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2008-07-04

産科崩壊 首都圏で助産院から産褥熱搬送 いまの時代に産褥熱ってどんな衛生管理をしてるのやら→追記あり

わたしが助産院を信用してない理由の一つに
 従姉が自宅近所の助産院で出産したときに産褥熱になった
経験がある。いまから20年以上前だったけど、その時でも
 ええ? 今の時代の札幌に産褥熱になるような衛生管理のなってない、そんなに不潔な産院があるの?
というのが、周囲の反応だった。

時代は移り、21世紀。
首都圏の産婦人科で働いていらっしゃるバミューダ先生が、
 助産院から産褥熱の搬送を受けた
とのこと。信じられますか?
詳しくは、以下に。
毒舌ドクターBermudaの三角形な気持ち フォーカス

「自由なお産」「自然なお産」を求めるのは結構だけど
 産褥熱を起こさせるような産婦管理
というのは、すでに何かが根本的に間違っている。
今回搬送された産婦さんは、幸い助かったようだ。まさか、搬送先の病院に文句を言ったりしないだろうとは思うのだが、助産院の管理の手落ちで病院搬送すると、えてして
 自然なお産をしようとしたのに、病院が勝手に云々
という、変な方向のクレームが入ることがあると聞く。病院で命が助かったことには感謝しない患者さんや家族がいるのだ。

産科崩壊が続く首都圏で、こうした
 衛生管理が満足にできないような助産院の尻ぬぐい
を産科がさせられ続けると、更に、産科崩壊の速度は増すだろう。

(追記 18:14)
一産科医先生からコメントを頂いたので再掲する。
残念ながら産褥熱は完全に予防できるものではなく、病院でも起こることがあるが、展開の早い産褥熱の場合は、ともかくも早期の治療が大切で、助産院では対応できないので、助産院で出産する妊婦さんや、妊婦さんを預かる助産師さんは、その点を十分留意して欲しい、とのご指摘である。


いつも拝見させていただいております。たくさんの良質な記事をありがとうございます。
産褥熱ですが、正しい衛生管理で減少させることができることは確かですが、完全に予防できるものではありません。
実際、病院でも産褥熱が発生しないわけではありません。

ただ、産褥熱ではあっという間に病状が悪化することがあり、重要なことは発生した時に素早く診断し、迅速に有効な抗生剤を投与することです。本当に1〜2日の経過で敗血症によるDICを起こすことがあります。

「産褥熱は発生したら素早い診断・治療が必要であること」
「診断には、DICの発生も視野に入れた、様々な検査が必要になる可能性があること」
「治療には、抗生物質の投与が不可欠であること、しかも正しく選択する必要性があること」
「助産院では、的確な検査も治療も不可能であること」
(バミューダ先生の病院でもDIC管理となると不十分な体制だったと思われますが)
ですから「助産院のスタッフも、そこにかかる患者もその限界をよく理解した上で、助産院を利用すべき」
だと思います。

進展の早い産褥熱では、一日の遅れで治療がどんどん大変になっていきます。
搬送元も
「病院に送ったから終わり。あとはよろしく。」
というのではなく、より素早く的確な診断ができたかどうか、常に検証する必要があります。

抗生物質が投与できなかった時代、産褥熱は常に女性の死因の上位に入っていました。
「自然」というのはそういう恐ろしさを持っていることも理解しておく必要があるでしょうね。

一産科医先生、ご教示ありがとうございました。

従姉の場合も、病院への搬送が遅れ、一時期はかなり危険だったと聞いています。
ともかくも、産褥熱が疑われる場合は、緊急な搬送と確実な治療が必要なのは今も変わらない、ということですね。

お産が始まるまでは問題なく進んでいた妊婦さんが、一度、事態が急変し出すと、お産は命がけ、ということを、残念ながら助産院では特にプリミティブに経験することになってしまうだろう。助産院は、通常分娩の範囲を超えたお産を扱えないのだ。
実際問題として、
 通常分娩がかならず、無事に終わるわけではなく、いつ異常分娩に変わるかは誰も予見できない
し、無事にお産が終わったとしても、今回のように
 産褥熱で容態が急変するのは完全に予防できない
のだ。
 自分でデザインしたはずの「理想のお産」が原因となって不幸にしてお母さんや赤ちゃんが亡くなる
などというのは、実にばかげたことだ。誰が喜びますか。
助産院で出産を考えている女性とその家族は、事態が急変したら
 すぐに対処できる病院に搬送してもらい、積極的に治療を受ける
という心構えを、持って欲しいと思う。
 助産院は万能ではない、むしろ異常が起きたときは設備がない分、搬送しなくてはならず、時間が掛かる分不利だ
という厳然たる事実を、軽視しないようにして欲しい。

おまけ。「助産院では赤ちゃんは亡くなってません」という言い分のからくり。
 2007-06-08 産科崩壊 助産所からのキラーパス 平成17年度に助産所で亡くなった新生児はわずか3人 ほかは搬送して病院で死亡
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/06/173_87b7.html

助産院で赤ちゃんを亡くしたお母さんの綴っておられるblog。
助産院は安全?
マスコミや育児雑誌では触れられることの少ない、助産院の問題点について、さまざまな事例が報告されている。

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コメント

いつも拝見させていただいております。たくさんの良質な記事をありがとうございます。
産褥熱ですが、正しい衛生管理で減少させることができることは確かですが、完全に予防できるものではありません。
実際、病院でも産褥熱が発生しないわけではありません。

ただ、産褥熱ではあっという間に病状が悪化することがあり、重要なことは発生した時に素早く診断し、迅速に有効な抗生剤を投与することです。本当に1~2日の経過で敗血症によるDICを起こすことがあります。

「産褥熱は発生したら素早い診断・治療が必要であること」
「診断には、DICの発生も視野に入れた、様々な検査が必要になる可能性があること」
「治療には、抗生物質の投与が不可欠であること、しかも正しく選択する必要性があること」
「助産院では、的確な検査も治療も不可能であること」(バミューダ先生の病院でもDIC管理となると不十分な体制だったと思われますが)
ですから「助産院のスタッフも、そこにかかる患者もその限界をよく理解した上で、助産院を利用すべき」
だと思います。

進展の早い産褥熱では、一日の遅れで治療がどんどん大変になっていきます。
搬送元も
「病院に送ったから終わり。あとはよろしく。」
というのではなく、より素早く的確な診断ができたかどうか、常に検証する必要があります。

抗生物質が投与できなかった時代、産褥熱は常に女性の死因の上位に入っていました。
「自然」というのはそういう恐ろしさを持っていることも理解しておく必要があるでしょうね。

投稿: 一産科医 | 2008-07-04 17:13

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