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2008-10-27

首都圏産科崩壊 東京大空襲始まる(その4)自宅出産で緊急搬送になった場合のフローチャート

hsp先生から、
 2008-10-26 首都圏産科崩壊 東京大空襲始まる(番外編)10/24のNHKニュースウォッチ9に登場した「VBAC希望らしき3人目自宅出産予定」妊婦さんの映像をなぜNHKは江東区産婦死亡事例の直後に流すことが出来たのか→これはNHKによる産科救急への報道テロ→追記あり
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/10/1024nhk9vbac3nh.html
に、貴重なコメントを頂いたので、再掲する。


血液は、返品できないので、偶然ほかの患者さんに使用する分が、たまたま余っていたりでもしてない限り通常院内にはありません
このケースの場合血型も不明かも知れないので、最悪輸血ルート確保以前に血液型のチェックからしなければならないかも知れないですね。私のような内科医から見たって子宮破裂状態でこんなことしてたら間に合わないこと請け合いです。

hsp先生、ご教示ありがとうございます。

10/24のNHKニュースウオッチ9は、
 あたかも自宅出産の妊婦さんの緊急搬送が他の病院からの搬送と同レベルの危険性
であるかのように報道していたが、hsp先生のご教示を勘案すると、
 「自宅出産」からの緊急搬送それ自体が救命には悪条件
だということがわかる。

以下は
 出産の途中でトラブルが起きた場合
に、「高リスク妊娠のために管理出産」「一般の病院を受診し、分娩までは普通の経過で急変」「自宅出産で急変」の3つの場合の経過を想定してみた。

高リスク妊娠のために、高次医療機関で管理出産だった場合。
A.分娩は、「予定帝王切開」で行われる。
B. 事前に「血液型のチェック」は行われている
C. 輸血ルートは確保されている。
D. 予定帝王切開に備えて、大量の血液が確保されている
E. 起こりうるリスクについて、院内で対応が検討され、予定帝王切開に向けて、必要な医師、医療スタッフなどの人員が準備されている
F. 妊婦さんと赤ちゃんの状態は器械で随時モニターされている
1. A〜Eの条件下で、急変した場合、出来るだけ速やかに院内で処置が施される

妊娠中は普通の経過で、かかりつけの産科があり、分娩の途中で急変した場合
A'. 分娩は通常の分娩(正常分娩の筈だった)
B. 事前に「血液型のチェック」は行われている
C. 分娩開始前には、輸血ルートは確保されている
D'. 院内で必要な分の血液があるが、大量に用意されてはいない
E'. 起こりうるリスクについては、一般的な注意がなされているが、自院で対応できない場合は、高次医療機関に搬送
F. 妊婦さんと赤ちゃんの状態は器械で随時モニターされている
1. A'〜Fの条件下で、急変した場合、まず搬送先を探す
2. 搬送先を探しつつ、そこで出来る医学的な処置は済ませる
3. 搬送先が決まれば、担当医が同乗して、高次医療機関に搬送
4. トラブルの内容が正しく伝わってなければ、病状を早急にチェックする
5. 処置に必要な人員を集める
6. 処置を始める
7. 大出血の場合、血液在庫に余裕のある医療機関しか受けられない

自宅出産で急変した場合
A''. 分娩は通常の分娩の手順(助産師は、異常分娩を扱うことは出来ない)
B''. 自宅出産の場合は、事前に血液型チェックを受けてないかもしれない
C''. 分娩開始時には、輸血ルートは確保されてないかもしれない
D''. 助産師は輸血も投薬もできない
E''. 起こりうるリスクについて、助産師さんが的確な指導をしているとは限らない。場合によっては「病院出産は悪」という洗脳を妊婦さんに施していることもある。これは搬送先で救命に成功しても、トラブルが起きる主因となっている。
F'. 妊婦さんと赤ちゃんの状態は器械で随時モニターされていない
1. A''-F'の条件下で、急変した場合、まず嘱託医に連絡、搬送先を探す。
2. 搬送先探しの間に助産師ができる医療行為はないに等しい。産婦さんと赤ちゃんを器械でモニターしているわけではないから、搬送先に正しい産婦さんの急変の状態が伝えられるとは限らない。
3. 搬送先が決まれば、高次医療機関に搬送、担当助産師(助産師は看護師でもある)が同乗する
4. 搬送先では、処置を始める前に
 血液型チェックが行われてなければ血液型チェック
 輸血ルートが確保されていなければ輸血ルートの確保
 トラブルの内容が正しく伝わってなければ、病状の早急なチェック
を行う
5. 処置に必要な人員を集める
6. 処置を始める
7. 大出血の場合、血液在庫に余裕のある医療機関しか受けられない

というわけで、
 緊急性を求められる処置
に、
 自宅出産からの搬送だと、処置を始める前にしなくてはいけないことが増える
のだ。それに
 自宅からの搬送依頼
では、病院で救急救命に使うために設置されている
 緊急回線
からの連絡ではないから、通信という意味からも、搬送先探しは、困難を極めることになるのではないか。
自宅出産が緊急搬送になった場合、
1. 搬送先探しに病院出産の場合より、時間が掛かり、また、正確な病状が把握できてないために、搬送先から更に転送される場合も想定される。救急救命にはできるだけ短時間での搬送が必須という原則に反する。
2. 病院での出産では当然の輸血ルートが確保すら、なされてない可能性が高いのだが、更に、血液型チェックもされてない場合は、搬送先はそこから始めないといけないので、処置の開始が遅れる。
3. 病院であれば普通に行われる母体と胎児のモニターをしていないので、急変に気づくのに遅れ、助産師が緊急搬送に切り替える判断を先延ばしにしていた場合、手遅れになる危険が高まる
とまあ、受ける側とすれば、実に気の重い搬送になる。
 病院で生んでいれば、助かったかも知れない命を、むざむざと亡くす場合
だってあるわけだ。

病院間の緊急搬送でも、
 大出血の場合は、血液の在庫が豊富な病院を探す
のは大変だろう。ましてや、自宅出産であれば
 出血量をきちんと把握しているかどうかすら不明
である。
 NHKニュースウオッチ9が「自宅出産からの緊急搬送」を「病院間の緊急搬送」と同等に扱った
のは、まことに
 不当な報道
だと言わざるを得ない。

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