産科崩壊 すでに「藪医者でもいないよりまし」な惨状→奈良県は医師の残業代未払いのまま、労働環境は整備せずに「1日5000円、夜間や休日は2500円増し」の「分娩手当」を出すとか 箱物には当然予算
Yosyan先生の「新小児科医のつぶやき」の衝撃のエントリー。
2008-02-21 危機認識落差
是非ご一読を。
要は
たとえ藪医者でも、いなくなると困るくらい、すでに産科は医師不足
という話。
太平洋戦争末期の日本の戦況
に似てきました。
松根油を取るため、女子挺身隊に松の根っこを掘らせていた
とか、そういう
絶対的戦闘力不足に陥っている
のがよく分かります。
わたしは軍オタじゃないからよく知らないんだけど
戦闘において、兵員の3割が戦闘不能になるとほぼ「全滅」
という話を聞いた。3割やられると
交代要員を補充できなくなる
からだ。
産科の現状は
すでに全滅に近い状態
だろう。
その全滅に近い状態、というかすでに
玉砕寸前の奈良県
は、こんな
産科「優遇策」
を打ち出している。
奈良県:常勤医に分娩手当、1日5000円--県立病院など◇過酷勤務、見兼ね
奈良県は4月から、県立医科大病院(橿原市)などでお産を扱った産科医らに分娩(ぶんべん)手当を支給することを決め、08年度予算案に関連費用約2億9000万円を計上した。27日開会の定例県議会に提出する。
過酷な勤務が産科医不足の原因と指摘される中、医師の離職防止と欠員を補充しやすくすることが狙い。県立医科大と、お産を扱う県立奈良(奈良市)、三室(三郷町)の計3病院の産科常勤医を主な対象に、分娩を扱った日数に応じ、1日当たり5000円(休日・夜間は7500円)を支払う。緊急手術となり、他科の医師が応援した場合は、応援医師にも同額を支払う。県は、県立医大と県立病院の勤務医の給与も初任給で約1万円増額させる方針。【中村敦茂】
毎日新聞 2008年2月20日 大阪夕刊
え〜
1日5000円
って、笑うところですか、奈良県。
現状は
玉砕が目前に迫っている
のに
糧食を少し豪華にしてやるから、もっと戦え
って話ですか、奈良県。必要なのは
ちゃんとした労働環境
なんですが。
そういえば
県立病院の医師の残業代未払い
はどうなったんですかね。まだ、裁判は続いてますよね。この残業代は無視して
小遣いやるから、言うこと聞け
と言ってるのと同じですが。
残業代未払いについては、2006年10月に表面化している。2006年10月21日付朝日新聞より。
「過酷な当直」、産科医5人が超勤手当1億円要求 奈良
2006年10月21日奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医5人が04、05年の超過勤務手当の未払い分として計約1億円の支払いと、医療設備の改善を求める申入書を県に提出したことがわかった。医師らは「報酬に見合わない過酷な勤務を強いられている」と訴えており、要求が拒否された場合は、提訴も検討する方針。
県によると、同病院の年間分娩(ぶんべん)数は05年度で572件。産婦人科関連の救急患者は年間約1300人にのぼる。産婦人科医が当直をした場合、1回2万円の当直料が支払われるが、当直の時間帯に手術や分娩を担当することも多いという。
申入書によると、当直について労働基準法は「ほとんど労働する必要がない状態」と規定しており、実態とかけ離れていると指摘。当直料ではなく、超過勤務手当として支給されるべきで、04、05年の当直日数(131〜158日)から算出すると、計約1億700万円の不足分があるとした。現在9床の新生児集中治療室(NICU)の増床や、超音波検査のための機材の充実なども要求している。
医師の一人は「1カ月の超過勤務は100時間超で、医師の体力は限界に近い。更新期限を過ぎた医療機器も少なくなく、これでは患者の命を救えない」と訴える。
県は、産科医を1人増員するなどの改善策に乗り出すとともに、医療設備の改善を検討しているが、超過勤務手当の支払いは拒否した。担当者は「財政難のため、すべての要求に一度に応えるのは難しい」と説明する。
その後、医師二人が奈良県を提訴している。2006年12月9付朝日新聞より。
県立奈良病院の産科医2人、県を提訴 激務改善求め
2006年12月09日過酷な労働に見合う時間外手当が支給されていないとして、奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医2人が04、05年の同手当の未払い分にあたる計約9200万円の支払いを求める訴訟を、奈良地裁に起こしたことがわかった。奈良県の場合、深刻な医師不足で業務が増えているにもかかわらず、宿直時の手当が一律で、病院関連予算の抑制も目立つ。原告側は「手当の支給よりもむしろ、訴訟を通じて、県に労働環境の改善を促したい」と訴えている。
訴状によると、同県では、勤務医の宿直手当が1回2万円の一律支給となっている。救急患者が搬送された場合などに病院に呼び出される自宅待機(宅直)には、手当が支払われない。
特に同病院の産科医は、夜間でも分娩(ぶんべん)や手術などが頻繁にあり、宿直業務が労働基準法で規定された時間外労働にあたると指摘。宅直についても「労働からの解放」が保障されておらず、勤務時間とみなすべきで、県の手当支給は違法と主張している。医師2人は当直が2年間に155日と158日、宅直が120日と126日にのぼっており、未払いとなっている時間外手当を計9233万円と算定した。
原告側弁護士は「労働基準法を無視した労働実態だ。十分なスタッフをそろえて医療事故を防ぐことが、結果的に市民の利益や手当の抑制にもつながる」と話す。
2人は5月、同僚の産科医3人とともに、同手当の未払い分として計約1億円を請求する申入書を県に提出。その後の交渉で改善策が示されなかったとして、提訴に踏み切った。県の担当者は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。
この2年分、2人の
未払い残業代=9200万円
をブッチして
1日5000円やる、夜もお産を取ったら、2500円増やしてやる
って、冗談としか思えない。これで
医師の離職防止と欠員を補充しやすくすることが狙い
って、
医師は計算も出来ない阿呆だから、小遣いをやってこき使う
って言ってるのと同じですが、奈良県。
続き。
中で働く医師の待遇はさっぱり改善しない上に、
医師数を増やす
という抜本的改革をしようという頭はなさそうな奈良県なのだが、
産科関連の箱物には金を出す
という。
奈良県の平成20年度予算「地域医療体制の充実」より。
医療提供体制の充実総合周産期母子医療センターの運営 1900万円
母体・胎児集中治療管理室(MFICU) 6床 後方病床12床
新生児特定治療集中室(NICU) 21床 後方病床10床総合周産期母子医療センターの整備 2億6800万円
NICU後方病床を追加整備(10床→30床)するとともに、これと合わせたA病棟の回種を行うため、平成20年度は耐震診断と整備事業の設計に着手←実際に建設する訳じゃないのね県立奈良病院NICU改修整備事業 1億1800万円
県立奈良病院のNICU後方病床(6床)を新設←で、NICUで働く人たちの手当は?
いや〜、
土建王国奈良県らしい財政
ですね。
箱物の中で働く人の労働環境整備は後回し
らしいぞ。それとも
周産期母子医療センターを作ったら、産科医や小児科医がそこらから涌いて出てくる
とでも思っているのかしら。
だいたい
NICU21床 後方病床10床
って、
すぐにNICUが満床になって回らなくなる
に決まってんじゃん。しかも
後方病床増床は21年度以降、今年は「耐震診断と設計」だけ
だっていうのだから、すげーよな。
それと
深刻な看護師不足
に見舞われている奈良県で
NICUやMFICUを回せるだけの看護師さんを雇用できる
んですか? 看護師さんが揃ってないと、
NICUもMFICUも開店休業
なんですが。
たぶん、こんな計画では、奈良県立医大も県立奈良病院も、あっという間に疲弊して、
医師が倒れるか、立ち去るかのどっちか
になるだろうな。もちろん
一緒に働く医療スタッフの負担も重い
だろう。
人を大事にしない奈良県
というのは時々聞くけど、ホントだな。
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コメント
県立奈良病院の件は、労働基準監督署に電話しましたが、やる気のなさが伝わりました。最初は調査に入ったか否かも答えなかったので、追求すると調査に入ったことは認め、改善勧告を出したことまでは認めましたが、勧告が守られるようどのような努力をしているのか?聴くと何もしていないと答えました。県庁もやる気がありません。こう言う情況で産科医を集められると考える神経は「さすがに奈良」と感心せざるを得ません。和歌山の方が余程危機感を持っています。
投稿: Nebula202 | 2008-02-21 11:52
よく議員がいう抜本的な改革は、いうだけの言葉。奈良に限らず、頭のよさではなく、公務員だからでしょ。
金で釣られると思う感覚は半世紀前の次元。
死ぬまでいってろって感じかな。
投稿: 雪の夜道 | 2008-02-21 22:40
たぶん・・・ですが、県立病院は「病院会計(特別会計)」で、手当は一般会計からなのではないでしょうか
焼け石に水かもしれませんが、議会が訴状をみてどう予算をつけるかが見物ですね
現状と執行部案をどう天秤にかけるのか、もしくは思考能力が問われます
そいえば、奈良の県会議員さんがあちこちに周産期の視察にいかれているようですが、結果はどうなんでしょうかねぇ~♪
投稿: tune | 2008-02-23 00:53