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2008-03-19

「寝ていてはめまいは治らない」体育会系のノリでめまいを治す@横浜市立みなと赤十字病院耳鼻咽喉科 日本で唯一のめまい集団リハビリを取り入れた教育入院治療

生まれつき潜伏性眼振で視力が上がらないわたしにとっては、めまいは常態である。

家族が年明けからめまいがひどく、横浜市立みなと赤十字病院耳鼻咽喉科を受診、入院してめまいを治療するリハビリコースを勧められた。主治医は新井基洋先生だ。
初日には、家族も一緒に初回学習に参加し、どんな治療を行うのか、理解を深めるという設定になっている。
その時、新井先生が、
 全国のめまいに悩む人たちに一番伝えたい
のは
 寝ていてはめまいは治らない。むしろ悪化する。めまい治療には積極的なリハビリが大事
ということだとおっしゃっていた。
 めまいの治療は「視刺激→前庭刺激→深部感覚刺激」を有効に加える「平衡訓練」が早期に必要
という治療方針だ。寝ていると
 さらに平衡感覚が退化する「廃用性平衡機能低下」を引き起こす
ので、高齢者の場合は特にリハビリが奨励される。高齢者がふらふらするのは、年のせいで平衡感覚が衰えていくからなのだが、
 危ないからと寝かしておく

 更に悪化し、寝たきりになってしまう
ということなのである。

患者と家族には一冊ずつ
 めまい学習ノート
が渡される。初回学習では
 「先輩」と呼ばれる、先に入院した患者がトレーナーとなって、「めまい学習ノート」の書き込みをしつつ、めまいリハビリの基礎を学ぶ
のである。主治医の新井基洋先生がどんな方か、お会いする前に看護師さんに聞いたら
 新井先生は体育会系で熊みたいな先生
だと教えて貰った。確かに、そんな印象ではある。学習中、大声で患者さんとその家族、及び指導に当たっている「先輩」患者のみなさんを叱咤激励するのだ。

初回学習は約1時間半の内容である。
まずは、「めまい学習ノート」に書かれている
 医学用語をわかりやすい日本語に書き換える
ということをする。たとえば
 真性(前庭性)めまい
と書いてあるところに
 ほんとうに バランスが障害されているめまい
と書き込むのである。こうすることで、
 医学用語と日常の言葉の障壁を取り除く
わけだ。そして、その書き換えたところともとの医学用語を
 繰り返し、声に出して復唱する
のだ。
 繰り返し声に出す、繰り返し動作をする
のは、学習効果がもっとも上がるやり方で、それを耳鼻科外来で20人近い大人が一斉にやるわけである。時々、新井先生が、外来で待っている他の患者さんに
 ごめんなさいね、うるさくて
と断っていた。午後診の遅い時間なので、それほど待合いには患者さんはいないのではあるが。
この初回学習は
 組になって作業をする
のもポイントだ。組になるのは
 「先輩」と呼ばれる先に入院している患者さん
か、
 一緒に付いてきた家族
である。「先輩」と言っても、前日に入院した患者さんも少なくない。つまり
 リハビリ入院の患者さんに「先輩」という役割を与えて、新来の患者さんを「指導」させることで、「先輩」には自信と治療に対する理解を更に深めて貰うシステム
だ。習うより教える方が大変だから、これはなかなかいいシステムである。なおかつ、新井先生は、
 では、優秀な「先輩」のみなさん、お願いします
などと、学習中は
 「先輩」のモチベーションを上げる
ように腐心していらした。リハビリ治療は楽しいことばかりではないが、こうした心理的にプラスの方向に働く役割を与えることで、治療のモチベーションも上がるだろう。
また、家族も「めまい学習ノート」の内容を覚えないと、患者さんと一緒に答えられないから、繰り返される質問に答えている内に、家族の理解も深まるわけだ。もちろん
 我々が行っている訓練は?
と先生に聞かれて
 平衡訓練
とすぐに答えられなければ、助け船を出してはくれるけれども、みんなの前で間違えるのは、結構恥ずかしいから、
 恥をかきたくない
という思いがモチベーションを高めるということにもなる。
この初回学習は非常にテンポが良く、人がものを覚えるのに適切な速度で進められていた。大体語学の初級でも、同じテンポでやる。

初回学習で学ぶのは知識だけでなく
 リハビリの実際
も含まれる。横浜市立みなと赤十字病院耳鼻咽喉科の設定するリハビリの基本動作は
1. 眼を左右に速く動かす
2. 眼を上下に速く動かす
3. 眼を左右にゆっくり動かす
4. 両眼上下にゆっくり動かす
5. 頭を左右に振る
6. 頭を上下に振る
7. 頭を斜めに振る
で、それぞれ覚えやすい動作と略称がある。この1-7の動作と略称を繰り返すのだ。まず、略称を言って動作をし、そのあとは一つの動作を大声で数を数えながら30回ほど繰り返す。 
 声を出して動作をする
のも、身体に動作を覚え込ませるにはいい方法だ。また、家族も一緒にやるから、退院してから患者さんがリハビリをさぼらないよう、チェックできる効果も望めるというわけだ。
1-7までには、患者さん個々人がめまいを起こしやすいシチュエーションがすべて含まれているので、たとえば
 顔を洗うときにめまいを起こしやすい患者さん
だと、5のリハビリを頑張ろう、ということになるのだ。

「めまい学習ノート」を見ると、毎日スケジュールがびっしり。
問題は、退院後もリハビリを続けられるか。そのためには家族の協力が欠かせない。重いめまいは入院加療したからといって、完全にめまいが起きやすい状態が治るわけではない。症状に合わせてリハビリを続け、めまいを起こさないように常日頃から気を配って生活することが必要である。
退院がゴールでないのは
 糖尿病の入院治療と同じ
である。

新井先生のお話では、
 めまいのリハビリ部分には保険点数が認められてない
のだそうだ。入院中は、リハビリの他に、治療や検査がある。毎日、めまいを軽減する点滴を打つが、かなりハードな内容なので、点滴なしでこのリハビリのスケジュールをこなすのは、たぶんムリ。ともかく「寝かさない」方針で、治療中吐き気が強い場合は吐き止めも処方されるとか。

患者さんは高齢の方が多い。先日は86歳の方がリハビリ治療を終えて退院されたそうだ。

もし、すでに他の病院でめまいの治療を続けている方で、横浜市立みなと赤十字病院耳鼻咽喉科の治療を希望される方は、以下の手順でお申し込みを。現在、かなり混んでるみたいです。


めまい
日本で唯一のめまいの集団リハビリテ-ションを取り入れためまい教育入院が治療の特色である。平成19年1月からは初診めまい患者さんは完全予約制を導入。
さらに4月からは、新井の初診めまい外来は原則的に月曜日と木曜日のみ。なお、急患の場合には随時対応。
当院めまい外来は、他院で治らず、入院して精査、加療、めまい教育を希望する患者さんを対象としたもの。
予約の方法は、患者さん自ら病院に電話をしていただき、日時を決めていただく。具体的には平日の午後2時か4時までの間に耳鼻科外来直通電話番号:045-628-6277にかけて下さい。当日、紹介状をお持ちになって直接来院された場合でも、当日は診察することができず、そこで、予約を取っていただくことになります。

ご紹介してくださる医師各位殿:紹介状をお渡しする際には当院耳鼻科外来への御一報を患者さんにお進め頂きますようご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

家族の場合は、受診している他の病院から紹介をしていただいて、転院した。横浜市内在住でラッキーだったと思う。

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コメント

私も中学生あたりから頭痛・肩こり・めまいがひどく、寝ていることが多かったのですが、そろそろ完治しそうです。よくあんな状態で医学部に合格して国家試験に合格して、循環器医をやっていたなあ、と我ながら感心します(反対に、あの症状が無ければ今頃....orz)。

私も、神経内科・耳鼻科の先生から色々アドバイスを受けましたが効果が全く無く大変困っていましたが、私の場合、結局小学生時の歯科矯正の際に咬合をぐちゃぐちゃにされたことと歯の知覚過敏、漢方で言う「お血」が原因だったようです。10年近くかけて歯列矯正のやり直しなどを行い咬合がほぼ正常レベルに回復し、知覚過敏もかなり軽減し、ようやく症状が消えようとしています(もうちょっと調整が必要そうですが)。頭痛・肩こり・めまいがない生活がどれだけありがたいか、今実感しています。

そういったわけで、私自身が長期間強いめまいに悩まされましたので苦痛は良く分ります。ちなみに、患者さんに対しては漢方薬を使っていますが結構効果のある人が多くびっくりしています。統計は取っていませんが、少なくとも半分以上の人は漢方でめまいが軽減・消失しています。

なお咬合に関しては、優秀な先生に付いて、一緒に治療していかないと難しいです。なぜって、どこがおかしいか自分自身で「あたり」をつけないと、歯科の先生も治療に取り掛かれないし、下手なところを調整(ぶっちゃけ歯を削って咬合を調整する)されると、取り返しの付かないことになりますので。

投稿: 暇人28号 | 2008-03-19 17:24

暇人28号先生、コメントありがとうございます。
不正咬合が原因のめまいとは、おつらかったことでしょう。

漢方が効く方が半数もいらっしゃるのですね。

わたしのめまいは潜伏性眼振を押さえられなくなると起きるので、これはもう目を休めるしか手がありません。

不正咬合といえば、視力の維持にも不正咬合が関係することがあるようです。一時期、耐えられないくらい眼精疲労がひどかったのですが、咬合の研究会に所属されている歯医者さんを紹介していただいて、噛み合わせを治してからは良くなりました。歯科的には、ブリッジをかけたくなるような削られ方で、他の歯科にかかると必ず「ブリッジにしましょう」と一度勧められます。噛み合わせを治して下さった先生が、時々ご病気で長期休診され、掛かりたいときに掛かれないので、同じ研究会の他の先生のところにたまに行っています。
噛み合わせは子どもの頃から悪いので、もしその当時に噛み合わせを治せる先生がいらしたら、もっと視覚的には楽だったかな、と思ってますが、札幌にはそういう専門の先生が元々少なかったのでしょうがないでしょう。

投稿: iori3 | 2008-03-20 11:15

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