「犯罪の9割は失業率で説明がつく」大学生のゼミ論文がすごい まさに「恒産無ければ恒心無し」→『戦前の少年犯罪』著者管賀江留郎氏は「警察が失業率に合わせて犯罪認知数をノルマにしている」のではと推測→統計学の専門家に聞いてみました
baatarismさん経由。
元ネタは、久留米大学経済学部の松尾匡教授の文章。
08年1月14日 犯罪の九割は失業率で説明がつく
久留米大経済学部の論文Aという授業で、「景気と犯罪の関係をテーマにしたい」という学生が
失業率と犯罪発生数の相関を取ったら、有意な結果が出た
という驚くべき結果を得たのだ。
詳しいことは、上記、松尾教授の文章をお読みいただくとして、結局は
失業率を低下させることが、犯罪数の減少に何よりも効果がある
という、古くからの経験則が統計学的に裏付けられたわけだ。人口に膾炙(かいしゃ)している
恒産なければ恒心なし
というのは『孟子』滕文公上に出てくる
無恒産者無恒心(恒産 無き者は恒心 無し)
がパラフレーズされているわけだけれども、まさしくこの
失業率と犯罪には相関がある
ということを経験則から述べたものだ。
道徳などと言うことは、生活の安定なくしてはあり得ないと、孟子も言ってるわけで、いま、教育再生会議が
徳目
なんて、言いつのっているのは、
恒産無き時代に恒心を持たせようとする暴挙
に他ならない。てか、はっきり言って
無理無体
だ。
S.A.さんからコメントを頂き、次の記事をご教示いただいた。どうもありがとうございます。
久留米大の松尾匡教授の記事にも言及されている
『戦前の少年犯罪』
の著者「管賀江留郎」氏のblog「少年犯罪データベース」の記事だ。
2008年01月16日 考える前にやるべきことがあるだろ
管賀江留郎氏は、
「警察は失業率を基にして刑法犯認知件数にノルマを設定している」
失業率が発表されるのは翌年で、それを基に計画を立てて実行に移すのはさらに1年後ですから、失業率があがってもさがっても最低2年のタイムラグが生じます。
失業率を基にして刑法犯認知件数を決めているのなら、「率」と「数」が相関するのは当然です。
なにより、恣意的に操作しているのに相関する理由がわかります。むしろ、ここまでぴったりと見事に相関してしまうのは、人間が意図的に操作しているからだと考えたほうが自然でしょう。
「犯罪の九割は失業率で説明がつく」より、はるかに説得力があります。
と推測している。確かにこれだと
失業率と犯罪件数に相関がある理由が説明できる
よね。
更に続き。(17:37)
統計学が専門の友人が
あんまり綺麗に出るときは、分析に入ってない共通因子を疑うのが基本
と教えてくれた。なんでも
時系列データは共通因子が山ほど隠れているから、相関が高めに出やすい
んだって。友人が更に説明してくれたが、
こういう主張をするなら都道府県別のクロスセクションデータでもやってみて欲しい
とのことである。
で、彼の見立てでは
グラフ見ると不均一分散とか自己相関とかいろいろありそう。このデータは、単純な回帰の結果で論じるとミスリーディングな気がする。
というところだそうだ。
もっとも、友人もわたしも一致した見解は
大学3回生(だろうと思う)の論文なら、面白い
ということだ。もし、これが学術論文というのであれば、更に検証をしなくてはならないけど、今回のは
授業の一環
でしょう? ネットで見られる意見の中には、結果に目くじらを立てている向きもあるが、
学生が自分でやって出した結果
というところは、買って上げないとね。不備をあげつらって、若い才能の芽を摘む必要は全然ない。
統計はウソをつく手段ともなるけれども、こうしたデータが得られたという経験があれば、今後、更に自分の求めるテーマに対して、どういう統計処理をするか、ということに興味が増すと思う。
それと、こんなことは無いことを祈るが、この学生の所属する大学が、東大だったら、また反応は違ったのではないかと思うんだよね。大学名に対するバイアスがかかった批判がないことを祈る。
どんな大学であっても、よく出来る学生はいる。つねにまんべんなく出来る学生というのは、所謂難関大学には多いかも知れないけれども、受験が不得手で、有名ではない大学に行っている学生のレポートにも、有名大学の上位学生に劣らない、素晴らしいものがあることは確かだ。
わたしにとっては、そういう優れたレポートに接する機会が得られることこそ、大学教員の喜びの一つだと思っている。
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コメント
ttp://blog.livedoor.jp/kangaeru2001/archives/51481922.html
こんなエントリーもあります。
投稿: S.A | 2008-01-16 13:50
よくわからないのですが、文系の世界では相関が出ると、因果関係があるとしてしまう人が多いのですか?
投稿: ssd | 2008-01-16 20:09
大学教員を長くやっていた中国文学者・エッセイストの高島俊男さんも、同僚といろいろ経験を話し合った結論としてここの結論である「優秀な学生は、どこの大学にもいる(数、比率はともかく、そこのトップクラスは間違いなく優秀だ)」という議論を肯定していました。
その後、同氏は「働きアリも2割だけが優秀な働き者で、8割は怠けている。ところがその8割と2割を分けると、またその中で優秀なものと怠け者が同じ比率で生まれる」という科学論文の話を聞いて、「おんなじだなあ」と納得したとか。
(これこそ人間の話とは関係ないでしょうけど)
投稿: Gryphon | 2008-01-17 07:38