iPS細胞の難病への応用のための第一歩 難病患者の細胞からiPS細胞作成へ
筋ジストロフィーは難病で、病気のタイプによっては若くして亡くなる。京大には、何年かに一度、筋ジスの学生が入学していた。彼らは、場合によっては卒業まで生きられないかも知れないのだが、勉強する意志を大学は尊重していた。わたしの知っている話では、理学部の学生が卒業を目前にして亡くなった。一緒に学んだ仲間がこの病だったのだが、卒業してから、消息を聞くのが恐かった。ある日、随分前に亡くなったことを知って、愕然とした。子どもの頃から病と闘ってきた人間特有の強さのある奴だった。病故に、熱意があるのに理解を得られず、信じられないようなひどい目にも遭っていた。そうなんだよな、重い病や障碍を抱えている人間だからこそ、いまある命をなんとか世の中の役に立てたいと切望するのだけれど、なかなか周囲には理解して貰えないのだ。「どうせ病人だろう」とか「どうせ障碍者だろう」とかという言葉で切り捨てられる。優秀であったが故に、却って風当たりが強かったのかも知れない。健常者と同じように、普通に働こうとしていただけなのだが。今なら、状況はもう少しよくなっているだろうけど、仲間には間に合わなかった。
重い筋ジストロフィーは、どうしようもしてあげられない、辛い病気なのだが、ひょっとしたら近い将来、治る病気になるかも知れない。
山中信弥京大教授が、iPS細胞の難病への応用のための第一歩として
難病患者の細胞からiPS細胞を作成する実験
を始めるのだ。
読売より。
難病解明に万能細胞、患者細胞から作成・研究を計画…京大様々な細胞に変化できる新型万能細胞(iPS細胞)を開発した山中伸弥・京都大学教授らが、筋ジストロフィーなど治療の難しい約10種類の病気に苦しむ日本人患者の細胞からiPS細胞を作製する計画を進めていることが8日明らかになった。近く学内の倫理委員会に申請し、早ければ4月から、新薬開発などにつなげる研究に取り組む。
これまで、病気の原因を研究するには、すでに病気の状態になった細胞を調べる方法が主流だった。だが、患者の細胞からiPS細胞を作製し、それをさらに病気の細胞に変化させれば、細胞が健康な状態から病気に変化する過程も観察でき、詳しい仕組みも明らかになると期待される。
研究代表者の中畑龍俊・京大教授や、講演先の川崎市で記者会見した山中教授によると、対象の病気は若年性糖尿病や筋ジストロフィー、神経変性疾患、先天性の貧血などで、京大病院で治療を受けている患者に協力を求める。
採取する細胞は、皮膚や血液のリンパ球、胃の粘膜など。健康な人の細胞からもiPS細胞を作製し、病気の細胞と比較する。
山中教授はこれまで、米国人の細胞からiPS細胞を作製。薬によっては、効果や副作用に人種差があり、日本人患者の細胞を使って研究を進める。
(2008年3月9日03時05分 読売新聞)
いよいよ山中信弥教授の願いである
難病治療のためのiPS細胞の応用研究
が緒に着く。たぶん、多くの患者さん達は、自分たちの病が治るようになることを熱望して、喜んで細胞を提供するだろう。それどころか
結果はどうなっても構わないから、自分の身体で実験して欲しい
という患者さんも数多いるのではないかと察せられる。
それくらい、患者さんの思いは切実だ。治療法がない、辛い病を治す切り札が、iPS細胞になればいいな。
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