救急医療崩壊 マスコミの「大阪焦土作戦」大成功(その4)暴力などへの対応が必要な患者は受け入れ困難 内科医・麻酔科医はこの1年で急速に大阪の現場を立ち去る
マスコミが調子に乗って
たらい回し
だの
受け入れ拒否
だの書き立てて、
何回受け入れ拒否された
とか数を競っている間に、大阪周辺の救急の最前線から、医師は静かに立ち去っていった。そりゃあ、あれだけ、
使命感で、ぎりぎりの現場を回していた医師や病院を、故なく非難
していれば、医師だって心が折れる。
朝日関西版より。
救急搬送、苦悩の現場 「62回拒否」「到着に5時間」
2008年02月15日搬送拒否62回、5時間13分待ち——。大阪市消防局が14日に発表した要請回数20回以上を数えた救急活動の事例には、驚くべき数字が並んだ。症状が悪化していく患者に付き添って病院を探し続ける救急隊員は、焦燥感にさいなまれる。一方、救急病院側にも患者受け入れを断らざるを得ない事情がある。「救急危機」の広がりはとどまるところを知らない。
◇
「80代の女性が自宅で倒れている」
昨年4月の深夜、そんな内容の119番通報が大阪市消防局にあった。救急車が即座に出動。6分後に女性を収容した。だが、肝心の受け入れ先が見つからない。
10分後、呼吸が弱まり、人工呼吸を始めた。府内の救急病院13カ所、救命救急センター7カ所に受け入れを断られ、26回目の連絡でようやく搬送先が決定。市内の救急病院に着いたのは、現場到着から54分後の午前3時58分だった。女性は病院到着の約40分後、死亡が確認された。
同年6月、自宅マンションから転落した30代男性は、救急車に収容された20分後、心肺停止状態に陥った。車内で人工呼吸や心肺蘇生を施しながら、搬送先を探したが、府内と兵庫県の30病院に計39回受け入れを断られた。市内の救急病院に着いたのは通報から約1時間半後。男性はその45分後に亡くなった。
受け入れを断られた回数が最多の62回だった30代男性。1月に自宅で吐血して救急車を呼んだが、アルコール臭がしていることを救急隊員が病院に伝えた。搬送要請は次々に断られ、通報から2時間20分後、府内の救命救急センターに入院できた。胃潰瘍(かい・よう)と診断された。
統合失調症の60代女性は、通報から病院搬送まで5時間13分かかった。府内には精神科の急患を受け入れる病院が少ないうえ、休診や「収容不可能」と答える病院が相次ぎ、搬送先探しが難航。26回目に連絡した病院に入院が決まった。
市消防局の元救急隊長は「病院に要請依頼を続ける救急隊員はいつも、焦りとプレッシャーで押しつぶされそうになる。人を助ける仕事なのに、と考えてしまう」と話す。
◇
なぜ、大阪市で搬送要請が20回以上もかかるケースが一気に増えたのか。
大阪市内の病院の救急医は「救急医療を支えてきた救急医や麻酔医が大阪で、急速に現場を離れている」と指摘する。医師不足のしわ寄せが一気に押し寄せたほか、在宅医療を進めた結果、在宅の高齢患者が体調悪化で救急病院に運ばれるケースも増えている、とみる。
問題が次々に発覚した富田林市も含め、大阪府内で救急医療の衰退が目立つことについて、堺市立堺病院の横田順一朗副院長は「この1年、内科医や麻酔科医など救急医療の核になる医師が急減し、予定が決まっている通常の手術がやっとの病院が多い」とみる。
今回の調査で、搬送先が見つかりにくいのは、これまでも「病院に敬遠されやすい」とささやかれてきた酒や薬物を多量に服用している患者であることが裏づけられた。横田副院長は「人手やベッドが限られ、重い症状の患者が待つ中で、暴力や暴言など、手がかかる飲酒の患者をみる余裕はない」と明かす。
日本の救命救急の草分け的存在とされる杉本侃(つよし)・大阪大名誉教授(75)は「医療現場はドミノ式に疲弊しており、私の病院にも『10回目なので受け入れてほしい』と要請が来る。救急システムを築くのは大変だったが、崩壊はあっという間。最終的に迷惑を被るのは患者だ」と憂える。
昨年1年間で、大阪の救急医療は急速に状況が悪化した。特に、上記記事での堺市立堺病院の横田順一朗副院長の発言
この1年、内科医や麻酔科医など救急医療の核になる医師が急減
からは
昨年は、医師の心を折る報道や判決、厚労省の医療政策が相次ぎ、現場を立ち去る例が増えた
ということが読み取れる。
そして、これは2月の報道である。医師が異動するのは4月付や6月付が多いから、今後
更に大阪の救急医療は崩壊を続ける
のは、ほぼ間違いない。
メディアの影響力に物を言わせて救急の現場を叩き続けてきた、マスコミ各社のみなさん、これで満足ですか。
医師は、長期間にわたって、高度な教育・訓練を受け、習得の難しい高い技術を身につけた専門職だ。
そういう短時日では得難い人材をないがしろにして、むしろ
モンスターペイシェントに与する論調で医師や病院を非難し続けてきた報道姿勢
が
現在の大阪の救急医療の惨状
を招いたのだ。で、
マスコミは誰も責任を取らない
わけだな。
医師の育成には、時間がかかる。
代わりは簡単には見つからない
のだ。これまで辛い現場に医師が留まっていたのは、
患者さんを救いたいという使命感
からだ。その使命感を喪失させる
医学的根拠を無視した、扇情的な医師・医療叩き報道
をする側は
医師に比べれば、教育期間も短いし、国家的な資格でもない「記者」
だ。記者の代わりと、医師の代わりと、どちらが見つかりやすいのか、考えたらすぐにわかりそうなものだ。つまり
記者は、自分たちより「人命を救うという職掌において大事な人材」を好き勝手に貶めた
のである。それが不遜でなくてなんだろう。
たぶん
記者は医師より世間の役に立っているという驕り
があるのだろうね。そして
自分は絶対に病気にならない、ケガもしない
と信じているのだろう。今はマスコミ御用達の医療機関が手当てできているのだろうが、これからは果たしてどうなっていくのか。新聞社の収益が取りざたされている現在、いつまで
マスコミの手厚い福利厚生
が守られるのか、見物ですな。
そして
自分たちは何を報道しても「診てくれる病院」があるマスコミ人
が
そうしたコネを持たない一般市民の受診する病院を潰している
ことに気づいた「購読者」「視聴者」たちが、どういう行動に出るか。
安全圏から自分には被害が及ばないのを確かめた上で、マスコミが一般市民が世話になる医師・病院潰しをした
ことが、一般市民に認識されたら、果たしてどうなりますかね。人数の上からは
一般市民の方が遙かに多い
のだ。
それと大病院信仰は、マスコミ人に根強いんじゃないの?
なんでも大病院にかかる
と、一般市民をやり玉に挙げた記事を見かけるけど
自分たちはどうなんだ
と一度聞きたいですね。それとも
マスコミ人は医師より貴重なジャーナリストで、いつでも濃厚な医療を受ける権利がある
とでも思っているのか?
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コメント
ブログが「たらい回し」というマスコミが使用する言葉について語っていますが、
2月15日の下記のサイトのNHKの放送で、
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/02/nhk3216_68f4.html
アナウンサーが「安心安全」と言う言葉を何回も使用していました。
「安心」と「安全」は、概念の全く異なる言葉です。
医療について、「人(ホモ・サピエンス)」の生理学的な動きのすべてが解明されていない現時点で、真に「安心」「安全」と並列して言うだけ(つまり「安心」という概念と、「安全」という概念の交わる領域)の医療が本当に実現可能かどうか認識して、マスコミ(マスコミに限らずこの言葉を同時に使う)人はこの言葉を、使用しているのでしょうか?
「安心」は、心の内面の動きの指標にはなりえますが、すべての人に一律の基準とはなりえません。「安全」は定義にもよりますが、一応科学的な対応が可能ですが、何処までそれを求めるかによって、費用も変わってきます。
医療に対して、「言霊」のようにこの言葉を使うのは、医療を破壊する以外なにものでもありません。すべての国家予算やすべての地球上の富を注ぎ込んでも、すべての「人」に「安心」と「安全」な「医療」は、最新の生物学や医学の成果を駆使しても、「人」が「人」であるかぎり、実現不可能であるということです。
投稿: 龍 | 2008-02-15 13:41
ちょいと紹介
医療ヒッチハイクガイド
http://blog.livedoor.jp/dont_panic/
投稿: sakimi | 2008-02-15 17:46