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2008-01-07

救急医療崩壊 宮城で救急隊が、重度熱傷の搬送に最初に二次救急を選び、搬送に55分かかるという報道 NHKは地域医療を崩壊させたいのか→追記・訂正あり

NHKはよほど
 地域医療の崩壊を促進
したいらしい。
昨夜、宮城県蔵王町で起きた火事で重度熱傷を負った88歳の女性の搬送先がなかなか見つからず、通報から搬送終了まで1時間半ほどかかった。
宮城県の救急医療体制は次のようになっている。
宮城県の救急医療体制図
上記のサイトから、救急医療体制の地図を抜き出した。(画像はクリックすると拡大します)

1
今回火事のあった地域は、救急医療体制では
 仙南医療圈(黄色い地域)
であるが、ここは二次救急までしか診ることが出来ず、今回のような重度熱傷の治療のためには
 県内の救急救命センター
に搬送しなければならない。最も近い救急救命センターは隣接する仙台市の
 仙台医療圈(黄緑の地域)
に3つある。上記地図の黄緑の地域に橙色の六角形に1-3の番号が付されている、
・仙台市 東北大学病院高度救命救急センター 1
・仙台市 仙台医療センター救命救急センター 2
・仙台市 仙台市立病院救命救急センター 3
の3つである。また、現場に一番近かった二次医療機関は黄色い地域の白い四角に番号が付されている、
・公立刈田総合病院 4
・蔵王町国保病院 6
・みやぎ県南中核病院 7
の3つだが、蔵王町国保病院は救急の輪番に参加していない。重度熱傷は二次救急が扱える症例ではなく、救急救命センターの受け入れ適用例だと思われる。
そうした前提の元で、以下のニュースを読むと、
 いかにNHKが救急医療に対する理解を欠いているか
が、明らかだ。

NHKニュースより。


やけど患者 5回受け入れ拒否

6日夜、宮城県蔵王町で起きた火事で、全身やけどを負った88歳の女性が、救急搬送の際に4つの病院から5回にわたって受け入れを断られ、通報からおよそ1時間半後にようやく病院に運ばれていたことがわかりました。

火事が起きたのは、宮城県蔵王町の住宅で、6日夜10時すぎ、この家に住む山家タマコさん(88)が全身に大やけどをし、救急隊などが受け入れ先の病院を探しました。
Zot1


しかし現場に近い「公立刈田綜合病院」や「みやぎ県南中核病院」からは、やけどの状態が重く対応できないとして、受け入れを断わられました。
Zot2


さらに、仙台市にあって専門の治療ができる東北大学病院からは「ほかに急患がいるため」という理由で、Zot3また仙台市立病院からも「大学病院のほうが適切な医療が受けられる」と、いったんは要請を断られました。Zot4


この間、山家さんは30分ほど現場で待たされ、再度の要請で、仙台市立病院に搬送されましたが、通報からはおよそ1時間半たっていました。Zot5

山家さんの容体は、やけどの程度がひどく重い状態だということです。これについて蔵王町などで作る消防本部は「一刻も早い搬送を目指しているが、結果として時間がかかり、患者に負担をかけてしまった」と話しています。

1月7日 14時54分

(追記と訂正 22:13)
二次救急が崩壊している、もしくは二次救急に余力がなく、いきなり三次救急に軽症の患者さんが搬送されて、正確なトリアージができなくなりつつあるのが、現在
 救急搬送先が見つからない
一つの原因だ。
なお、この蔵王町の救急搬送については、
 二次救急に断られないと、三次救急に搬送できない
というシステムに則っており、
 重度熱傷であっても、即座に三次救急に搬送しないというマニュアル
の元に救急搬送が行われているという、「だめ医者」先生のご指摘があったので、以下の記述について、加筆して訂正します。つまりは
 2つの二次救急に断られる
という経過は
 三次救急に搬送するための必要条件
ということだそうです。だから
 55分かかった救急搬送は、必要な問い合わせによる時間の経過
であり、
 現場に問題はなかった
ということになります。その点の誤解をお詫びし、以下に訂正します。(追記と訂正についての説明 おわり)

では、復習です。
上記4病院の内
1. 公立刈田綜合病院→二次救急
2. みやぎ県南中核病院→二次救急
なので、生命に関わる重度熱傷は取り扱えない。というわけで
 最初の2つの病院は、そもそも搬送できない病院
だ。これは
 救急隊の連絡手順が間違っている三次救急への転送のための「前提としての二次救急での受け入れ不能」の確認
と思われる。
従って、最初から
3. 東北大学病院→急患治療中
4. 仙台市立病院→より高度な治療を受けられる東北大学病院を推奨
というこの二つに絞ってが次のターゲット連絡すべきだったというのが一つだが、現場では
 二次救急に断られるという手順を踏まないと、三次救急に搬送できない
というマニュアルがあったようだ。この
 生命に関わるような重度熱傷を本来取り扱えない、二次救急に連絡を入れている段階で、かなりのタイムロスがあった
と見るべきだろう。だいたい一箇所に確認の電話を入れるのに10分前後かかる。
だから
 一時間半かかった
のではなく
 救急隊の連絡ミス三次救急への搬送のための「二次救急での受け入れ不能」確認により、三次救急への搬送がその分遅れた
というのが正しい。ところがNHKは
 二次救急に連絡した救急隊のミス手順を見逃し、断ったことをあげつらっている
のである。また、三次救急の判断だけど、東北大は処置中だし、仙台市立病院は患者さんの容態が重いのを聞いて、まずはよりよい医療を受けられるように判断した、と考えられるから、最初の判断が間違っているとは言えない。
結局
 通報から搬送終了まで1時間半かかった
のは、
 重度熱傷の患者を、最初から三次救急に搬送しようとしなかったするためには、どうしても二次救急からの「受け入れ不能の判断が必要」だった救急隊の搬送システムの問題仕様
であり、病院が責められるべき問題ではないのだ。しかも、
 受け入れ拒否
ではなく
 受け入れ不可能
というのが正しい。それとも
 処置中の東北大学病院
に、何が何でも搬送するのが正しいのか?NHK。ま、おたくら
 NHK職員は何が何でも大学病院に行けば治る
と信じてるんでしょうな。

NHK職員は
 全国を転勤する、非地元民
が多いわけで、このニュースの取材をした記者も、恐らく
 非東北民
だろう。というのは、東北の地元新聞『河北新報』はNHKのような
 おざなりな取材
で済ませていないからだ。


全身やけど、搬送に1時間 宮城・蔵王で住宅全焼

 6日午後10時15分ごろ、宮城県蔵王町平沢、無職山家タマコさん(88)方から出火、木造平屋の住宅約35平方メートルが全焼した。山家さんは全身やけどの重傷で、仙台市立病院に搬送された。救急車は四つの病院に計5回受け入れを断られ、現場到着から出発までに約30分、病院収容までに結局、約1時間かかった。

 仙南地域広域行政事務組合消防本部(宮城県大河原町)によると、救急車は大河原消防署から出動し、午後10時50分に現場に到着。山家さんは意識はあったが、特に腰から下のやけどがひどく、高度な治療が必要だったという。

 消防本部は公立刈田総合病院(白石市)、東北大病院(仙台市)などに受け入れを要請したが、他に救急患者がいたり、体制の整った病院を勧められるなどの理由で断られ、最終的には仙台市立病院が2度目の要請を受け入れた。

 東北大病院は「2、3回の手術が必要な重症の熱傷患者が2人入院中で、新たな患者を治療する余裕がなかった。ただ、他病院の受け入れが難しい場合は引き受けるつもりだった」(救急部)と説明している。

 消防本部は「全身やけどは処置が難しく、高度治療が必要だったために起きた極めてまれなケース。いわゆるたらい回しとは考えていない」と話している
 白石署の調べでは、山家さんは一人暮らし。炭こたつと石油ストーブがある茶の間付近の燃え方が激しく、同署が原因を調べている。
2008年01月07日月曜日

ま〜、
 正しいトリアージが現場で行われておらず、たとえ重傷であっても、最初に、一番適切な三次救急医療機関への搬送依頼が行われなかったい「救急搬送のシステム」の仕様による「二次救急への受け入れ不能の確認」で時間がかかった
のが、今回の「搬送に1時間」の正体だ。河北新報の記事に従って時系列を整理する。
22:15 出火 消防へ通報
22:50(出火35分後) 救急車現場へ到着
 重度熱傷を二次救急の公立刈田綜合病院・みやぎ県南病院に連絡するというミス仕様→三次救急に受け入れを求めるための「二次救急では受け入れ不能」を確認する仕様
 三次救急の東北大学病院に連絡(処置中)
 三次救急の仙台市立病院に連絡(症状が重いため、東北大を薦める)
 三次救急の仙台市立病院に連絡(東北大が受け入れ不能のため応需)
23:20(出火65分後 救急車到着30分後) 仙台市立病院へ搬送開始
23:45(出火90分後 救急車到着55分後) 仙台市立病院到着
通報から35分で救急車が到着、それから1時間以内に目的の三次救急医療機関に運ばれているわけで、宮城県の救急医療体制を考えるなら、最初のトリアージに失敗して、二次救急の病院二つに連絡しているミス仕様を除け考慮すれば、至極妥当な搬送だと思うのだが、何故それを
 5回受け入れ拒否
などと、NHKはミスリードするのか。

こうした
 誤った報道
が、現場のやる気を失わせていることに、NHKは気がつかず
 医師が悪い
と言いたいらしいな。不思議なのは
 この5回の受け入れ不能の情報
がどこから流れたかだ。(訂正 以下については削除します)
それともNHKは
 救急隊は常に善で、絶対にトリアージにミスはない
 どんな救急搬送も必ず受け入れられる
という立場なのか? そりゃあ
 叩くのなら、社会的地位の高い医師
の方が面白いだろうね。
 ご近所の底力
なんて番組だの
 地域の活性化
だのという
 「地域」の人は善
という大嘘コンセプト番組を垂れ流しているNHKとしては
 地域の人が担っている救急隊のミスマニュアルの不備などで搬送が遅れた
ということが、たとえあったとしても、口が裂けても報道できないのだろう。正解は
 地域の人には善人も悪人もいる
だ。そして
 緊急の場合に、常に最善の道が開かれるわけではない
という、不幸な真実も存在する。その点は、残念ながら、
 運不運に左右される
というより仕方のない場合もあるのだ。
ま、
 受信料を支払ってくださる「地域住民」を重視
するという
 経営戦略
の元に、
 救急隊と医師の連携がうまくいかない場合は、医師が絶対に悪い
と決めつけて報道するように、指示でも出てるんじゃないかと、疑いたくなるほどひどい報道が続いてますな。

このまま
 一部の救急隊と病院間の搬送判断ミス連携の不具合
が続くようだと、
 救急車が走る棺桶
と化す日も近い。かつ、
 一方的な医療機関叩き
が続くようだと
 現場で足りないのがなんなのか
が、全く判断できなくなる。
 搬送システムが機能してない地域
もあるだろうし、
 搬送マニュアルに問題のある地域
もある。
 不具合を起こしている根本的な原因が搬送先にのみ求められる
のであれば、
 現場から医師は立ち去る
だろう。
 適切な判断による、医療機関への迅速な連絡
が行われない限り
 助かる命も助からない
という事実を、どうしてもNHKは隠蔽したいモノのようだ。
人的資源も医療資源も、どちらも限られているのに
 無限の可能性ばかりを求められる
のでは、現場は疲弊するばかりである。

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コメント

われわれが改善を望むのは、医療システムや報道の質の改善であって、
これが現場の救急隊員や医師の資質・医療機関の規模によって左右されるとは思っておりません。
また、現場の人員の能力に過度に依存するシステムは危険でもあります。

急性アルコール中毒や、タクシー代わりに利用される救急搬送の現状を鑑みると、
今回の件では救急隊に明らかなミスはありません。

現実には、まず救急車は二次医療機関に搬送すべきという規定があります。
三次医療機関は、二次医療機関で医師の診察を受け、三次医療機関への
搬送が必要との診断を得てから、電話・FAXでの問い合わせの上、紹介状を持たせて
搬送するのが基本です。
現場の詳しい状況は不明ですが、まず二次医療機関に
問い合わせることは一概に誤りとは言えないと考えられます。
規定を破って直接三次医療機関に搬送するならば、救急隊の判断にも客観的な根拠が必要になる時代です。
二次医療機関で受け入れ不能の返事はその根拠になります。

部外者が現場の救命士に対する態度は、
「責任を持って負傷者を病院に連れて行って頂き、お疲れ様でした。
今回、病院収容まで時間がかかったのは仕方がないと思いますが、
救急の現場から救急システムに何か改善できる事があれば提言していただけますか?」
とすべきです。

過度に救急隊員の過失を追及して(ミス=刑事事件+損害賠償となる)
仮に病院に医師が残っても、搬送する消防署員が辞めてしまっては、
家族や隣近所の善意で傷病者を搬送しなければならない事態になってしまいます。

投稿: だめ医者 | 2008-01-07 21:07

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受信: 2008-01-08 21:30

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相変わらず、「たらい回し」報道のように「病院が何で断るんだ」という報道が目に付きますが・・・それにしても、利用者サイドにも問題があるという指摘がそろそろなされる時期に入っていると思います。 逆にいうと、救急病院に昼間に受診するべき患者さんまでもが、わんさと押し寄せているのを無視して「お前ら仕事しろよな」というのは「命の現場」を無視していると思います。その余分な救急受診が「他の患者さんの命を犠牲にしている可能性」があるなんて・・・思わないだろうけども。行列に並んでまっている弱者のイメージを、別の目で見... [続きを読む]

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