特別陳列「お水取り」@奈良博 2/2〜3/16
毎年、修二会の時期には、奈良博で
特別陳列「お水取り」
が行われる。昨日は夜間開館で、ゆっくり見られるので、二月堂からの帰りに寄った。
修二会の本尊小観音の像容。
重要文化財類秘抄 1巻(るいひしょう)
紙本白描、縦29.5cm 長2062.0cm
鎌倉時代 承久2年(1220)
奈良国立博物館
十一面観音の中でも珍しく、頭上の十面が左右正面の三面が下三段、最上段が正面一面の構成になっている。図録『特別陳列 お水取り』(1000円 平成18)によると、類似の図像は、
インド・ムンバイ郊外のカーンヘリー石窟第41窟の浮き彫り(同図録 p.12)
にあるという。カーンヘリー石窟第41窟の浮き彫りは7-8世紀の作らしい。
なお痛ましいことに、同時に展示されている『覚禅抄』には、
左右有其跡 二月堂有補陀落跡
と記された
左右面を欠き、四段正面のみ四面が残った観音像
が描かれており、これは小観音だと考えられている。なんらかの事故で、小観音の左右面六面が、『覚禅抄』の成立した元亨四(1324)年までに失われていたらしい。(同図録p.29)
大観音の頭部は、同じ『覚禅抄』のすぐ手前に描かれている。(同図録p.29)
二月堂 頂上仏面 无化仏
とあって、十一面観音像ではよく見られる頭部正面の化仏(阿弥陀如来立像)がない。
なお、図録のp.60の「食堂作法」の写真は
後ろに達陀(だったん 本当は口偏がつく)松明が置いてある
珍しい写真。
昨日は
ミュージアムショップが在庫セール
をやっていて、古い図録や絵はがきなどを値下げ販売していたので、めぼしいものをいくつか買いあさってきた。
続き。
「お水取り」は小さい展示なので、別に
特集展示「涅槃」
平常展 仏教美術の名品
も、新館で開かれている。
「涅槃」では
寝釈迦がごろんと寝ている木像
が展示されている。足の裏も見えるので確認したんだけど、
足下安平立相だったけど、足下二輪相は判別不能
だった。お釈迦さまの足の裏には法輪の模様がある筈なんだけどな。これは広島照源寺の所蔵で類例が多いことから
人気のあった、本歌となった涅槃像の存在
が想定されているのだが、本歌の方は既に存在しないみたいだ。涅槃図はいくつか掛かっていたが、
白い象が背中を地面にこすりつけて身もだえし、釈迦涅槃を悲しむ図像
で有名な
兵庫浄土寺の涅槃図
も展示されていた。この象さんが、実に悲しそうなのよね。
「仏教美術の名品」では
西大寺の鉄宝塔
が出陳されていた。これはいつ見てもいい物ですね。鉄鍛造の塔と聞いただけで
いかなる技術がこの美しいバランスを保った宝塔を作り上げたのか
と驚嘆する。現代の技術では到底及ばないだろう。しばらく見惚れていた。あとは所謂天平写経(別訳雑阿含経巻十 「五月十一日経」の内)に見とれる。だいたい、特別展に行っても、文書ばかり見ているからな。奈良時代の書蹟や隋唐写経は、見るだけで時を忘れる。文字と料紙の醸し出すゆったりした気風は、後の時代には失われてしまう。
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