産科医療崩壊 産科崩壊地域静岡へ毎日新聞静岡支局が強力アシスト 極めてまれで致死率が高い急性妊娠性脂肪肝(その2)急性妊娠性脂肪肝の症例報告 1977年の段階では世界で70例、日本では5例の報告のみ
2008-05-30 産科医療崩壊 産科崩壊地域静岡へ毎日新聞静岡支局が強力アシスト 極めてまれで致死率が高い急性妊娠性脂肪肝で2005年12月25日(日曜日)に搬送された母子死亡事例で遺族が提訴したのを毎日新聞静岡支局が報道 →下田〜沼津は山道で、最短でも車で2時間では難しい難路
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/05/20051225_4021.html
の続き。
「僻地の産科医」先生が、資料を博捜して、やっと1例
急性妊娠性脂肪肝の症例報告
を見つけて下さった。ありがとうございます。
産科医療のこれから 妊娠性急性脂肪肝の1例
是非、ご一読を。
専門医のところにも資料がほとんどないことから
極めてまれな病気
というのが見て取れる。
僻地の産科医先生の総括は
妊娠性急性脂肪肝って稀な疾患なんですよね~。
(略)
予後が悪いのと、検査データが出ていましたので。
ということなので、
非常にまれな上に、致死率が高い疾病
であることは動かないと思う。
僻地の産科医先生が見つけて下さった症例は
昭和52年の報告
27才の主婦で妊娠38週に頭痛,悪心,熱発,ロ渇,次いで突然黄疸をきたし,分娩ののち急激な経過をたどって死亡し,その病状・検査所見から急性黄色肝萎縮症が疑われ,病理解剖所見から妊娠性急性脂肪肝と診断し得た症例を経験したので報告した.
で、この昭和52(1977)年の段階では
妊娠に合併する急性黄色肝萎縮症は予後きわめて不良のまれな疾患であり,わが国ではこれまでに約40例の報告がみられるのみである.
(略)妊娠性急性脂肪肝と診断されたものは非常に少なく,わが国では5例,世界でも70例の報告がみられるにすぎないといわれている.
だという。
1977年で「世界で70例の報告しかない」
のは、間違いなく、
極めてまれな疾患
だ。その後も、症例はそれほど報告されてないのだろう。
産科の予後の悪い疾病としては知られているが、臨床的にはほとんど遭遇することがないタイプ
だと思う。
僻地の産科医先生が、予後についての表をアップして下さっているので、そこから、
急性妊娠性脂肪肝の症例
を抜き出したものを掲げる。
表2 わが国における妊娠にともなう急性黄色肝萎縮症の報告より妊娠性脂肪肝の症例を抜粋
報告者 年 発症時期 母の予後 児の予後 肝重量
高知ら 1970 妊娠10カ月 死亡 死産 860g
大下 1970 不明 死亡 胎児死亡 不明
山田ら 1971 妊娠9カ月 死亡 胎児死亡 不明
小野ら 1973 妊娠10カ月 生存 新生児死亡 不明
館野 1974 妊娠10カ月 死亡 胎児死亡 900g
著者ら 1977 妊娠10カ月 死亡 生存 680g
1977年までに報告された6例の急性妊娠性脂肪肝の内
母子共に死亡4例
母生存、新生児死亡1例
母死亡、子どもは生存1例
となっており、母子共に助かった例は1つもないという、大変に
予後の悪い病気
であることが分かる。この傾向は、医学の発達した現在においても、あまり変わっていないのは、(その1)で紹介した
平成18年の日本集中治療医学会第23回中国四国地方会で発表された救命に成功した症例報告
の通りである。この事例では
母生存、子どもは死産、子宮全摘
だった。
こうなると
助かるか助からないかは、運不運に左右される
確率がかなり高くなる。重症化の徴候が出たら、早期に帝王切開して、肝機能の改善に努める、というような治療法になるかと思われるが、それが可能な病院は、残念ながら、下田市にはなかったのではないだろうか。重症化は突然起こるので、
三次救急の設備の整った病院が、近くになかった
時点で、命運は分かれてしまったのではないか。
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コメント
1977年の報告は死亡例ですが
H18年の報告は救命例ですね
今は救命例の報告ばかりです。CPCでも下手に死亡例は扱えません
死亡例=訴訟例となる可能性があるからです
これからうまくいった症例のみの知見が共有されるのみでしょう
実は死亡例、失敗例のほうが知見に富み、興味深くもあるのですが・・・
これから医療の進歩は鈍化して行くのではないかと考えられます
投稿: 通りがかりの呼吸器内科医 | 2008-06-16 15:27