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2008-10-13

「先生」の絶対値

これから書くことは、極めてローカルなルールなので、たぶん、他では違うと思う。

わたしの周りで
 先生
と直接呼んでいいのは、第一義的に
 自分が学生として大学に在籍していた頃に、自分の関係する学部や研究所で助教授以上だった先生
だ。助手さんは、名前にさん付が普通だった。この関係はほぼ死ぬまで続く。
非常勤の先生方で、授業に出ていたり、指導を受けた場合はやはり「先生」になる。
もちろん、手紙やメールでは、「先生」と付けるけれども、あくまで呼びかけるときは、「さん」と「先生」の区別があった。
自分が研究室に入った時点では既に退官されている名誉教授・元教授については、専攻によって扱いが違う。「先生」と呼ぶ専攻と「さん付」でも構わない専攻と両方があった。
自分が教わった先生を退官後「さん付」で呼ぶとすると、よほど相互の人間関係でまずいことがあったのだろう、と揣摩憶測される。何かの時に、別な先輩がこっそりその理由を教えてくれたりする。

他大学の教員で直接教えを受けてなければ、仲間内で言及するときは、たいていはさん付になる。
もし、そうした研究者に「先生」と付けるならば、「先生」と呼んでいる人物との間に何か個人的に特別な意味合いがあると看做される。だから、話し手が「○○先生は」と言っていても、受ける方は「○○さんは」で、さん付で受けて対話が成り立つ。
学部生の頃、教わってもいない研究者に「先生」と付けて成果を引用して、ゼミの発表をすると、専攻によっては怒られたりした。
誰でも彼でも「先生」と呼んではいけない、というのが、暗黙のルールだったように思う。

もちろん、例外はあって
 絶対的に学問的に優れている研究者は先生と呼んでもいい
のであった。この「学問的に優れている」という判断はヒトによって違うけど、文学部でも、湯川秀樹博士に言及するときは、
 湯川先生
と呼んでも、おかしくはなかったし、
 湯川さん
と呼んでも問題はなかった。本人が湯川秀樹博士にどういう評価を下してるか、またどういう学問的な距離があるかによって、「先生」と「さん」は変わる。「先生」と呼ぶのは、その指標なのだった。違う専攻だけれども業績に敬意を表するならば「湯川先生」だろうし、ノーベル賞受賞後に回ってくる「社会的貢献」に関してなにか思うところがあれば「湯川さん」だろう。

京大は、割と「先生」と呼ばない大学かもしれない。
東大では、「先生」と呼び、敬語を頻繁に使うのを見るので、たぶん、学風の違いだろうと思う。
でも、やはりノーベル賞を受賞される研究者は、なるべく「先生」を付けない京大でも
 先生
と呼ぶのが普通じゃないかな。ご本人が謙遜されて
 わたしは「先生」なんて呼ばれるガラじゃありません
とおっしゃられるにしても、だ。

学会で、相手に対して「先生」と呼んだり、教育現場で教員同士「先生」と呼び合う習慣とは、ちょっと違うのだけれども、日本語ではこのあたりの区別がないので、しょうがない。
だいたい、保育士から大学の教授までみんな同じく
 センセイ
と呼ばれるのだからな。

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コメント

前の記事でもコメントしている方がいますが、物理の世界(少なくとも
素粒子・原子核分野)では先生を使う人はあまりいません。
これは確かに世間の常識からは外れているのかもしれません。
実際、大学4年で研究室に入って教授を先生と呼んで止めてくれと
言われました。
(もちろん言葉遣いは失礼の無いよう心がけていますが)
他にもTシャツとジーパンで学会発表したりするので別な分野から
すれば変わっている点はあると思います。

以下は小林さん、益川さんが学生時代に坂田研究室に配属された
ときのエピソードを紹介している産経新聞の記事からの一部引用ですが

・(1)研究者に上下関係はない(2)研究室全体で自由な議論を行う
・「若手だろうが大教授であろうが、顔色をうかがいながら話すのではなく、
先生の気にくわないような意見でも、自由に話すことを奨励させる」。
・ 自由な意見交換と論戦によって研究を磨き上げ、さらなる高みを目指す
「教室会議制度」(益川氏)。この考え方は、京大など他大学にも広がった
http://sankei.jp.msn.com/science/science/081013/scn0810130848000-n1.htm

とあります。この文化のルーツがこんなところにあったのは知りません
でしたが、これが先生と呼ばず、さんと呼ぶ理由です。


投稿: へっぽこ研究者 | 2008-10-13 12:18

だからと言って、研究者でもなんでもないNHKのアナウンサーがノーベル賞受賞者を「~先生」または「~博士」ではなく、「~さん」と読んでいい理由には全くならないわけで。

投稿: 一言 | 2008-10-13 18:57

ちょっと横かも知れませんが。
大学生4年生に英語でメールを書かせたら、Dear ABCD(ABCDは私の姓)と始まってたり、あなたの指導教官は?と言う質問に My supervisor is EFGH.とか、いわゆる「呼び捨て」をしても、全く平気な学生達。これはマズイ、と思った学生は、XX先生をXXティーチャーと呼びかけたり。ドリフの「ダメだこりゃ」の心境です。

投稿: すずむし | 2008-10-13 21:06

敬称の使い方は、TPOによるものだと思います。
エチケットあるいはマナーのレベルです。

どんな人に対して、どんな場面で敬称を使うべきなのか、マナーを身につけないと、相手に失礼にあたりますしね。
昔は親が教えてくれたり、他人が諭してくれたりしたものですは、今はそういう機会もなくなって、マナーを身につけないまま社会人になる人も多いです。

>大学生4年生に英語でメールを書かせたら

そもそも英文レターの書き方を、教えないとだめでしょうね。
まずはその種のマニュアル本を読ませてからですね。

海外留学していた時、大学病院の医師や教員にメールを送る時には、Dr○○、あるいはProfessor Doctor○○、ときちんと敬称をつけるのが当たり前だったんですがね。
遠隔の病院からの患者紹介状にも、相手からはきちんとDr○○と書かれていましたから、これは常識の範囲のマナーなんでしょうね(もちろん、外国語ですよ)。

日本じゃ、相手が謙遜して敬称をつけなくても良いと言ってるのを真に受けるのもいますよ、いい年して。
TPOをわきまえていないのは、若者だけとは限りません。

投稿: 鶴亀松五郎 | 2008-10-13 23:49

今朝、ラジオをつけたら、ラジオ深夜便4字台「こころの時代」で、ノーベル物理学賞の小柴昌俊博士へのインタビューが放送されてました。
BSハイビジョンの「100年インタビュー」をラジオ向けに編集したものなのだとか。
インタビュアーは、ベテランの渡邊あゆみアナ。
やはりというか、敬称は「先生」ではなく、「さん」でしたね。
まあこんなもんだということで、参考まで。

投稿: どうやらNHKのデフォ | 2008-10-24 06:37

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