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2008-04-18

日本政府奨学金(国費)留学生と博士課程の日本人

最近、博士課程の競争率が1倍を切った。
4/13付産経より。


博士離れ深刻 競争倍率0.9倍割り込む
2008.4.13 01:14

 世界に伍(ご)していくための高度研究・教育を担う人材を育成する「大学院博士課程」の平均競争倍率が平成19年度、0.9倍を割り込み、過去15年間で最低を記録、関西の有名国立大の中には、定員を充足するために4月に入って追加募集を実施した大学もあるなど、“博士離れ”がより深刻になっていることが12日、分かった。博士課程修了者の就職率が6割を切るなど、博士号を取得しても国内での就職が難しいことが進学を敬遠する大きな理由になっているとみられる。
 文部科学省によると、全国の博士課程の入学定員に対する志願者の平均競争倍率は、3年度に開始した「大学院重点化」計画以降、上昇を続け、8年度には1.08倍を記録。15年度まで1倍を超えていたが、その後、漸減を続け、18年度には0.9倍まで低下。そして19年度は計2万3417人の入学総定員に対し、志願者は2万773人で競争倍率は0.89倍に落ち込み、5年度以降初めて0.9倍を割り込んだ。
 背景には、重点化計画に伴い、各大学は博士課程の定員を拡充し、在籍者数も増加したが、博士号取得者を希望する職種が増えていないため、取得後も研究職につけないオーバードクターやポストドクターなどいわゆる“余剰博士”の問題が年々深刻化していることがある。文科省のまとめでは、19年度の博士課程修了者の就職率は58.8%、人文社会系に限れば4割を切っている。
 このような就職難を反映し、奈良女子大大学院の一部の研究科では今年度、開設後初の3次募集まで実施したが、志願者は1人も現れず、入学者数は定員を大幅に割り込んでいる。

いまODになっている、また研究活動を辞めてしまった博士の中には、
 日本政府奨学金(国費)留学生
に関するイヤな思い出がある人も少なくはないはずだ。
以前にも触れたことがあるが、
 月額17万円という奨学金

 経済格差が甚だ大きい地域からの留学生の蓄財手段になっていた事例
があるからなのだ。

ある有名国立大学では、日本との経済格差が10倍を遙かに超える地域から日本政府奨学金(国費)留学生を受け入れた。その留学生はつつがなく留学期間を終え、国に帰ると、貯めておいた日本政府支給の奨学金を資金に、ビジネスに転身した。日本で研究していたこととはまったく関係ない。というよりも、その留学生にとって
 日本政府はビジネスのための種銭をくれるATM
だったわけなのだ。留学は、事業資金を得る、手っ取り早い手段だった。
この話をその大学の関係者から聞いたとき、その人は
 今の制度では、そんなことが起きてもしょうがない
と嘆息を漏らしていた。こうした
 留学生の蓄財
は、その大学だけでなく、いわゆる
 知る人ぞ知る、国費留学生の問題
だった。
 誰々くんは国費留学で日本に来て、奨学金で、もう家建てたってよ
という類の噂は、時々耳にした。
月額一律17万円(現在の額)という金額が、経済格差が場合によっては100倍もある国からやってくる留学生にとっては、どれほど魅力的なのか、という点に関して、文科省も外務省も、あまり真剣に考えてなかったのではないかと思う。
結局、こうした
 蓄財目的の国費留学
の場合、日本の大学院で
 税金を投入して整備された研究環境でなされた研究成果
は、学術振興に役に立つのではなく、
 帰国後のビジネス資金を得るための口実
だったというわけで、二重の意味で悲しい話なのである。

一方で、貧困にあえぐ
 日本人OD
がいるわけで、日本学生支援機構(旧育英会)の奨学金は、アカデミックポストに就かないでいると、返還しなくてはならなくなる。しかも、日本学生支援機構(旧育英会)の奨学金は、
 国費留学生の奨学金よりも低額
であり、それだけでは生活できない。進学者が少人数の大学院ならまだしも、結構な人数が在籍する上位国立大では、TAやRAからも漏れ、バイトをしながら勉強を続け、学位を得た博士もいるだろう。いま、博士持ちでアカデミックポストに就けず、「高学歴ワーキングプア」になっている30代後半以上は、PDの整備前に大学院を離れていたりする。上位国立大出身だと、身近に国費留学生がいるから、在学中に国費留学生の厚遇を実際に目にしており、複雑な感情を抱いている。その国費留学生が、成績抜群であれば問題ないし、そうした優秀な留学生もわたしの知り合いにいるのだけれども、一方で政治的理由でやってきた留学生(親の地元政府へのコネがすごいとか、アメリカに留学したかったけどできないから「しょうがなく」日本に来たとか)は、勉学に対するモチベーションが低かったりする。一言で
 日本政府奨学金留学生
と言っても、コトは簡単ではないのだ。わたしは優秀な国費留学生も、コネで来た国費留学生も、両方何人も知っているが、後者の大学院教育への悪影響は、研究室の士気を下げるという点でも、よろしくない。そして、現在の選考のやり方が続く限り、後者は排除できない。

博士課程をめぐる状況は、よく変化する。最近は進学率が低すぎるせいか、手厚い保護を与えている大学院も増えてきている。ただ、それはあくまでPDの保護期間が終わるまでの話で、その先は見えない。

おまけ。
文科省がこんな通知を出してるんだけど、ひょっとして従来は
 よほどの学業不振があっても、いったん国費留学生として受け入れた以上は、年限一杯は奨学金を満額支給していた
ってことか?


国費外国人留学生の成績管理及び学業成績不良者等の取扱いについて

平成19年3月
文部科学省高等教育局
学生支援課留学生交流室

 標記の件について、文部科学省において、「外国人留学生の選考等に関する調査・研究協力者会議」において、「新たな留学生政策の展開について(平成15年12月16日中央教育審議会答申)」等を踏まえ、国費外国人留学生の質の確保・向上に資するための改善方策について議論してきたところです。
 このたび、平成20年度以降に国費外国人留学生として採用された者から、学業成績不良等の場合には、下記の取り扱いに基づいて、以降の奨学金の支給を取り止めることとします。大学等関係者におかれましては、予めご承知おき願います。

1. 対象プログラム
 研究留学生、学部留学生、高等専門学校留学生、専修学校留学生
 (日韓共同理工系学部留学生は両国政府の協定に基づく取扱いによる)

2. 奨学金の支給取り止めに相当する事項
学業成績不良
 ・留年が確定した場合、又は標準修業年限内での卒業(若しくは修了)が不可能であることが確定した場合。
 ※ただし、病気等の特別な理由がある場合は考慮する場合がある。

素行不良
 ・受入れ機関における学則等に則り、退学等の懲戒処分を受けた場合、あるいは除籍となった場合。

3. 手続き等
理由の如何を問わず、退学及び除籍となった場合、留年した場合、又は学業成績不良や停学等により標準修業年限内での卒業(若しくは修了)が不可能であることが確定した場合は、その時点(遅くとも当該年度末)で奨学金の支給を取り止める。

【具体な手続きの流れ】
1. 受入機関は本人と面談し奨学金の支給を取り止める旨を説明する。
2. 受入機関は書面にて文部科学省に奨学金の支給取り止めについて報告する。
3. 文部科学省は、受入れ機関を通じ、当該学生に対し奨学金の支給を取り止める旨を書面により通知する。
4 .受入機関は、当該学生について、帰国又は私費留学生への異動について適切に指導を行うとともに、当該学生の奨学金の支給取り止めについて、関係機関に対して所要の事務手続きを行う。
※退学等の場合は、従来通り辞退届の提出により処理する。

(高等教育局学生支援課留学生交流室)

もうね、
 国費留学生にとっては、どうして「日本の国立大修士号」はこんなに簡単に取れるのか
ということがよくあって、
 大学の世界的な信用を落とすだけなら、国費留学生は受け入れたくない
という研究室が続出した時期がある。所謂
 政治的なコネでやってきた留学生
が中心になって引き起こした問題である。あれから20年は経っているから、昨年3月にこの通達が出るまでの長い間に
 成績不良の国費留学生に修士号を出さざるを得なかった研究室
は、有名国立大学を中心として、日本中に山のようにあるだろう。
日本で日本人が
 修士のアリバイ修了
する場合は、
 研究者にならない
という約束で出て行くのが通例だろうと思うけど、これが留学生の場合は
 成績不良だろうが、いったん修士号を貰えば、それをとことん利用する
結果になっても、大学は文句は言えない。で、大抵
 ○○大学修士
という肩書きを次のステップアップに使うわけですよ。
後になって、海外の研究者から
 ××先生はそちらで修士号を取ったそうですが
と、その後の「武勇伝」を聞かされ、恥ずかしい思いをすることになったりするのだ。

最近、やっとこんな条項が、国費留学生の募集要項にはいるようになったんだもの。


2009年度日本政府(文部科学省)奨学金留学生募集要項

研 究 留 学 生
(略)
(7) 文部科学省は、在外公館の第1次選考の結果に基づき、第2次選考を行い、配置大学が決定した者を国費外国人留学生として採用する。
従って、在外公館における第1次選考に合格した者が、国費外国人留学生として採用されるとは限らない。
(略)
(注2)例えば、日本語学、日本文学、日本歴史、日本法制等、十分な日本語能力を必要とする研究分野については、日本語能力の不十分な者は、特別の事情がない限り採用しない
また、申請時から、研究計画において海外でのフィールドワークを主として希望している者は採用しない

日本語が大してできないのに
 テクストが漢字で書いてあるから、万葉集や日本書紀、古事記の研究をします
とか言って来ていた中国人留学生を制限するってことだな。前からいますけどね。

で、
 海外フィールドワークを中心にした研究計画
が、こうした条項が盛り込まれるまでは、通ってたってことか?

もう、日本政府奨学金って
 一部の不心得な留学生には「条項がザル」
として、有名だったんだろうな。

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コメント

今、地方の医学部で、地域奨学金というのをばらまいていますが、これもね。
奨学金を貰わないといけないような家庭の子弟なら、授業料免除は可能。
すると、生活費だけでは、余るわけで。
暇な学生時代に財テクに走る学生がいたりして。

投稿: ssd666 | 2008-04-18 16:09

> 日本学生支援機構(旧育英会)の奨学金は、アカデミックポストに就かないでいると、返還しなくてはならなくなる
もう数年前から「返還免除」制度はありません。大学院では今は無利子と有利子の2タイプで、無利子タイプは期間終了時に「優秀」と認められた場合、全額もしくは半額の免除があります。私は赤貧のシングルマザーなので無利子タイプで貸与を受けていますが、普通の家庭の子女は通らないみたいですね。その人達には返還免除は無しです。
年金といい奨学金といい、「今の」若者が「昔の」若者の尻ぬぐいをさせられるのはたまりません。

投稿: すずむし | 2008-04-18 19:47

以上の内容に同感な所いっばいです。私は私費留学生である。年齢の制限の理由で、国費留学生の応募に対し、いつも申し込むことが出来なかった。私同じクラスの一人の国費留学生がいる。彼女は授業によく遅刻、早退、欠席して、宿題もやらない。国費留学生ですから、試験なしで、大学院に入いた。彼女の卒業報告を聞きに行ったが、それほと優秀ではない。私私費留学生として一生懸命勉強しても、学部生の時も、大学生の時も年齢制限があって、申し込むことができない。年をとっている人がなにが悪いでしょうか。彼らは大金を貰って、勉強しないで、日本、海外旅行ばかりして、文部科学省はいったいどのような標準で学生を評価するでしょうか。

投稿: Lisa Xiao | 2009-08-03 11:18

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