犬も歩けば棒に当たる
朋友書店から、中華書局から出ている学術筆記叢刊の一冊
清・鄒漢[員力]『読書偶識』
が届いた。コンタクト用の眼鏡を掛けてめくっていたら
説文、嬰、頚飾。
という文章が目に入った。なるほどね。
首にできる腫れ物は「やまいだれに嬰」と書く。『日本霊異記』にも『医心方』にも、当然ながら先行する中国の種々の医学書にも記されている疾病である。
ズボラをしてきちんと文字を調べずにいたのだが、なるほど、『説文解字』の解釈に従えば、その通りだ。
「やまいだれに嬰」と書く腫れ物は、主に甲状腺腫だろうと考えられているのだが、
嬰、首飾
というのであれば、喉の前面に大きな瘤を作るこの病を表す文字としてふさわしいわけだ。
せっかくなので、段玉裁『説文解字注』を繙いた。
十二篇下 女部
の文字で『説文解字注』では
嬰、繞也
と貝部の[貝貝]の説解によって本文を改めている、で、その後に
从女[貝貝]、[貝貝]、貝連也、頚飾
と続く。ついでだから、六篇下貝部も開いてみると
[貝貝]、頚飾也、从二貝
となっている。
「やまいだれの嬰」は、『説文解字』にも入っていて、これは七編下。説解は
頚瘤也
だ。
中国人のこの手の筆記は、端から端まで熟読することは少ないのだけれども、たまにめくると、いろいろと教えられることがある。
これからは、病名を見たら、まず『説文解字』などの字書も調べないとな。
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