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2008-11-08

首都圏産科崩壊 東京大空襲始まる(その9)墨東病院11月の当直表は地獄の様相 都は墨東病院の常勤産科医を労基法違反の過重勤務で殺す気か

 2008-11-04 首都圏産科崩壊 東京大空襲始まる(その7)「天は我々を見放したか」墨東病院で医師の数はそのままで産科「当直」日数だけが増加 都は墨東病院産科医師を見殺しにする予定
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/11/7-04bd.html
の続き。
上記記事の段階では判らなかった
 墨東病院11月の当直表
を、TOM先生がYosyan先生のblog「新小児科医のつぶやき」のコメント欄で紹介して下さった。TOM先生のコメントを以下に引用する。


2008-11-07 カタログスペックの問題

TOM 2008/11/07 23:17
 墨東病院周産期センターの2008年11月医師当直表です。文字ずれてたりしたらごめん。
(g-)は産科、(p-)は新生児科です。AとかBとかイとかは先生の名前です。ここではこの通りの仮名としました。
日祝は大抵、当直医=日直医ですので、日直医の記載は省きました
産科・新生児科とも常勤医だけではとても回らず、非常勤の先生も混ざっています。この表では区別しませんでした。ちなみに私も以前大学病院時代、墨東ではない別の某都立病院で非常勤当直した事あります。外科だったけど、常勤だけではとても足りてませんでした。
 墨東では例の事件を受け、土日の産科当直をできるだけ2人体制にすると発表しました。しかも常勤医使って。
http://www.bokutoh-hp.metro.tokyo.jp/200811sanka.pdf
この結果がこの表であり、常勤医は月5〜7回の当直になっています。無論翌日は休みじゃありません。

 まさしく「奴隷エンジン」ですね。私は特に、g-A先生のお体が心配です。

TOM先生が挙げて下さった当直表を加工して
 g-A先生 赤
 g-C先生 青
 g-D先生 緑
 g-E先生 水色
 g-F先生 紫
に色分けしてみた。

 Bokuto

原則として
 1人体制の時は常勤医が担当
だから、11月の1人体制の日 11/8 11/9 11/16 11/30の4日担当の産科の先生が常勤医ということになる。つまり
 g-A・C・Eの3先生が墨東病院の常勤産科医
だ。上記の表によると、当直回数が多いのは
 g-A先生 1/4/12/23/25/29/30(1人)の7回
 g-C先生 2/5/9(1人)/17/22/28の6回
 g-D先生 2/7/14/18/22/29の6回
 g-E先生 3/8(1人)/10/16(1人)/21/26の6回
となっている。
g-A先生の11月下旬は地獄だ。
 11/23 日直+当直(24時間連続勤務)
 11/25 日勤+当直+翌日8時間=32時間連続勤務
 11/29 日勤+当直+翌日8時間+当直+翌々日日勤=56時間連続勤務
赤を夜の当直時間帯、青を昼間の病院で診療を行う時間とすると、こんな1週間だ。

Ga2

大丈夫ですかっ、産科のA先生。
11/23の朝9時から12/1の夕方5時までの8日間、200時間の内
 労働時間 136時間
 業務を外れている時間(理想値) 64時間
なのだ。実際には、9時5時の勤務の日でも、お産の進み具合によっては、勤務時間はもっと長くなる。
 もしA先生が、病魔に襲われてもおかしくはない、苛酷な労基法違反の勤務を都が強いている
のである
A先生だけではない。
 一ヶ月に当直6回
って、
 さっさと過労死しろ
と言ってるのと同じレベルだ。
 都の公務員は、過重労働で過労死=殉死を強制されても文句を言えない
ってことですか、石原都知事。

続き。(23:10)
まずは、先日「僻地の産科医先生」のblog「産科医療のこれから」で紹介された
 野村麻美先生の日経メディカルへの投稿「厚生労働省に求められる役割とは
いまこそ墨東病院の産科当直体制を見直すとき!
野村麻実(高山久美愛厚生病院産婦人科非常勤医師)」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/mric/200811/508444.html
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/mric/200811/508444_2.html

TBを頂いたが、リンクもこちらに貼った。

更に多くの先生方が、
 産科の勤務は苛酷なのが全国的だ
という証言をコメントで寄せて下さっている。
再掲する。
「産科医」先生(お一人目)の当直はもっとひどい状態だとのことだ。


記事読んで、自分の当直表を見直してしまいました(笑)
今月は当直11回、呼び出し対応2回
週末は2回犠牲になっています。学会シーズンであと3回の週末もなし
ただし当直先は2〜3カ所に分かれていて、全てが自院ではありません。もちろん翌日は日勤です。
木刀のセンセイの当直の多忙さがどの程度かによりますが(通常分娩は取っていないということですが)、産科医としては平均的な範囲ですよ…
問題はむしろ、それに対して当直料という名のカスみたいなお小遣いしかもらえないことでしょう。きっちり時間外手当として一晩20万でも出ていれば、まあそれもありかな、とは思いますがね。自分ですか?まあ人生を楽しんでいますので、今のところ逃散はしません。過労死は分かりませんが。

産科医先生、どうかご自愛下さい。

もうお一人の産科医先生からは、こんなコメントが。


同じ産科医として、この当直回数を見ても「少ないなぁ。」としか思えないところが、感覚が麻痺している証拠でしょうね。

先生、それは「職業病」かも知れないのですが、厚労省はそういった先生方の
 善意のサービス残業にあぐらをかいている
のです。

元外科医先生から、怒りのコメントを頂いている。


こういう当直勤務表を作るやつって(笑)

早く過労死させて崩壊するか、過労死以前に耐えかねて逃散する人間が出て崩壊するかのどちらかを期待して作ったのだと思われます。
小生も注意深く結果出るまで観察したいと存じます。

本当に都は
 墨東を崩壊させたい
と本気で思っているとしか思えませんよね? 五輪招致に金はかけても
 少子化対策の根幹である周産期医療に携わる高度な技術を持つ医師や医療スタッフには金を出さない
のが、東京都の流儀。

JSJ先生の鋭い分析。


 厚労省は急性期病院の在院日数を制限することで、それでも病床稼働率を維持できる勝ち組病院と維持できない負け組病院に誘導し、負け組病院には退場していただく政策を推進してきました。が、患者が逃げ出して赤字垂れ流しても病院経営者はなかなかへこたれません。「じゃ、働く人がおらんようにしたれ。したらさすがに立っとられんやろ」と、次に繰り出したのが、「新研修医制度」と「看護の7対1配置」でした。これはかなりの成果をあげているようですね。だから、今日の事態は厚労省の思惑通りのはず。厚労省にとっておそらく期待はずれだったのは、急性期病院から逃げ出した医者の逃げこんだ先が勝ち組急性期病院ではなくて、開業とパートタイマーと療養病院だったこと。そして、負け組急性期病院に残って懸命に病院を延命し、自分の生命までかけちゃう医者達がいたってことでしょうね。都の対策によって墨東病院の死期は早まったわけで、「終わっちゃった病院は早く退場してよ」と思っている厚労省的には花マルな対策だと思います。がんばってる先生方のことは「度し難き衆生」とでも思っていることでしょう。ただし医者の熱意をもてあそぶ厚労省は悪者です。

厚労省は
 勝ち組急性期病院に「医師が涌く」
とでも思っているのでしょう、いまだに。

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コメント

 新潟の地震の頃からずっとROMしておりました。TOMでございます。
いつもiori3様のご慧眼と、学問に対する真摯な姿勢に敬服いたしております。また、我々医療者に対するご理解とご声援に心から感謝申し上げます。
 この度はあこがれの天漢日常様にてお取り上げ頂き、誠に光栄です。ホントに私、あっちこっちで「このサイト読め!」って宣伝しまくってたんですよ。
 さて、iori3様も取り上げておいででしたが、今回の墨東の事件では、「かかりつけ医」と「墨東病院」の間での情報伝達の齟齬があったと言われています。しかし私は、書くわけにはいかないのですが、その真相を知っています。でも、この当直表とか見ると、私はとても墨東の先生を責める気にはなりません。私だって元勤務医だったのです。彼らの疲弊はよく知っています。それだけに、むしろ医師にそんな「言い訳」を言わせてばっくれようとしている者達に強い怒りを感じています。
 これからちょくちょくこちらにも顔を出させていただくかもしれません。その節はよろしくお願いします。

投稿: TOM | 2008-11-08 01:47

TOM先生、コメントを頂き、また長年のご愛読、ありがとうございます。
墨東病院の当直に関する貴重な情報をご教示頂き、いかに今回の
 当直2人体制死守
が、現場に苛酷な負担を求めるかが、よく理解できました。
わたしも常勤医の先生方のお体が心配です。

マスコミの「情報操作」というか「事実を歪曲した報道」には呆れますね。
某所で、杏林大学病院の搬送受け入れ不能について、搬送元の関係者が証言されていましたが、巧みなビデオ編集で、言ってもないことをあたかも「発言したような」映像が流れているとか。

投稿: iori3 | 2008-11-08 06:58

記事読んで、自分の当直表を見直してしまいました(笑)
今月は当直11回、呼び出し対応2回。
週末は2回犠牲になっています。学会シーズンであと3回の週末もなし。
ただし当直先は2~3カ所に分かれていて、全てが自院ではありません。もちろん翌日は日勤です。
木刀のセンセイの当直の多忙さがどの程度かによりますが(通常分娩は取っていないということですが)、産科医としては平均的な範囲ですよ…
問題はむしろ、それに対して当直料という名のカスみたいなお小遣いしかもらえないことでしょう。きっちり時間外手当として一晩20万でも出ていれば、まあそれもありかな、とは思いますがね。自分ですか?まあ人生を楽しんでいますので、今のところ逃散はしません。過労死は分かりませんが。

投稿: 産科医 | 2008-11-08 17:12


 厚労省は急性期病院の在院日数を制限することで、それでも病床稼働率を維持できる勝ち組病院と維持できない負け組病院に誘導し、負け組病院には退場していただく政策を推進してきました。が、患者が逃げ出して赤字垂れ流しても病院経営者はなかなかへこたれません。「じゃ、働く人がおらんようにしたれ。したらさすがに立っとられんやろ」と、次に繰り出したのが、「新研修医制度」と「看護の7対1配置」でした。これはかなりの成果をあげているようですね。だから、今日の事態は厚労省の思惑通りのはず。厚労省にとっておそらく期待はずれだったのは、急性期病院から逃げ出した医者の逃げこんだ先が勝ち組急性期病院ではなくて、開業とパートタイマーと療養病院だったこと。そして、負け組急性期病院に残って懸命に病院を延命し、自分の生命までかけちゃう医者達がいたってことでしょうね。都の対策によって濹東病院の死期は早まったわけで、「終わっちゃった病院は早く退場してよ」と思っている厚労省的には花マルな対策だと思います。がんばってる先生方のことは「度し難き衆生」とでも思っていることでしょう。ただし医者の熱意をもてあそぶ厚労省は悪者です。

投稿: JSJ | 2008-11-08 17:26

同じ産科医として、この当直回数を見ても「少ないなぁ。」としか思えないところが、感覚が麻痺している証拠でしょうね。

投稿: 産科医 | 2008-11-08 19:00

こういう当直勤務表を作るやつって(笑)

早く過労死させて崩壊するか、過労死以前に耐えかねて逃散する人間が出て崩壊するかのどちらかを期待して作ったのだと思われます。
小生も注意深く結果出るまで観察したいと存じます。

投稿: 元外科医 | 2008-11-08 20:33

http://www.digisbs.com/tv/program/tvukan/special/080428非常勤医師.htm
まだ、給与がでているだけましです。

ボランティアでリスクを取れという県もあります。

投稿: じずおが | 2008-11-08 21:55

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