のだめカンタービレ in ヨーロッパ Special Lesson1@1/4 21:03-23:20 フジ

のだめカンタービレの10-15巻から、のだめと千秋達がパリに留学した後のエピソードを抜粋して
　Special Lesson1=千秋編
　Special Lesson2=のだめ編
としたのが、今回の
　のだめカンタービレ in ヨーロッパ@1/4-1/5
だ。
まずは
　第一日目のSpecial Lesson1 千秋編
について。

場所と時間設定に「大人の事情=ロケ時期と初期設定」が絡んでいるけれども、
　2007年9月中旬〜下旬
をプラティニ国際指揮コンクールに設定、舞台をチェコのプラハに移して(原作ではフランス)、コンクールの様子が丹念に描かれる。
　国際指揮コンクールで何が求められるのか
が、原作通り、わかりやすく丁寧に撮影されている。
もちろん、テレビドラマという制約がある上に
　海外ロケ
という更なる縛りがある中で、これだけ
　ヨーロッパの国際コンクールの空気
を描けたのは成功だと思う。
クラシックのコンサートでは、一番目立っているのに、どうやって一人前に育っていくのか、一般には知られていない指揮者のデビューについて、原作に添いつつ、
　ドラマとして成功させるか
というのは、かなり難しい問題だったと思う。それを打ち破ったのは
　原作の力
であり、その原作のパワーを
　テレビドラマに移した衛藤凜の脚本の力
だと思う。原作から、忠実に重要なセリフを選び、シーンとして捨てた部分にも目配りを欠かさず、
　物語としての流れをきちんと組み立てている
その力には脱帽した。
原作は、ともすると、(たぶん、作者のバックにいるクラシック関係者の話が面白すぎるのだと思うのだが)クラシックの蘊蓄に流れている部分があるが、そうした部分を
　ドラマを成立させるために、説得力のある形で独白の形で入れ込んで
おり、さらに
　何を選び、何を捨てるか
の見極めが明快だ。見る者を惑わせることなく
　クラシックの世界に抵抗なく導く
力が素晴らしい。

もちろん、こうした原作の世界をテレビドラマに移す作業に当たっては、脚本のみならず、現地リサーチャーの力も大きい。スタッフの
　原作への愛
ひいては
　クラシック音楽への愛
が、今回の"Special Lesson1"全体を支えていると言ってもいい。("Special Lesson2"に関して言えば、原作へのリスペクトよりは、登場人物間の関係の解明に意が注がれている)
海外ロケで得られる
　ヨーロッパならではのショット
が、「のだめカンタービレ　海外編」の世界をより実体化し、かつバックに流れる
　豊富に用いられるクラシック音楽
が、作品世界を美しく彩っている。
　風景と音
が、無駄なく効果を上げている好例だ。

そして、なにより、「のだめカンタービレ」を演じる人々が乗っている。主演の上野樹里、玉木宏は当然、1年という時間が空いているのにもかかわらず、「のだめの世界」を連ドラ当時と変わりなく作り上げている。
"Special Lesson1"は
　千秋の成功物語
だが、「天才」千秋がいかに
　人と関わるシチュエーションで失敗し、失敗を糧に、更に上に伸びていくか
が描かれる。どちらかというと
　孤高の天才
であった千秋が、プラティニ国際指揮コンクールを通して、
　指揮者としての自己表現に目覚めていく姿
が、よそ見することなく、まっすぐに描かれる。そういう意味では実に教育的なドラマだ。

もっとも、元がギャグ要素の多い漫画で、かつ
　ギャグとしては問題ないが、実写にすると「暴力シーン」
になる部分を含むので、所謂
　文科省推薦モノ
にはなりにくいのだけれども、そういう部分を勘定に入れても尚、
　成長と成功の物語
として、よく出来ている。
千秋の場合は、幼少時にヨーロッパで過ごしており、
　語学の壁がない
のが、一つのポイントではある。
音楽を
　言語化する
ことに慣れ、それが多言語で可能な千秋の成功物語が、
　Special Lesson1
であり、続く
　Special Lesson2
は、島国から初めて外に出た、語学の苦手な日本人の成長物語になる。

Special Lesson1とSpecial Lesson2とは、両者が相まって、一つの姿となる作品である。
Special Lesson2については、後ほど。