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2008-01-04

救急医療崩壊 焼け野原に焼夷弾 東大阪で前線の医師不足が露呈(その2)昨年10月ノリックが大動脈損傷で亡くなったときもすぐそばの病院のICUは満床

今回の東大阪の不幸な事故はミニバイクのものだったが、昨年10月
 阿部典史選手がバイクに乗っているときにトラックと衝突して大動脈損傷による失血死が原因で死亡
している。
2007-10-08 ノリック 公道で交通事故死→現場の傍に住んでいます 事故直後の現場を目撃しました
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/10/post_fb6b.html
ノリックの事故は、今回の東大阪の事故といくつか類似点がある。
1. 首都圏の川崎市で起きた事故なのに、すぐに搬送先が見つからなかった
2. 事故が「日曜日の夕方」という「救急が手薄な時間」に起きた
3. バイク事故で「大動脈損傷」による失血死という不幸な転帰をたどった
という3点である。

ノリックの事故の当時、近隣の病院に勤務している知り合いの救急医が、肋骨を折っているバイク事故の処置の仕方について、詳しく説明してくれた。また、事故現場から近いところに三次救急もあったが、受け入れられていない。その部分を再掲する。


2007-10-10 ノリック 公道で交通事故死(その2)Uターン禁止の道路でUターンしてきたトラックはセブンイレブンの配送車という噂→委託配送業者に課せられた厳しい配送条件が事故の遠因か→救急搬送に関して追記あり
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/10/2uu_2bb5.html
(略)

事故当時、近隣の病院で勤務していた、スポーツの現場での経験も多い救急担当の知人は
 肋骨骨折による大動脈損傷での失血死なら、もう少し早く、ちゃんと固定して、うちに搬送してくれたら助けてあげられたかも知れない、残念だ
と言っていた。救急医療のマニュアル(JPTEC)によれば、バイク事故の場合は
 頭部から背中から全部固定して搬送
することになっているという。ただ、上記の事故現場の目撃証言には

首から左胸にかけてかなりの出血でノリックは左胸を抑えながら足をバタつかせもがき苦しみ、しきりに『痛い、痛い』と言っていたそうです。意識があり動いていた
ということなので、かなり厳しい状態だったかも知れない。
普段、公道では二輪に乗らなかったノリックが、たまたま納車されたばかりのT-MAXを走らせていたのは、不運だったとしかいいようがない。実に悲しい。
続き。(14:56)
救急担当の知人(『BLSヘルスケアプロバイダーマニュアル 日本語版—AHAガイドライン2005準拠』の翻訳者)が、更に詳しい説明をしてくれた。

今回の場合は高エネルギー外傷ですから 直ちに全身固定し搬送です back boardってのを積んでいるのでそれに縛ります 隊長が声掛けして意識と気道を確認 隊員に酸素と気道確保を指示し もう一人の隊員が出血部を圧迫固定 万が一, 気胸が有れば, ビニールでone way閉鎖(中から外にだけairがでる) 肋骨の同様が有れば, 厚めのガーゼで固定 気道酸素以外省略のこともある で,患側(怪我した側)の向こうにback board を置き 3人で患者を手前に傾けboardを背中に入れる そのあと体幹 腰部 大腿をベルト固定 頸椎固定 して出発 もちろん他にもいろいろするけどね 骨盤動揺などはさっと見ておかないといけないし

ちなみに知人によると
 川崎市立川崎病院は現場からかなり近い場所
にあるという。
事故現場は川崎市大島1-30の市道
だ。

確かに川崎市の三次救急病院である川崎市立川崎病院がすぐ近くにある。
川崎病院 救命救急センター・救急科
「暇人28号」先生にいただいたコメントにあるように
 医療崩壊の影響で、ノリックの搬送先がなかなか決まらなかった
のかもしれない。だとしたら、余計に辛い。

ノリックの事故は、現場でかなりの重傷であると見て取れたようなのだが、今回の事故ではどうだったのか。救急隊のトリアージは適切に行われたのか。その点は報道からは不明だ。

そして、ノリックの事故では、
 近隣のICUが満床
という状況が現実にあった。その時の記事を再掲する。


2007-10-11ノリック 公道で交通事故死(その3)救急搬送が遅れた原因の一つは「看護師不足によるICU減床」か

ノリックが事故にあった現場の近くには、救急搬送を受け入れる大きな病院がいくつかある。
しかし、
 すぐに搬送できなかった
のだった。
事故当時、近隣病院で勤務していた救急担当の知人が調べてくれた。 勤務していた病院は
 ICUが満床で受け入れ不可能
だったのだ。ICUのベッドさえあいていれば、大量輸血もできる病院で、みすみす大動脈損傷による失血死にはしなかっただろう、と知人は悔しがっていた。
知人の勤務する病院は
 ICUのベッド数が8床から6床、そして今は4床までに減った
という。原因は
 看護師不足
だ。たとえ設備があり、医師がいたとしても、
 ICUで働く看護師さんがいなければ、ベッド数は削減せざるを得ない
のである。
看護師不足が起きた原因は
 厚労省が昨年から導入した7対1看護体制
である。入院患者に対し看護師を厚く配置した病院の診療報酬を上げる、という施策で
 1人の看護師あたり7人の患者さんという人員配置をすると診療報酬がたくさんもらえる
のだ。これまでは
 1人の看護師あたり10人の患者さん
というのが上限だったから、稼ぎたい病院は
 文字どおり日本中から看護師を集めた
のである。その結果
 地方から大都市へ看護師が流出、地域医療の質が保てなくなったり、多数の看護師を必要とするICU/NICUなどが、必要な看護師数を雇用できず、減床や休止に追い込まれる事態
になっているのだ。
知人の勤める川崎の病院は
 関東で一番看護師給与が高い病院
だそうだ。しかも首都圏にあるこの病院で
 人手不足で、ICUを減床せざるを得ない状況に陥った
のである。恐らく、ノリックの搬送先を探していたとき、近隣の病院も
 ICU満床
もしくは
 高度な医療を施せない看護師不足
に陥っていたのではないか。
もし、ノリックが川崎でなく、都内で事故に遭っていたなら、少しは事情は変わっていたのだろうか。都内でも救急搬送に掛かる時間は年々長くなっていると聞くのだが。
厚労省の
 7対1看護体制
が、
 手厚い看護が必要なICUなどからの看護師流出
を招いたのは間違いない。
ノリックの搬送先がなかなか見つからなかったという悲しい事実は、
 10年前なら助かっていたケガや病気が、たとえ首都圏であっても、助からなくなってきた救急医療崩壊
を示しているのだ。医療崩壊は、医師の撤退によるだけでなく、看護師不足からも起きている。
ノリックの死を無駄にしないためにも
 看護師の適正配置を促す施策
が求められる。
 首都圏で、世界的に有名なアスリートが、すぐ側にたくさん病院があったにもかかわらず、看護師不足によるICU減床などによって受け入れ先が見つからず、搬送が遅れ、むざむざと亡くなった
のは、果たして先進国の医療体制にふさわしい状態と言えるのか。厚労省には今一度考えていただきたい。

東大阪の事故搬送に関しても、救急医療の抱える問題は上記とほぼ事情は変わらないだろう。あるいは更に悪化しているかも知れない。

それよりも問題なのは、10月のノリックの事故があってから3ヶ月が過ぎているのに
 バイクの事故の搬送と大動脈損傷
という類似点があるノリックの事故について、メディア側がまるで知らないのではないかと思われる報道のされ方である。
 首都圏川崎で日曜の夕方
という、今回の東大阪の事故よりも
 多少は条件がよいと思われるバイク事故
であっても、
 ICUに空きがなく、ノリックの搬送先が見つからなかった
のだ。
ましてや今回の東大阪の事故は
 正月三が日の深夜に近い時間帯のバイク事故
なのである。

正月で手薄なのは
 救急医療
だけでなく
 メディアの方が深刻
なのではないか。ちょっと検索すれば出てくるバイクの大きな死亡事故である
 ノリックの事故
と、今回の事故をつなげて考えられる記者が誰もいないようなのは、
 普段医療記事を書いている記者は「正月休み」
だったのではないかと疑う。

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コメント

え、正月だから、こんなレベルだったとか、優しいなあ。

これが平均だと思いますが。私は。

投稿: ssd | 2008-01-04 14:33

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