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2008-08-22

産科崩壊 大野病院事件と同様の「癒着胎盤」に都内の大病院で「子宮全摘」をしても死亡@2006年11月

大野病院事件においては、
・1人医長という人的資源が限られた地方病院で
・癒着胎盤という極めてまれな症例を
・子宮全摘ではなく、胎盤の用手剥離を施したが救命できなかった
ことが刑事事件として立件されてしまったのだが
・都内の大学病院で
・癒着胎盤を予見し、事前に自己輸血・予定帝王切開の準備などをしていて破水し
・子宮全摘によっても、救命できなかった
極めてまれで不幸な症例があったことが、僻地の産科医先生によって、見いだされた。
時期は
 2006年11月
で、K医師逮捕の後のことである。
詳しくは、僻地の産科医先生のblog「産科医療のこれから」の
癒着胎盤で子宮摘出し、大病院であっても救命できなかった一例
をご一読ください。

報告の最後を引用しておく。


2)医療界への要望
 当該医療施設は周産期でも有数な施設であり、そのような機関でも本症例は不幸な転帰を辿ってしまった。手術開始前から出血が始まり、手術開始と同時に短時間に予期せぬ大量出血から生じたものと推測する。産科領域では、分娩を中心に稀有に見聞するが、急激な失血を正確に測定すること、またそれに呼応した輸血を考えると、今日の治療では難しかったかも知れない。なお、本事例のケ-スでの周術期死亡率は7.4%とも報告されている。学術集会では貴重な稀有な症例が発表され、無論成功例から学ぶことも大事である。しかしながら患者を救命することを使命とする医療従事者は、処置し難い症例が現実には存在し、不幸な転帰を辿る症例もあり対処出来るように努めなければいけない。またこのような症例が現実にあることを医療界だけでなく、一般の方々にも開示し理解して頂くことを希望する。

つまりは
1. 設備も人員も揃っている東京都内の大病院
2. 癒着胎盤を予見
3. 必要な措置はとれる体制
であっても、
 癒着胎盤の産婦さんを救命できなかった
のである。

今後は、
 癒着胎盤の可能性がある場合には、子宮全摘をしても死に至る危険がある
ことを、周知徹底していくことが求められるだろう。
 現代医学の技術をもってしても、救命できないほど、難しい病気
であるのが
 癒着胎盤
なのだ。

産科医は、
 産婦さんの命を救うために、やむを得ず「子宮全摘」を選択している
のである。
 子宮を残して死ぬか、それとも子宮を取って生き残るか
という選択を、
 次の子どもができなくなる
という、
 命の選択以外の要素で拒否する
ことは、医師にはできない。
 子宮全摘により、幸いにして救命できた産婦さんとその家族
が、術後に、
 なぜ、子宮を取った!
と怒りに燃えることがあるが、
 では、死んでもいいから、子宮を残したほうが良かったのか
と、そういう方達には、もう一度、冷静に考えて頂きたいと思う。
命が助かったから
 子宮がもったいなかった
という発想になるのではないか。
 体の器官を切除するか、命を落とすか
という選択は、事故や病気の治療で間々行われる。
 胃癌が進行しているから胃を切除する
という手術は、普通に受け入れられているのだが、
 大量出血で死に至るかもしれないから、子宮を切除する
という手術は、命が無事であった後は、厳しい反発を受けることが多いように思う。

生きていてこその人生、ではないのか。
助かったことに、医療スタッフの尽力によって命を助けて貰ったことに感謝するという選択が抜け落ちているのだとすれば、実に悲しい。

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コメント

この症例は「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」の報告とされています。
この報告書の中の「5 再発防止への提言」の内容についても触れる方が偏りがないと思います。
医療者にとって不利な情報に触れていないということが容易にわかるのはいかがなものでしょうか?

投稿: 元臨床医 | 2008-08-24 03:02

その「提言」の中で記録が不備なことをいたく責めているのですが、夢中で治療に没頭していれば記録どころではなく、後から時系列に従って正確な記録を残せと言われても無理です。現場を知らない人の提言だと思います。この提言を見てしまうと、「事故調査委員会」と言うのは有害無益だと思えてきました。

投稿: bamboo | 2008-08-24 15:07

うちの施設では、こういう緊急時ほど記録はしっかりとるようにしています。
ただ、こういう緊急のシビアな状況で、しっかりとした記録を残せる人間は
修羅場となった全体を把握できる、かなり「できる」人間です。
記録より治療に当たらせた方が遙かに救命の可能性は高くなりますが・・・・・
まあ、しかたないじゃないですか。

投稿: nyamaju | 2008-08-25 11:11

結局、その病院は「設備も人員も揃ってい」なかったということじゃないのでしょうか。

投稿: 部外者 | 2008-08-25 11:32

bamboo様
後出しじゃんけんであろうと、第三者の提言を前向きに取り入れようという姿勢、無理なら無理である理由を示すことが大切だと思います。医療は昔から少しでも改善しようと努力してきたはずです。一流病院と評価されていても、手術記録すらまともにできない程人員が不足していたという医療の荒廃を訴えることもできるでしょう。医療者にとって不利な情報でも提示する姿勢が、医療と医療受益者間の不信を和らげる方向に向けると思うのですが、考えが甘すぎるのでしょうか。
ただし、現状で「医療事故調査委員会」を開設しても正確な情報は医療側から提供されないでしょうから、確かに有害無益です。この例も、もしかしたら報告施設がそのあたりの事情を察知しているのかもしれません。
正確な情報を元としない第三者の提言など無意味です。

投稿: 元臨床医 | 2008-08-25 21:15

患者さんが急変し修羅場になっているときは猫の手も借りたいです。そんなに冷静に記録を残している人を見たら、
「そんなことしていないで手伝ってくれ~」というのが本音です。以前いた病院でも(普段は原則として全館放送は禁止されているにもかかわらず)、急変があった場合は全館放送がかかり手の空いている医師はどの診療科であってもすぐに駆けつけるシステムとなっていたぐらいです。

もしも現場にご家族がいたら、冷静に記録を残している人に対して「あの人は書いてばかりいて助けようとはしなかった。一生懸命さが伝わってこなかった」ということでしょう。私なら絶対にそう思います。

そういえば、先日重度心不全で治療中の患者さんが脳梗塞になってしまいました。高齢と心不全が重なると、水分バランスの安全域が非常に狭くなります。少し水が入りすぎれば心不全となり呼吸困難や死亡となりますし、少しでも脱水になると脳梗塞になるわけです。

「今、体の中の水分バランスが適切なレベルか」は可視化できないので誰もわかりません。また、その日によって適切な水分レベルは違います。当然、どれだけ水分を投与するべきかなど誰もわかりません。経験と勘を頼りに治療しているというのが現実です。

ちょっと水分が入れば心不全、少なければ脳梗塞。こんな状況でも心不全や脳梗塞になったら、注意義務違反になるのでしょうかね。あるいは「回避可能であった」などと言われるのでしょうか?もしも、このような状況で責任を取らされるのであれば、医療はできませんし、あっという間に日本から医師はいなくなります。

投稿: 暇人28号 | 2008-08-27 16:11

http://www.typepad.jp/t/comments?__mode=red&user_id=300039&id=14929020
画質が悪くて申し訳ありません。
書いた人が夏休み中なので、スキャンした画像です。

これは去年うちであった症例です。
癒着胎盤の可能性が高いこともあり、万全の体制で臨んだものの
この状況です。
結果、突っ込んだ人員は延べ人数で、産科医が4名、心臓外科医、救命センターの外科医師1名、麻酔科医8人、麻酔科研修医5,6人
看護師15~20名、臨床工学技師2,3名。

ここまで来ると、
大学病院規模の施設で、万全の体制で臨んでも、
自信を持って救命できると言える施設は
日本国内に1ヶ所も無いでしょう。

投稿: R.Takahashi | 2008-08-27 20:54

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