救急医療崩壊 救急受け入れ不能報道で抜け落ちていること=軽症患者の占有率
今日のNHKのニュースを始めとして、マスコミが
悪意のある表現「たらい回し」
という文言を用いて
現場に立つ医療スタッフを非難・攻撃
する状態がここしばらく続いている。
ところで、昨日の朝日新聞1面および今日のNHKの報道で
欠落している部分
がある。それは
救急搬送事例に占める「軽症患者の割合」
だ。いま、救急医療の現場が疲弊しているのは
重症患者の数が増加したからではなく、本来救急医療の対象でない軽症患者が大量にやってくる
からである。
そのことは、
搬送数
だけでは分からない。
搬送した患者の実際の症状(軽症か重症か)の数
で見なくてはいけないだろう。
救急医療の現場に医師が足りないとしたら、それは
不要不急の患者受け入れによる疲弊
によるところが大きいと考えられる。しかし、マスコミの立場は
軽症だろうと、搬送された人は「みんなかわいそうな患者」
という報道の仕方だ。果たして
酔っぱらって救急車をタクシー代わりに呼ぶ「患者」
が、
善良な患者
だと言えるのか?
こうした
モラルが欠如した患者の救急受診
が、
真に救急医療を必要としている重症患者の受け入れ不能を招いている
ことを、なぜマスコミは切り込まないのか。
取材
とは
数字の内実を理解できるように言葉に直す
ことだろう。昨日の朝日の記事でも、今日のNHKの報道でも
不要不急の患者の占める数
は、一切触れられていない。
これでは
マスコミの取材は怠慢
という誹りを受けてもしょうがないだろう。
マスコミがいつまでも
たらい回しという悪意のある表現
を用いるならば、わたしは
マスコミは「手抜き取材で医療を破壊している」
と指弾したい。
不足している救急医療資源を食い荒らしているのは、「善意の患者」なのか
どうか、はっきりと示すのが
ジャーナリズム
ではないのか。それとも
不要不急の救急受診を謀る「軽症患者」は、新聞を購読し、受信料を払う「顧客」だから、悪口を言えない
のか。
そうした
誤った世論誘導
は、
不足している救急医療およびバックアップしている一般診療科の医師達をバーンアウトさせて、現場から立ち去らせる
だけである。これは
報道が医療を殺している
のであり、つまりは
医療資源を食いつぶして、国民を死に追いやっている
のである。
十分な医療を必要なときに受けられない原因
を作ったのは、
医師を非難するだけのマスコミ
と
救急受診についての十分な教育および「不要不急の受診者」に対する罰則策定(救急車の搬送代や時間外の軽症受診の割り増し請求など)を怠り、「不要不急の患者」による救急医療の荒廃を座視している厚労省
であることを、確認しておきたい。
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コメント
Skyteam先生のブログで、救急搬送に関する記事を題材にしたコメントがあるのですが、
(http://skyteam.iza.ne.jp/blog/entry/444734/)
「今後、行政側は「運営コスト」と利用者の間で悩むでしょうが、入院にならない軽症者が利用するのは呼びかけだけでなく、ペナルティの時代に入りつつあるのを、地域住民に呼びかける必要を強く思います。」
として、アメリカやカナダでの救急車要請に関わる料金のことを取り上げています。
ペナルティ、というのとは少し意味合いが異なるもので、単に救急出動にかかるコストを要請した人に求めているだけのことであるとは思うのですが、今の日本の軽傷者による安易な出動要請の現状を見る限り、やはり
「救急車を呼ぶのには数万円かかる」
(1回の出動にかかる公費負担は4〜5万円だそうですから)
ものと認識させるべきなのではないかと思います。
タクシーを呼ぶより救急車を呼んだ方が安いから、なんてのは論外ですが、こういった人も含めた「軽傷者」の為に使用するのではなく、本来必要とするべき重症患者のために使用されるようにするためには、軽傷者の搬送には「料金がかかる」ことを徹底させた方が効果的ではないかと思います。
その上で、実際重症で入院が必要となったような方の場合には、その時点で初めて救急搬送代を「公費負担」として、後で代金を払い戻すような方式にしたら良いのではないかと思います。
勿論、「公費負担」を要する、と判断するのは医師の裁量として、救急隊や自治体ではないのが前提ですけどね。
投稿: どっく | 2008-01-16 02:25
iori3様は朝日の2面の記事については言及なさっておられませんので、画像を貼っておきます。
一応軽傷者の増加のグラフがあります。対策についてもある程度の記述がありますが、報道の
影響については確かに巧みにスルーしています。
http://f.hatena.ne.jp/tadano-ry/20080116115521
投稿: ただの(ry | 2008-01-16 12:03