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2008-01-08

NICUの向こう側(その2)NICUの慢性的な満床は解決できるのか

年末にNHKニュースで
 300g未満で生まれた赤ちゃんのその後の生育
を取り上げていた。ご両親が懸命に育てていらっしゃるが、超低出生体重児の負いがちなハンディである、肺の機能や網膜などのトラブルがあるという。発達もゆっくりだ。
このお子さんの場合は、ご両親の元に帰ることができたのだけれども、NICUに搬送される
 超低出生体重児
など、トラブルを抱えて生まれてきた赤ちゃんは、その抱える問題が大きいほど、NICUでの入院期間が長くなり、かつ、家に帰れなくなり勝ちになる。甚だしい場合は
 NICUに赤ちゃんを置き去り
という悲しい事態も起きるのだ。
そのことについては、昨年4月に
 2007-04-12 NICUの向こう側 長期入院している子どもはなぜ家に帰れないのか
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/04/nicu_4c56.html
で取り上げた。

また、これはマスコミのミスリードが問題なのだが
 NICUに搬送すれば、すべてOK、ある程度の入院加療で「健康な赤ちゃん」と家に帰れる
のではない。NICUから出た赤ちゃんが次に移されてケアを受ける後方病床の人員配置は、
 保育園の保育士より低い密度になっている医療機関
があり、
 赤ちゃんに十分なケアが出来てない場合がある
ことも指摘されている。これについては昨年の3月に取り上げている。
 2007-03-16 周産期医療の担い手が足りない NICUの後方病床で赤ちゃんが哺乳瓶を「一人飲み」が多発 原因は看護師数に関する法令などがないため@明日3/17 NHK総合「おはよう日本」で放映予定
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/03/nicu317_nhk_c01d.html
この問題は、その後どの程度改善されているのだろうか。

こうしたNICUの抱える問題の一つ
 長期入院して、ベッドが空かない状況
を打破するために、厚労省が動いた。
朝日より。


新生児集中治療室の満床対策、病床移行の調整役配置

2008年01月08日06時05分

 未熟児らを専門的に治療する「新生児集中治療室(NICU)」の満床状態が患者受け入れ拒否の一因になっているとして、厚生労働省は新年度から、NICUに長期入院している子どもの症状に応じて、小児科や福祉施設への移行を支援するコーディネーターを全都道府県に配置する対策を決めた。病床を空けるための「追い出し」にならないよう親の希望も聞きながら、子どもに適した療養環境を検討する。

 厚労省は昨年暮れ、新年度からのコーディネーター配置を求める通知を出した。人件費の3分の1を国が補助する。補助要件は今後詰めるが各都道府県に1人ずつ、看護師やソーシャルワーカーらを置くことを想定。既存施設の有効利用のため、橋渡し役を担ってもらう。

 昨年1月の厚労省調査では、リスクの高い妊婦や新生児に対応する全国58の総合周産期母子医療センターのうち回答施設の6割が、地域の病院などからの新生児の受け入れ要請を断ったことがあった。7割は妊婦搬送を断ったこともあった。いずれも理由の9割は「NICU満床」だった。

 NICUは全国に5000床ほどあるが、平均入院期間は約30日。1年以上入院している子は約340人とされ、増加傾向にある。NICU利用は本来、体の状態が安定するまでで、その後は小児科病棟や重症心身障害児施設などの「後方病床」へ移ることになっている

 だが、厚労省研究班が医療機関を対象に行った06年度の調査では、NICUに1年以上入院している子のうち10%は小児科での治療がふさわしいとみられた。58%は重症心身障害児施設で、28%は在宅で、療養可能とみられるという。

 このため厚労省は、関係者の理解不足や医療機関・施設間の連携不足、在宅療養の環境不備などが、NICUの不足の一因になっていると分析。コーディネーター配置で改善を図りたい考えだ。また都道府県に対し、NICUや後方病床の利用実態を調査したうえで、新たに必要な病床の整備計画を策定するよう指示。在宅療養を支援する訪問看護などを築くためのモデル事業も始める。

もうおわかりだと思うけれども、一番の問題は
 在宅療養できるマンパワーがすべての家庭にあるわけではない
という点だ。
まず、兄弟が他にいれば、たとえ
 在宅療養が可能
という診断でも、十分手が回るだろうか? 一人につきっきりになると、他の子のケアができなくなる。両親以外に子どものケアが出来る家族がいなければ、かなりしんどい状態だ。去年の4月にも書いたけど、NICUに長期入院していて、かつ
 退院の見込みのない子ども
のリストには実に悲しい例がある。


その中では
 致死性四肢短縮症の子ども
は、家族が受け入れてくれないだけでなく、
 家族の受け入れ意志なし(同胞には秘密)
と、生まれたことすら、兄姉に秘密にされている。致死性四肢短縮症とは、
 骨の形成が不全で、骨が成長せず、最後は肺など骨格内の内臓が圧迫されて死んでしまう
病気だという。延べ入院月数は、統計が間違っているのでなければ
 124ヶ月
となっている。10歳を超えて、その子が生きていることを、家族が認めてないのだ。

こうした例を、厚労省は「コーディネータの努力」でなんとかするつもりなのだろうか?

では、一人目だったら、なんとか自宅で療養が出来るだろうか?
いや、親の経済状態の問題もある。両親が共に働かなければならない家庭もあるだろう。
また、親が比較的高齢での出産であれば、親の両親の介護もあるかも知れない。

ことほどさように
 自宅療養への移行
のハードルは高い。
どう考えても
 厚労省の考える「家庭モデル」
は、
 20年以上前の三世代同居で複数の子どもがいる家庭モデル
ではないのか。今は、技術の進歩で家事の省力化が進んでいるとはいえ、世帯の構成人数は減っている。
 人間の介護、しかも子どもの介護には「絶対的に人間の目と手が必要」
なのだが、
 そんな余力のある家庭
が、本当にどれだけあるのだろう。

そして、もう一つ、厚労省が怠っているのは
 NICUに長期入院せざるを得ない「重度心身障碍児」を持った家族の長期的な心のケア
である。宗教的なバックボーンが非常に薄い日本では、例えば
 重い障碍を負った子どもは「神様からのギフト」
というような考えは、一般的でない。宗教という緩衝剤がないために、
 障碍児を持つことが「負け」
というような極端な考えに支配される家族がいても不思議はない。その子が、不妊治療の末に授かった子どもであれば、
 これだけ努力をしたからには、すばらしい子どもを授かるに違いない
という希望を燃やしていたカップルにとっては、更に
 障碍を負った我が子を受け入れるハードル
は高くなるかも知れない。
生まれてきた子どもには罪はないが、その子どもを育てるには、環境はあまりにも貧しい。
 障碍のある子どもの将来を悲観して無理心中
というニュースが時々流れるのは、
 日本の障碍者政策の貧しさ
の現れでもある。いくら政府が
 障碍者と共に生きる社会
というお題目を唱えようとも、日本で障碍者として生きるのは、相当にハードな課題だ。本人の強さはもちろんのこと、支える家族にもかなりの強さを求められる。そうした「強さ」に耐えられない家族がいるとしても、わたしは一概に責められない。人間は等しく強いわけではないからだ。家族が支えられないのであれば、社会が支えなければならないのだが、果たして、セーフティネットはそこまで広げられているのか?

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コメント

NICUから、小児病棟に移ってもまた小児病棟のベッドを占領します。また、重症心身障碍児施設に移っても、施設の定員がありますから、そこを退所しない限りそのベッドを占領します。今は昔と違ってケアー・キュアーが行き届いていますので、障碍児をいえども寿命が伸びています。
施設のベッドが空かない限り入所できません。また、一度入ってしまうと、よほどのことがない限り退所しませんというか、退所するときは死亡退所のみです。

よって、後から生まれた障碍児は行く所がなく、小児病棟にたまり、更にはNICUに沈殿してしまう構造になっています。
解決方法は、キャパシティを増やす以外ありませんが、医療福祉予算の削減が至上命題であり、施設定員の増加はなくむしろ減少となっています。

親の方が、老齢となり障碍児の介護ができない状態でも、施設が空かない限り、入所できません。よって、たとえ、親が元気でも早くから施設に入所申し込みをしておいて、ベッドが空き次第、入所させます。これでは、緊急入所が出来なくなり、悪循環です。

投稿: 龍 | 2008-01-08 19:39

>>家族の受け入れ意志なし(同胞には秘密)

この「同胞」という言葉がどうしても引っかかってしまうのですが。
日本人同士ではまず使わない言葉ではないでしょうか。

投稿: ぽん | 2008-01-08 21:21

>ぽんさん
医療や科学の世界などでは「同胞」って普通に使いますよ。
元の意味としては、兄弟姉妹の仲でも特に「両親が同じ」ってこと
なんだろうと思うんですが(同胞間骨髄移植など)、使い慣れていると
兄弟=同胞で全然違和感ありません。

おかしいかな?(笑)

投稿: 血液内科 | 2008-01-08 22:35

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