首都圏産科崩壊 東京大空襲始まる(その5)10/24ニュースウオッチ9のキャプチャ画面→VBACではなく、色素沈着だが「自然なお産」とか「帝王切開はお産じゃない」という間違った自然志向がお母さんと赤ちゃんを不必要な危機に晒している
問題の10/24ニュースウオッチ9の映像がネット上に落ちているのを赤尾晃一さんが教えてくださったので、見てみた。
問題の画面。
残念ながら解像度が高くないので、帝切の瘢痕なのか、正中線が色素沈着したものなのか、わたしにはわからなかった。
引き続き、情報を求めています。
続き。
Hirn先生からコメントを頂いたので再掲する。
へそまで一直線に繋がってるでしょ。
普通の切開創なら臍に届かない長さであるか、長くなっても迂回しますので、これは色素の沈着です。
ということで、
VBACではなく、色素沈着
とのこと。ご教示ありがとうございます。
さすがに少しほっとしました。
いや、この3日ほど、もし、この妊婦さんに何かあったらどうしようと、心配でたまりませんでしたから。
続いて、suzan先生からもコメントを頂いた。
私も色素沈着のみで手術痕ではないと思います。
創部分が引っ込んでいる、などのでこぼこがないので。ああよかった、安心しました。
自分のとこには関係ない場所ですが、どこかの不幸な産科医がこの人を受けると思うだけで動悸息切れ(苦笑)してたので。
suzan先生、ご教示ありがとうございます。
少なくとも
最悪の事態ではなかった
ことで、わたしも安心しました。ほんと、この2、3日、この件であまり寝られなかったんですよ。
しかしながら、
1. 「自宅出産」からの緊急搬送の危険性は相変わらず高い
2. VBACの危険性は高いのに、希望者が必ずいる
という状況は変わらない。
こうした「デザインされた、母子の生命に危機をもたらしかねないお産」がはびこる原因は
自然なお産信仰
という、間違った「自然礼賛」があるからだと思う。
自宅出産とVBACの危険性については、縷々述べたが、VBACなどという生体に対して野蛮な発想が出てくるのは
帝王切開はお産じゃない
などということを口にする
正常分娩しか経験したことのない幸運かつ心ない人々
が存在するからだろう。こうした
わたしは普通に生んだから
と言う一事だけで、帝王切開を受けた女性に
根拠のない優越感を振りかざす人物
というのは、その発言によって、
ただでさえ、開腹手術によってダメージを受けている、帝王切開後のお母さんの心を傷つけている
ことに気がつかない。帝王切開を受けたお母さん達は、
自分のお産が正常分娩ではなかったことに傷つき、すぐに子どもを抱けないことに(これは病院によって違いがあるだろうが)に傷つき、お乳が出ない、あるいは出にくいことに傷ついている
のだ。
めでたいはずのお産が終わったのに、言いしれぬ喪失感にうちひしがれるお母さん
もいる。そうした難産だったお母さんの精神状態をいらだたせるのが
帝王切開はお産じゃない
という、あたかも
「自力で出産するのが当たり前」で「そうでないのは半人前」
という、
まったく医学的に根拠のない差別
である。こうした考えの人たちは確実に存在する。
だからこそ、帝王切開を受けたお母さんは、悩まなくてもいいのに悩み、
次は下から生みます!
と、VBACを選ぶのだ。自分の体を犠牲にするだけでなく
赤ちゃんを失うかも知れない確率が高くなるVBACに固執
するのは、
帝王切開をバカにされ、無視され、母親としての人格を否定された
からだ。バカにする人たちの方が、よほどばかげている。
ところで、
学園闘争が学生側の悲惨な敗北
に終わったあと、
全共闘の闘士諸君が、ニューエイジ運動になだれ込み、助産師や鍼灸師や整体師などになっている
という話を聞いた。こうした人々は
間違った「自然至上主義者」
であることが多い。学生に向かってアジテートするやり方で、自分たちの患者さんにアジテートし、「洗脳」を施す。
知り合いの、大学教員が、この手の人たちの話を受け売りにして
産婦人科では「陣痛促進剤で出産する日時を医師の都合良く変えている」
と言い出したときは、さすがに唖然とした。もちろん、その時は、論理的に説明して、わかってもらったのだが、この手の
自然至上主義派による洗脳工作
は、どこで行われているか、わかったものではない。
全共闘世代は、こんなところにも
甚だしい迷惑を掛けている世代
なのである。
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コメント
わたしの投稿で手間隙おかけしまして申し訳ありません。
確かにこうして画像にしてみるとうーんと考えますね。一直線の直線だけで縫合の痕と思われる部分は見られないようです。私の先走りかもしれません。大変恐縮です。何かわかりましたらアップをお願いいたします。
投稿: うんぽぽ | 2008-10-27 15:28
へそまで一直線に繋がってるでしょ。
普通の切開創なら臍に届かない長さであるか、長くなっても迂回しますので、これは色素の沈着です。
投稿: Hirn | 2008-10-27 15:48
私も色素沈着のみで手術痕ではないと思います。
創部分が引っ込んでいる、などのでこぼこがないので。
ああよかった、安心しました。
自分のとこには関係ない場所ですが、どこかの不幸な産科医がこの人を受けると思うだけで動悸息切れ(苦笑)してたので。
投稿: suzan | 2008-10-27 16:22
坊さん兼新生児科医です。いつも興味深くROMさせてもらってます。
できることだけ多くの母子に自然に近いお産と母乳育児を楽しんでもらいたいと思いつつ、普通のお産のはずが突然修羅場になるという場面にも何度も立ち会っています。
リスクの低い(ように予想される)分娩では、産科医、新生児科医は黒子に徹して隠れて見守るのが理想と考えています。その意味で周産期センター内部での院内助産院みたいなものが普及するのが良いと思います。ヒトの出産や母乳育児について環境さえ整えれば80〜90%は医療が大きく介入することなくお世話することができますが、一旦事が起これば即救急医療になるところが大変な所以です。人手をかけないとお産と母乳育児のための十分なお世話も医療もできません。経済的な手厚い裏付けが必要です。また、社会にとってお金をかけるだけの価値のある分野であるとも思います。
投稿: 釈浄圓 | 2008-10-27 17:44
平成21年1月から産科医療保障制度が始まります。すでに全国93%以上の分娩施設が登録済みです。登録施設で分娩をすると、未受診、飛び込み出産でも未払いでも、出産時の脳性小児麻痺に対して一定額の保証金が支払われる制度です。当然、自宅出産は対象となりませんし、設備のないところで出生したほうが、障害の程度がひどくなるのは常識です。2000人に一人の割合で分娩による障害がおこるといわれています。今後は、障害児の経済的支援のためにも分娩施設で生むことを進めるのが報道のあり方だと思います。
投稿: nyao | 2008-10-29 12:51