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2008-02-07

救急医療崩壊 マスコミの「大阪焦土作戦」大成功(その2)大阪府で6病院が救急から撤退と朝日

大阪を中心とする関西で救急医療は風前のともしびである。
ところが、マスコミは
 たらい回し
だの
 受け入れ拒否
だのという見出しで
 医療現場を叩き続ける報道姿勢
を貫いている。特に昨年末から、ひどい報道が続いていた。今年が始まってまだ40日経ってないのに、大阪の救急医療叩き報道がすでにこんなにあった。
 2008-01-04 救急医療崩壊 焼け野原に焼夷弾 東大阪で前線の医師不足が露呈 毎日新聞は例によって「医療機関叩き」記事を嬉々として掲載
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/post_ebfe.html 
 救急医療崩壊 焼け野原に焼夷弾 東大阪で前線の医師不足が露呈(その2)昨年10月ノリックが大動脈損傷で亡くなったときもすぐそばの病院のICUは満床
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/210icu_93a6.html
 救急医療崩壊 焼け野原に焼夷弾 東大阪で前線の医師不足が露呈(その3)この場合、どういう病院に搬送すれば良かったのか
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/3_5cda.html
 救急医療崩壊 焼け野原に焼夷弾 東大阪で前線の医師不足が露呈(その4)NHKニュースで「また病院の受け入れ拒否です」って読んだ女性アナは誰?
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/4nhk_8873.html
 2008-01-13 救急医療崩壊 大阪東南部(南河内=富田林市周辺)の救急医療は「命の選択」フェイズに入る崩壊段階か 77歳心肺停止の救命率は? 朝日は救急医療の大家杉本侃阪大名誉教授の発言を都合良く切り貼り編集
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/77_77b1.html
 救急医療崩壊 マスコミは「大阪東南部焦土作戦」遂行中 横浜で産科絶滅をはかる「横浜焦土作戦」の共同通信と朝日新聞大阪本社が共同戦線
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/post_430e.html
 2008-01-14 救急医療崩壊 マスコミは「大阪東南部焦土作戦」遂行中(その2)読売も参戦 85歳87歳92歳の心肺停止って救命可能なの? これはマスコミの魔女狩り報道だ
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/2_858792_5314.html
 救急医療崩壊 朝日新聞はメディアの責任を完全回避「医療費抑制が問題」と救急撤退を1面で報道
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/1_86f3.html
 2008-01-15 救急医療崩壊 NHK昼のニュースで「たらい回し」と「受け入れ不能」を報道→追記あり
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/nhk_76d6.html
 2008-01-19 救急医療崩壊 死亡するほど重症の拒食症の「搬送先がみつからない」のは治療が困難だからではないのか 2年前の搬送受け入れ不能を今更記事するのは何故だ→「治療を拒否する患者」の治療問題がなぜ「受け入れ不能」記事に化けるのか
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/2_66d4.html

そして、NHKを始めとするマスコミの
 大阪焦土作戦
の結果、
 報道被害により、救急指定を返上する病院が出た
のであった。
 2008-01-20 救急医療崩壊 報道被害 マスコミの「大阪焦土作戦」大成功「大阪の病院ですが、こんど救急指定の看板を下ろします」
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/01/post_2297.html

さて、このネタに食いついたのが
 朝日新聞
である。自分たちが散々救急医療の現場を叩いておいて、今度は
 救急医療が危ない、と手をさしのべる記事
を書いている。本当に反省しているのかはこれからが見物だが、考え方を変えれば
 マスコミ得意のマッチポンプ
でしかない。てか、大阪の救急医療を完膚無きまでに叩きのめす
 大阪焦土作戦
を展開しておいて
 いきなり坊主懺悔
というのは、芸がないぞ、朝日。
今日の朝日新聞大阪本社版の一面記事。まず
 見出しが間違っている
だろう。
 受け入れ不能が原因
なのではなく
 受け入れ不能叩き報道が原因
と書くのが正しいぞ、朝日。もっと、これまでの表現に即して言うなら
 マスコミの「たらい回し」報道が原因
というのが更に正確だろう。


大阪府の救急6病院が撤退 受け入れ不能問題が影響か
2008年02月07日08時00分

 救急患者が複数の病院に受け入れを断られた末に死亡するケースが相次いだ大阪府内で、府が指定する「救急告示病院」270施設のうち6カ所が、今年に入って救急部門から撤退していたことがわかった。医師不足から夜間・休日の救急態勢を維持できなくなったのが主な理由。特に府南部で救急病院の減少が目立っており、患者の収容先探しが一層、困難になる恐れもある。

 大阪府によると、救急告示病院は府に申請し、府救急医療対策審議会の審査を経て、認定を受ける。高次医療を担う救命救急センターを含む270カ所が昨年まで府内で救急の看板を掲げており、170カ所が1月25日付で3年ごとの更新期限を迎えたが、6病院が更新しなかった。一方で、4病院が新たに告示病院に認定され、減少数は2となった。

 救急対応をやめる診療科は、内科が5カ所、小児科が1カ所。このうち3病院は昨年、府に救急の継続を申し出ていたが、急患の受け入れ不能問題が表面化した年末以降、相次いで取り下げたという。

 1日に100人を超す患者を受け入れる地域の小児救急の中核的存在だった松原市立松原病院では昨秋以降、小児科医7人中2人が退職。さらに、男性医師が過労で倒れ、3月には研修医1人も辞めるため、態勢を維持できなくなった。病院幹部は「日中の診察は継続する。現状を改善したいが、医師の補充が難しい」。

 救急からの撤退が相次ぐ府は、救急告示病院の認定基準緩和に向けた検討を始めている。府医療対策課の担当者は「背景にある医師不足を早期に解消するのは困難。急患を確実に受け入れられる病院を増やす方策を考えたい」と話す。

どうですか、朝日新聞。
 大阪焦土作戦が大成功を収めた勝利の気分
は。
しかし、この記事、医師と病院に
 大阪府が地雷を仕掛けている
って話で、
 救急告示病院の認定基準緩和
って
1. 手不足でも何でも「ともかく受け入れろ」
2. 受け入れて、患者の予後が悪くても、府は一切責任を持たないから、訴訟があったら各自対応しろ
というひどい話じゃないか。これで
 救急告示の認定を新たに求める病院
が出たら、たぶん
 現場の医師がさっさと退職する
だけの話だろう。すでに
 使命感だけでは、現場は回らなくなっている
のは、上記記事の松原病院の小児科の惨状からも明らかだ。
松原病院の小児科診療の案内を見てみると、現在
 5人の常勤医(内1人は研修医)+外部応援医
体制である。平日昼間は
 3人体制で回している
ので、松原病院の悲劇の経緯はこうなる。
1. 毎日100人以上の受診者を3人体制で午前は回す(午後の専門外来と心エコーは予約制)
2. 7人で回していた小児科から、2人退職→5人で回す=夜間2人体制なら、必ず1人は週2日当直体制
3. 当然、36時間勤務はおろか、それ以上の超過勤務が小児科にのしかかる→1日100人以上受診だから、昼間も忙しい 大人と違って小児科は対応が多様で大変
4. 5人の内、1人は研修医→マンパワーとしては1人前とは言えず、指導医がつかなければならないから、結局、松原病院の小児科は実質4人で回し、かつ研修医の指導があるというものすごくしんどい体制
5. 5人の内、1人が過労で倒れる 5人→4人=3人の医師と1人の研修医で回す→更に過重労働を強いられる
6. 3月に研修医の年季が明ける→指導はなくなるが、手は足りなくなるわけで3人で救急を回すのは実質不可能→3人で回すとなると、昼間の1診を1つ閉鎖したとしても、必ず1人が週3日当直体制でこれは死亡フラグ

すでに松原病院の小児科は
 常勤医が全員、過労死レベルの違法労働状態
だと思われる。これまで何もなかったのが信じられない。先生方、お疲れさまでございました。

で、朝日は
 やればできる子モード
に入って、これから救急医療崩壊の連載を大阪本社版では続ける模様だ。まだwebにソースが上がってないけど。
「やればできる子」って、ちょっと目にはいいが
 マスコミのこれまでの報道の反省
はあるのか、朝日。

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コメント

いや、170件も再考の機会があったのに、164件の病院がそのまま救急を続けるって、大阪のセンセイは危機感足りないなーと思いますよ。
ぜんぜんマスゴミの攻撃がまだまだ足りないのでしょう(www。

投稿: ssd | 2008-02-07 14:02

 朝日の東京本社の社会部に知人がいまして、去年暮れコミケに行った時にwww、久しぶりに会って話をしました。
 約束ですのでどこの誰がとかいうようなあまり具体的なことは書けませんが、社会部の中でも医療崩壊の記事をどう扱うかは意見が分かれていて、それが記事の混乱の大きな原因になっているということでした。

投稿: ただの(ry | 2008-02-07 14:41

>松原市立松原病院

市長が24時間救急受けいれを公約にしていましたね。
「トップが現場を知らずに無茶を言って、貴重な医療資源を磨り潰す」
あいも変わらずワンパターンの崩壊劇かも知れません。

投稿: 岡山の内科医 | 2008-02-07 15:14

「飛び込み出産」昨年は301人、経済苦などで健診受けられず
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080205-OYT1T00681.htm
>昨年、奈良県などで妊婦の受け入れ拒否が発覚したが、拒否された要因の一つが未受診だった。このため、未受診で飛び込み出産をする妊婦の存在が、産科医療の混乱に拍車をかけているとして問題視されるようになった。しかし、地域や医療機関レベルの調査はあっても、全国の実態は調査されてこなかった。

読売も日和ってきたようです

投稿: emanon | 2008-02-07 15:34

あんまりなので、大阪府の知事室宛へ、「マスコミが報道しない真相も知ってください」と、本blogのurlを併記してファクスを送ってみました。

投稿: miskij | 2008-02-07 17:59

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