ネットで『源氏物語』現代語訳を読む
『源氏物語』の現代語訳といえば
与謝野晶子
谷崎潤一郎
円地文子
田辺聖子
橋本治
瀬戸内寂聴
といったラインナップが、作家の手によるものだ。この内、与謝野晶子のものは著作権が切れているので
青空文庫
で全文を読むことができる。
ただ、与謝野晶子訳は、国文学の専門家の訳ではないし、ふるいものなので、間違いはある。
国文学者がwebで公開している『源氏物語』の本文・注釈・現代語訳としては、高千穂大学の渋谷栄一教授の研究がある。
源氏物語の世界
手軽に『源氏物語』の現代語訳を読むには、与謝野晶子訳に加えて、まずは渋谷教授の研究をガイドとして、一通り読んでから、余力があれば、原文を丹念に読むのがいいかも。最近の高校はどの程度まで古文をやってるのか知らないけど、渋谷教授の注釈は丁寧なので、古語辞典を片手に、意味の通りにくいところを考えていくならば、素人が『源氏物語』を読む分には問題ないだろう。
もっとちゃんと読むつもりなら、それなりに準備して読まないといけないけど、国文学者じゃないんだから、気楽に読んでいいんじゃないのかな。だいたい本文校訂だって、まだ検討の余地ありまくりみたいだし。
他にもそうした動きはあるだろうが、渋谷教授のサイトによると、國學院大學が中心になって『源氏物語』のテクストクリティックをやっているそうだ。
源氏物語の本文資料の再検討と新提言のための共同研究「源氏物語の研究支援体制の組織化と本文関係資料の再検討及び新提言のための共同研究」平成19年度(2007年度) 基盤研究(A) 課題番号:19202009
昨年度から始まったばかりの研究なのだが、成果を期待したい。
わたしが国文に進まなかった理由は、先行論文が多すぎるからで、実際、同期で国文に進み、しかも『源氏物語』を専門にしていた人は、1本論文を発表する前に、先行論文調べに1ヶ月以上掛けていた。それでも見落としがあって、
わたしの説を読んでないのか
というお叱りの手紙が来る、とかで、
短大の紀要論文レベルになると、もう集めきれないから、その時はごめんなさいと謝る
んだと聞いた。それはまだCOEなどという
大量の論文作成システム
がない頃だったから、今はもっと「先行論文」チェックは大変じゃないのかな、と同情している。
子どもの頃、雑誌『太陽』で連載していた舟橋聖一の『源氏物語』の現代語訳は、大量の注釈を入れつつ、解釈していく方式で、難しかったが面白かった。残念ながら完成を見ぬままに、舟橋聖一は亡くなってしまった。守屋多々志の挿絵と相まって、美しい『源氏物語』現代語訳だっただけに、残念だった。
昔から
『源氏物語』全文読破
を目指す人はたくさんいるのだが、
須磨帰り
という言葉があるそうで、だいたい第十二帖「須磨」で挫折するんだとか。その点、現代語訳なら、宇治十帖など、光源氏の死後の話は別としても、名前だけあって中味のない「雲隠」までは一気に読めるだろうから、「須磨帰り」の心配はない。
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コメント
その昔。、ご浪人様だった時、角川文庫版に挑戦しましたが、1年で半分ちょっとしか読めませんでした。
投稿: Ikegami | 2008-04-07 20:29