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2008-09-28

医療崩壊 9/28付朝日新聞社説執筆者は病院看護師の夜勤の実態を知らないで書いているのではないか

朝日新聞の論説委員は
 人道派を気取った
つもりかもしれないが、病院の夜勤帯の実態を全く知らないで
 理想論で書いているだけ
ではないのか。
今日の朝日の社説より。


身体を縛る—原則禁止を広げるには

 本人の同意なしに患者を縛るのは、病院といえどもやはり違法——。名古屋高裁が今月5日、判決を出した。

 愛知県一宮市の病院に入院していた女性患者が、必要もないのに体を拘束されたとして、病院を相手取って損害賠償を求めた控訴審判決は明快だった。高裁は病院に70万円の支払いを命じ、原告側が逆転で勝訴した。

 判決によると、事件が起きたのは03年11月の夜のことだ。圧迫骨折で入院した当時80歳の患者が、看護師にひもの付いたミトン(手袋)で左右の手をそれぞれ覆われ、ひもでベッドのさくに固定された。腰が痛くて上を向いて寝られない患者はミトンをはずそうともがき、手と唇に軽いけがをした。

 患者は看護師を呼ぶナースコールを何度も押して、汚れていないおむつの交換を要求したり、車いすで看護師詰め所に来たりした。患者の意識が混濁し、転ぶおそれがあるので拘束が必要だったというのが病院側の言い分だ。一審判決は病院側の主張を認めて原告の請求を退けた。

 たしかに、病院は介護施設とちがって命にかかわるような患者も少なくない。人工呼吸器や点滴を患者がはずしてしまうようなことは防がなくてはならない。入居者を拘束することが旧厚生省令で原則として禁止されている介護施設と同列には扱えないだろう。

 しかし、拘束が必要かどうかは介護の世界で使われている三つの条件に照らして判断すべきだ、と高裁は指摘した。(1)患者に切迫した危険が迫っている(2)ほかに手だてがない(3)長くは続けず一時的。この三つである。

 この判断はバランスがとれており、病院も受け入れられるのではないか。

 訴えを起こした患者はこれらの条件に当てはまらなかった。自分でトイレに行ける患者には、おむつではなくトイレに付き添い、看護師が寄り添って不満や不安に耳を傾ければ患者も落ち着けたのではないか。

 「老人に自由と誇りと安らぎを」と福岡県の10病院が抑制廃止福岡宣言をしたのは10年前だ。中心になった有吉病院では、おむつをやめて患者をトイレに誘導し、鼻からの栄養補給をやめて口から食べてもらう努力をした。生活の質が上がると、患者の「問題行動」が減り、縛る必要がなくなった。

 人手がかかるこの試みは、残念ながら広がらない。医療費の抑制が続くなかで病院の持ち出しが増えるからだ。必要な人手が確保できなければ患者は守れない。高裁判決が突きつけたのは、日本の貧しい医療の現実だ。

80歳女性で、汚れていないおむつの頻繁な交換をもとめ、かつ自分で車椅子に乗って詰め所にやってくる患者さんは、朝日の主張によれば
 説得すれば、分かってくれる筈の患者さん
らしい。
入院すると
 不穏な患者さん
というのが出てくる。環境が激変して、体も自由でなく、いつもと同じようなケアを受けられないことに不安が広がり、いろんな反応が起きる。家にいるときには考えられないような行動をしたりする。大体夜間に起きるから、家族は知らなかったりする(重度だと昼夜を問わない)。この患者さんも軽度の「不穏な患者さん」に分類されるのではないかと思う。
社説は、最後の部分で
 医療の貧困
とか逃げ道を作っているが、この判決がもたらしたのは
 夜間不穏になる患者さんを抑制せずにケアが出来るほど人員が足りていない病院では、今後、そうした患者さんの入院を受け入れなくなる
という影響である。これはたぶん間違いない。

大体、
 不穏な状態にある患者さんに24時間希望のあったその時に、一々付き添って排便の介助ができる夜勤帯の病院
というのは、全国に一体いくつあるのか? 朝日新聞のこの論説委員に尋ねたい。日勤帯でもたぶんムリ。

それにだ、
 他の患者さんを放っておいた上で、詰め所に押しかけてくる患者さんに「看護師が寄り添って不満や不安に耳を傾け」る余裕が、果たして、この病院にあったのか
を、朝日新聞のこの論説委員は検証した上で書いているのか? 病院には1人が入院している訳ではないのだ。

命の危機に瀕している患者さんが多い病棟であれば、
 生命に対する危険度と緊急性
が、ナースコールの優先順位になる。この患者さんのケアに当たることで
 逆に、他の命の危機に瀕している患者さんのケアが出来なくなって、死亡または更に症状が重くなる危険の方が高い
と判断されれば、人手の足りない病院では、ケアの手は割けない。朝日新聞の社説が間違っているのは
 介護施設は命に関わらない
ではなくて
 病院には、この患者さん以外に命に危険がある患者さんが他にたくさんいる
ということを見落としている点だ。この病棟でも、
 拘束しないと、他の患者さんのケアに支障が起きるくらいの段階になっていた
のではないか。朝日新聞はあたかも
 病院が一方的に悪い「性悪説」
で書いているが、それは看護スタッフのプロとしての職能と矜持を著しく侮辱した書き方だ。
もし、1人の患者の生命に関わらないトラブルのケアに追われていたせいで、他の患者さんが死亡もしくは重度の障碍を負うことになったら、やはり訴えられるのは、病院である。病棟が安全に運営されない方を、朝日新聞の論説委員は推奨するらしい。是非、ご自分もそういう病棟にご入院下さい。
あ、朝日新聞社員は高給取りだから、医師も看護師さんもそれ以外のコメディカルの職員もたくさんいて、いつでも好きなときナースコールを押せば、すぐに病室に看護師さんが飛んできてくれる病院にしか入院したことがないのか。そりゃあ、下々の入院する病院の現状なんて、ご存じないでしょうな。

不穏な患者さんについては、医療従事者の方達の経験を聞くのが一番いいだろう。軽度から重度まで、いろんなタイプがある。
つんべさんのblog「夜勤看護師長の長い一日」より。
上品な 不穏患者も いるんです。
「看護師のお悩み相談室」より。
不穏患者さんに拒否されて
hasego先生(でいいのかな?)のblog「信頼と勇気 臨床現場の風景」から、
夜の病院と不穏患者
あーぱん先生のblog「あーぱん」より。
かわいい患者さん☆
術後に不穏な患者さんが起こすトラブルの一つは、カテーテルなどを自分で抜いてしまうことだ。「安全門」より。
術後譫妄状態の患者による胃管カテーテルの自己抜去
mayoさんのblog"mayo's journal@somewhere"より。
不穏看護の難しさ
decoppati先生のblog「ある脳神経外科医の毎日」より。診療科の関係で、かなり重度の不穏な患者さんに対してこられたようだ。
不穏な患者の対処

確かに
 患者に寄り添えるだけの看護師など医療スタッフが十分いる病院
だったら、こんな問題は起きないかも知れないが、そんな病院が日本に一体いくつあるのか。
不穏な患者さんが1人病棟にいると、それだけで病棟全体の看護が大変になるほど、日本の病院の看護師不足はひどい状態にある。
もし、高裁判決通りの看護が行えないのが日本の病院の大半の状況だとすれば、高裁判決は
 理想論によって、病院の倒産をもたらす
可能性だってある。
 高裁判決が出てるんだから、そのとおりの看護をしろ
と、別な患者さんやその家族に詰め寄られたら、どうするんだ? 経営側から言わせれば、多大な訴訟リスクを抱えて病院を続けるよりも、畳んでしまった方がマシな場合もあるだろう。一つ病院が消えれば、医療スタッフは次の職場へと散り散りになり、地域の患者さんは別な病院を見つけなければならなくなる。
医療スタッフを守れない国は、病院を守れない。病院を守れない国では、医療は崩壊する。

こうして、現場は日々荒廃していく。荒廃した現場にも、毎日ケガや病気で患者さんはやってくる。ケアの手は、ますます届かなくなる。まさに悪循環だ。

高裁判決が
 「理想の医療環境」を元に下された
のだとすれば、
 高裁判決がまさにその「理想」とは逆の医療環境をこれから作り出す
のだから、皮肉としか言いようがない。

ナースコールについては、子どもの頃の入院が長かったせいか、わたしはよほどのことがない限り押さない。看護師さんにあらかじめ指定されていたコール以外で、自分のために押したのは、開腹手術のあとのちょっとしたトラブルの時、家族のために押したのは、祖母の様子がおかしかった時だったと思う。詰め所に行けば間に合うことであれば、自分で詰め所に行って解決する。詰め所の様子を見ていれば、その病棟の看護師さんがどのくらい忙しいか分かるから、普通の判断が出来る精神状況ならば、無駄なコールはしなくなる。そうした判断が下せなくなった状態が、「軽い不穏状態」なんだろうな、と思う。

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コメント

 医師不足問題もそうですが、マスコミ一般に、おおむね医療費を増やすのはケシカラン、看護師は増やせという主張の矛盾を解くに意識もせずにやってのけます。…医療費が増えない以上、人数を増やせば平均所得は下がります。

 こんなキツイ看護師の仕事を、いまよりさらに給料を下げてやるようにというのは、およそ現実的ではありませんし、これから看護の道に進もうと思っている若者達をバカにしているとしか思えません。

 この社説の文末には、辛うじて医療費増額の必要についてコメントがあります。未だマシというべきかと思います。

投稿: rijin_md | 2008-09-29 12:24

それこそ昔あった「つきそい婦さん」を復活させたらいいんですよ。
もちろん自費でね。
そうすれば基本的に24時間付いてくれます。
昔はそうやって自分たちが十分に付き添えない家族(特に高齢者)の代わりをしてくれました。
少ない看護師さん達はその分看護に専念できる。

准看護師育成の終了と時を同じくしてなくなりましたが。

投稿: Seisan | 2008-09-29 16:51

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