産科崩壊 1800万円の予算をつぎ込んだ奈良県の看護師・助産師による産科コーディネータは機能せず 税金を投入しても無駄金に 一方、部長級医師がコーディネータを務める大阪府では一定の成果@NHK大阪(ほか管内全局だろうと思う) シリーズ「検証・周産期医療(1):コーディネーター制度で搬送先確保」12/8 18:10〜
昨日からBK管内の午後6:10からのローカルニュース枠で、
4回シリーズ「検証・周産期医療」
が始まった。全4回の内容。
ニューステラス関西 放送予定シリーズ「検証・周産期医療(1):コーディネーター制度で搬送先確保」
安心してお産のできる環境を確保するにはどうしたらいいのか。お産前後の母子を対象にした「周産期医療」を考えます。1回目は、緊急処置の必要な妊婦の搬送先をいち早く確保しようというコーディネーター制度の現状を、妊産婦の搬送をめぐって問題が相次いだ奈良県と大阪に取材し、母体と赤ちゃんを守るにはどうしたらいいのか検証します。シリーズ「検証・周産期医療(2):役割分担でお産場所を確保」
産科医不足のなか、和歌山市では、妊婦の定期的な検診は診療所が担当し、お産は総合病院で行う、「セミオープンシステム」と呼ばれる役割分担を導入しています。日常的な診療はかかりつけ医が行うことで、総合病院の産科医は、お産や妊婦の治療に集中しようというもの。産科医療の破たんを防ごうという取り組みをリポートします。シリーズ「検証・周産期医療(3):助産師活用で危機を打開」
産科医不足を助産師との連携に活路を見いだそうという動き。京都府の福知山市民病院では、正常なお産は助産師が行い、妊婦からも細やかなケアを受けられると好評。一方、開業する助産師たちには、おととしの法改正で緊急時の受け入れ先となる病院をあらかじめ確保しておくことが義務づけられ、厳しい風が…。助産師活用のあり方を考えます。シリーズ「検証・周産期医療(4):残る課題 NICU不足」
緊急処置の必要な妊婦が、高度な設備を持つ病院にスムーズに受け入れられない背景に新生児集中治療室(NICU)の不足があります。体温や十分な酸素を保つNICUは赤ちゃんの治療に欠かせません。赤ちゃんの入院期間の長期化や救命率の向上で、現在の1.5倍必要だとする調査結果もあります。NICUの実態と課題をリポートします。
で、昨日は
産科コーディネータ
について。前説の部分は、各局で違うはずで、わたしが見たのは
NHK奈良
のバージョン。NHK奈良は
受け入れができなくて
ときちんとコメントしていた。AKがニュースで
妊婦の受け入れ拒否
と報道し続けているのとは、大分違う。これは
実際に受け入れができない状態
を関西のNHK取材班が身にしみて理解したからだろう。AKと一都六県の取材班は
まだ、受け入れ不能は「他人事」モード
なんだろうな。いったん
マスコミが産科を叩いて、医師が撤退し続ける焼け野原
を経験しつつある関西では、
産科医は貴重な戦力
だ。もし、マスコミが口を滑らせて、さらに希少なお産を扱う関西の産科医が前線から撤退すれば、どうなるか、さすがに分かってきているのだろうと思う。
奈良県の常勤産科医は72人
しかいない。それが医師の高齢化などで、更に減るのは目に見えているのだ。戦力を削がれたら、奈良から他府県へ妊産婦さんが搬送される事例はもっと増える。搬送時間が長くなり、救急救命の原則
ともかく早く処置を
が出来なくなるのは明白だ。
大阪府の産科コーディネータは
部長級の医師が担当、「コネ」で搬送先を探す
という力業で、なんとか成立している。搬送時間がコーディネータ導入前と導入後では、20分程度短縮し、問い合わせ件数も減ったというのは、
制度が「医師」によるもの
というよりも
制度が部長級の医師という「力のある人物」によって運営されている
からだ。これは大阪府のコーディネータ発足時から指摘されていた点である。
一方、
看護師や助産師がコーディネータを務める奈良県ではほとんど利用されてない
というのが現状だ。番組内では、桜井市の赤崎医師が、
自分で直接受け入れ先に電話をして交渉する
様子が紹介されていた。
奈良県の産科コーディネータは
奈良県立医大に土日祝だけ置かれ、4人で運営
しているが、
実際に使われた例は予算に比して効果がないレベルである
状態(5件だったか5%だったか、そんな数字)だった。
奈良県の産科コーディネータが失敗するのは、端から分かっていた。この件については以下に。
2008-03-06 産科医療崩壊 「子どもを守る」はずの橋下徹知事が、大阪の産科救急医療に暫定予算を付けず、崩壊の危機に→4月以降も継続だが充実されるかどうか謎
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/03/post_d983.html
上記記事で懸念されていた大阪府の方の「予算」は、結局、府が付けたので、事業は継続されている。
で、奈良県の方は
県は今年度も1800万円の予算
を付けて、この惨状である。だいたい、上記で小林浩奈良県立医大教授が指摘されていたように
コーディネーターは医師がやらないと機能しない。ただ、県内の産科常勤医は72人。この中から出すのは困難
という状況で
計画は立てたから、予算は執行しないとイケナイ
という「役人魂」がもたらした当然の結果である。
最初から失敗するとわかっていて、やったらやっぱり失敗しました
という、ダメ行政の典型のような施策なのだ。
ま〜、奈良県で子どもを産むのは、だんだんと難しくなってきましたな。
大阪府の方も、いまは部長級の医師が前線に立ってくれているから保っているようなもので、これが、機能しなくなると、とたんにダメになるのは目に見えている。部長級というと40代後半から50代でしょうな。その先生方が夜間もコーディネートに力を貸しておられるわけで、
尋常の沙汰ではない
のだ。もし、いま担当されている部長級の先生方が健康などを損なわれたら、「次」はいるのか。
まさしく
薄氷を踏む思い
で、大阪府の産科コーディネータ制度はなんとか「成功」しているのである。
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