ハンドルと本名
いつもいるBBSでは、基本的にみんな半角英数文字のハンドルで名前を呼ぶ。カナダの大学が開発したBBSシステムを使っていた日経MIXがなくなった後に、メンバーの一部の手によって、ほぼ同じシステムで運営されている。日経MIXのサービス終了後に今のシステムを立ち上げてから、10年以上が過ぎた。
1200/bpsとか2400/bpsとか、今から考えると冗談みたいな速度(それでも音響カプラよりは速い)で電話回線で文字のやりとりをしていた日経MIX運用当時から見ると、回線もマシンも飛躍的に進化しているけど、GUIではなくてCUIのシステムは、頑強に生き延びている。
ハンドルがあるから、本名がわからない、ということもない。このシステムでは
show who
コマンドがあって、ハンドルをshow whoすると、半角英文字の本名が出てくる。
日経MIXのシステムは、入会時にハンドルを決める時には
本名からハンドルを生成して、それをハンドルの第一候補として勧めてくる
やり方だったから、ハンドルが本名と近い人もいれば、自分でハンドルを申請して、それを使っている人もいるわけだ。
先日急逝した友人のハンドルは、本名から生成されたものだった。研究者としては、本名の方が通りがいいが、わたしにとっては、彼の名は第一にmotokaさんだった。どうしても郵便を出さなくてはいけないときには、本名を使わなければならないが、それ以外は、必要なときにはコマンドラインで参照できるという保障付きで、常にハンドルで呼んでいた。
旧日経MIXのメンバーは、mixiでは10000よりも若いIDを持っている人が結構いる。そもそも、mixiがサービスを始めた当初は、招待状はパソコン業界関係者で回っているのがほとんどだったから、わたしのところにmixiの招待状が来たのも早かった。日経MIXのシステムを引き継いでいるコアなメンバーは、パソコン業界になんらかの関わりを持っている人が多く、その流れでmixiに加入した。GREEに加入したのも同時期だった。
mixiはサービス開始当初は、たいてい本名を登録していたから、旧日経MIXのメンバーの本名は、半角英文字から、日本語表記へと変わった。普段、半角英文字で本名を知っていたとしても、改めて漢字かな表記になると、なんだか妙な気分になるのだった。
さっき、いつもハンドルでしか呼んでない友人をmixiで確認したら、きちんと漢字表記で名前が書いてあった。
こんな字だったのか
と意外な感じを受けた。
ハンドルで話が済むようになった背景の一つには、家の電話に掛けるコトが少なくなったこともあるだろう。電話が一家に一台だった時代には、一人暮らしでなければ、
正しい本名
を知らないと、まず取り次いで貰えなかった。
今は携帯だ。携帯だと本人が出るから、
あ、hogeさん?
で済んでしまう。
宴会では、名刺を配りあうので、本名もどんな仕事をしてるかも、だいたい理解しているのではあるのだが、やはりハンドルで呼んでしまう。
日経MIX時代からすると、18年くらい、ネットの上で毎日のようにやりとりしていると、擬似家族のようになってくる。ひょっとすると、いまいるBBSのメンバーのここ10年のライフヒストリーは、異性関係を除けば、メンバー同士の方が、親兄弟よりも、詳しいかも知れない。
亡くなった友人もそうだったのだが、同じ時期に大学院で博士論文に取りかかったメンバーがわたしを含めて何人かいて、論文のアイデアに詰まったり、夜中に寝付けなくなったときに、BBSはちょっとした安心を与えてくれた。先に学位を取った連中が、論文が出来上がらなくてもがいている連中を温かく見守ったり、ネタにしたり、ともかくも、なにか相手をしてくれた。論文作成中の院生同士では、無駄話をして、気分転換をした。そうやって、みんな博論を仕上げ、学位を得た。覚えている限りでは、脱落者はいなかった。
学位を取ると、一応、みんなお祝いは言ってくれるが、からかいのネタになった。
日経MIXの頃から
タコは育てよ
という、厳しいやりとりでタコが人になっていくシステムだから、それはしょうがない。わたしの場合は
博士なのに怪獣図鑑の怪獣を全部覚えてないのはけしからん
というのがネタだった。
博士と言うからには、未知の怪獣は、見たとたんに名前と体重、身長、原産地、弱点などをすらすら言えないとニセモノである
というのが、友人達の主張である。
| 固定リンク
コメント