止めて欲しい」と訴えました。
大熊町にある県立大野病院の医師の加藤克彦被告(40歳)は4年前、帝王切開の手術の際に女性の胎盤を無理にはがし、大量出血を引き起こして死亡させたとして、業務上過失致死などの罪に問われています。これに対し加藤医師は無罪を主張しています。
福島地方裁判所で開かれた裁判では、遺族が初めて意見を述べました。遺族のうち、女性の夫は、「手術の後に医師から受けた説明はとても納得できるものではなかった。加藤医師は言い訳することなく、手術に何が欠けていたか、何をミスしたのかを真正面から受け止めて欲しい」と訴えました。
そのうえで、夫は、「この裁判を通じて閉鎖的な病院に対し真に開かれた医療を求めたい。医療の実態が明らかになれば、妻もうかばれるし、全国の女性が安心して出産できるようになれば、遺族の心のなぐさめになる」と述べました。 裁判は、ことし3月21日に検察側の求刑が行われたあと、5月16日に弁護側の最終弁論が行われてすべての審理を終えます。
投稿: 僻地の産科医 | 2008-01-25 23:14
医療技術的に問題がなくてもしぬことがあるのが医療です。
医療に100%はあり得ない。
「100%安全な車」が存在し得ないのと同じです。
何が欠けていたのかといわれたら、「今の日本ではできるだけ安全な治療を行うための人的・金銭的資源が欠けている」と言うことでしょう。
もし、人が基本的に同一のものであるという前提に立たなければ、すべての治療はただの「人体実験」になってしまいます。
出血多量のため救命できなかった「責任」がまったくないとは言いませんが、少なくとも刑事事件を問われるようなものではありえないと思います。
人の悪い言い方をすれば、「医者は患者を殺して(死なせて)成長する」という格言があります。その通りだと思います。
投稿: Seisan | 2008-01-28 19:02
エントリーと関係の無い件で申し訳ありません.
あまりにもひどい書き様なので,お知らせ致したく書き込みさせていただきます.
http://mainichi.jp/area/aichi/news/20080224ddlk23070076000c.html
From60:稲葉康生の目 「医は算術」では困る /東海
「医師会員の3分の1は欲張り村の村長」。25年もの間日本医師会(日医)の会長として君臨した故・武見太郎氏はこう嘆いたという。「医は算術」という風潮を根付かせてしまったところに、日本の医療の根本的な問題がある。医療制度の分かりにくさ、診療報酬決定に至る不透明さが、国民から不信をもたれている理由だ。
いま、医療の仕組み、財政、そして医療機関や医師の不足、偏在など問題が山積している。政治家や厚生労働省の官僚だけでは、難局は乗り切れない。やはり医師が医療改革の中心にいなくてはならない。
だが、現実はお寒い状況だ。日医は診療報酬引き上げに懸命となり、医療費抑制を図りたい官僚とのバトルが続いている。その舞台裏は国民不在そのもの。取材でこの光景を目の当たりにすると、医療改革の道険し、との思いをもってしまう。
「医療の専門家でもないのに、口を出すな」。医師からこんな投書が何回も届いた。だが、専門家だけでやってきたことが、今の混迷を招いたのではないか。医療を国民に近づけるために、皆で意見を出すべきなのだ。(中部本社代表室長=前社会保障担当論説委員・57歳)
毎日新聞 2008年2月24日
投稿: ahosidai | 2008-02-25 11:02