メディアに露出すると言うこと Nスペ「医療再建 医師の偏在 どう解決するか」@12/21 21:00-22:48→追記あり
先日のNスペ
医療再建 医師の偏在 どう解決するか
は見ていない。理由は簡単で
討論
と書いてあったので
絶対にNHKの担当CPの好き放題に編集されて、つまらん内容になる
と思ったからだ。NHKというのは
報道のベースとNスペのベースはそれほど隔たらない
ので、NHKの報道が
医師側の責任を糾弾するベース
である現状を見ると、この手の「討論」が
100%医師擁護になることはない
のだ。それに
バランスを取るのが「中立公正」の「公共放送」NHKの建前
なので、
一応、「両方の言い分を聞きました」
という形に納めないと
討論部分のあるNスペの編集としては「大失敗」
になってしまう。従って、
試写(腐るほどやる)の段階で、どんどん「バランスを取るように編集し直し命令が出る」
のである。
なおかつ
NHKに「貢献しているヒトの話は大きく取り上げる」傾向
があるので、当日出演者の中では、勝村氏の発言が尺を取っていたとしても不思議はない。勝村氏はそういう意味では
NHKによく顔を出す出演者で、番組制作に「貢献」してきている
からだ。
この辺りの
NHKの編集事情
を知らないと、
言い分が通らない
と怒り出す人が出てくる。
案の定、
自分の発言が、取り上げられなかった
という方から投稿された、
当日の討論からカットされて、放映されなかった内容
がネットにアップされている。「Web Clover NPO法人地域医療を育てる会のブログ」より。
2008/12/23 「Nスペ「医療再建」の闇をあばく! 1〜3」
要するに
6時間の収録で、医師側のいちばん伝えたい部分を全部オミットされた
というのだけど、残念ながら、
編集権はNHK側にある
わけで、自分の一番言いたいことが放映されなかったとしても、それはしょうがない。
メディアに露出すること
とは
自分の発言を、メディアの都合良く編集されることを承諾した
のと同じだからだ。
どうしても、自分の意見をバイアスなしで通したいなら、blogなりなんなり、一番自己の主張をしやすい方法で述べるしかない。
もし、メディアの力を借りて、自己主張をしたいなら
必ず、メディア側のバイアスがかかった編集になる
に決まっている。
件の「スタジオの大仏」さんは、この手の収録に不慣れなのかも知れないが、生放送で発言の機会を与えられている場合を除き、
すべての発言は必ず編集されるし、編集された結果、自分の意図と180度違う形で公表される危険
は、必ずある。
NHKだから大丈夫
なんて思い込みは、あまりにもナイーブすぎる。
(追記 20:16)
麻酔科医先生から、上記blogの追加記事をご紹介頂いた。
2008/12/24「こだわりたかったこと」
麻酔科医先生、ご教示ありがとうございました。
ところで、この追加記事を読む限り、残念ながら
NHKの番組制作のやり方が分からず、間違った方向に「全幅の信頼」
を置いておられるのだな、と思う。
NHKの番組制作において
討論部分でのやりとりが、最初の「提案」(NHK内の方言で、他局なら「企画書」)を大きく外れることはない
のである。従って、上記で管理人さんが
今思い返してみると、すでに1年前からされていたという番組の準備の中ですでにVTRが作成され、その命題に沿った議論しか、あの番組の「材料」となりえなかったのです。
と気がつかれたとおりであり、それ以外の要素を
討論部分の編集に盛り込むことはない
のが、NHKのこの手の
討論入りNスペでの番組作りの原則
である。
従って、
あの日、6時間という長い時間と労力を注いで医師・患者(私は「市民」というカテゴリーもほしかった)・行政それぞれの立場の人たちが相手に責任を求めるというスタンスではなく、相手の立場を考えながら、自分に出来る事を探ろうとしていた そのことが全く番組に反映されていなかったことに危機感を覚えたからです。
というご意見だが、NHKの番組制作では
まず、こうした「番組収録中の討論で、番組の骨子が全く変わる」ということはあり得ない
というのが、わたしの考えだ。というか
いかに「提案」に沿って、番組を作り上げていくか
ということに主眼が置かれているので、
「提案」で予期されていなかった「イレギュラーな展開」
が、V取材の段階で入り込んだ場合は別として
討論部分で出てきても、それは「徹底的に削られる」
のがオチである。
それと
収録に6時間も掛けた討論
というのは
削る部分の方が多い
わけで、どうやらNHKの中の人たちも
6時間も取っちゃったけどどうしよう
だったのではないかと推察される。ビデオ編集を一度でもやったことがあるなら分かることだが、
6時間の討論を、Vと絡めて、番組の意図が分かるように編集する
のは、いくらプロであっても至難の業だ。従って、管理人さんが惜しんでおられる
討論が醸成した「画期的な変化」の部分
は、
番組「提案」の意図と異なる
わけだから、
最初の試写用ビデオが編集されたときに、真っ先にカットされていた可能性が高い
と思う。そこまで微妙な空気を、Vを絡めた1年がかりのNスペで再現して貰おうというのは、はっきり言ってムリだ。というかそうした
微妙な空気の部分
は、最初に切ってしまわないと、
あらかじめ準備されたVに沿って行われた討論全体のニュアンスが、不明確になる
だろう。
そこまで、Nスペの編集に求めても、残念ながら、それは無い物ねだり。
だいたい、1年も掛けて作るNスペは
各部署の寄り合い所帯が制作
する、
責任の所在が不明確なNスペ
となる。つまり、今回のNスペが例えば
科学文化部が単独制作
だったのであれば、討論部分をすくい取って、全体の構成を変えることはできたかもしれないけれども、今回は
社会部・科学文化部などの混成部隊による制作
だから、まず、
討論がきっかけとなって、全体の構成が変わる
なんてことは、起こりえない。
ま、
討論なんて、Vの内容を肉付けするための「おかず」
でしかない、というのが、この手の
討論付き、混成部隊制作Nスペの本質
であり、そこに駆り出された時点で、残念ながらNHKの術中に嵌っているわけで、勝敗は見えている。自分が番組に参加して発言することで
なにか画期的な変化が、番組でも起きうる
なんていうのは、残念ながら
善良な市民がNHKに抱く美しい幻想
である。
NHKの混成部隊による、番組制作というのは
硬直化した「大人の論理」
に則って、
大過ないように作るのが「ベスト」
とされる。従って、
絶対に「画期的な変化を生む内容」にはなり得ない
のだ。
その辺りの仕掛けやら仕組みを知らないと、失望されるでしょうね。
ただ、いくら
二度と、このような番組が作られてはならないと強く感じ、ブログに書き込みをした次第です。
と仰っても、NHKの体質が変わらない限り(そして、それは恐らく今後10年以内には起こらない)、
先輩の作り上げた「番組制作手法」は継承される
のが、
NHKの伝統芸
なので、今後も
討論つきNスペ
に関しては、webCLOVERの管理人さんの期待を裏切って
何度もこのような番組が作られる
だろう。それは
NHKの体質
だから、変わりようもなく、そのNHKに期待すること自体が、間違っている。
どうしても自己の主張をNHKのNスペで取り上げて欲しいなら
著書を書き、ムーブメントを起こす
くらいしかない。
NHKの取り上げる重要度からすれば、Nスペ双六はこんな感じ。
1. 地方ニュースで取り上げる
2. 管中ニュースの小コーナーで取り上げる(管内放送 近畿とか、首都圏とか)
3. 全中ニュースの小コーナーで取り上げる(全中=全国放送 最初は、朝のニュースの早朝の小コーナーとか、「お元気ですか日本列島」とか)
4. 管内の金曜夜7:30からの「地域版クローズアップ現代」で取り上げる
5. 全国放送の「クローズアップ現代」で取り上げる
6. 「にっぽんの現場」で取り上げる
7. Nスペで取り上げる
って段階を踏むんじゃないかな。クロ現からNスペまでは1ステップのこともあるし、もう少し段階を踏ませることもあるかも。もちろん、取り上げられるためには
NHK職員とお友達になって、なにかイベントがあるごとに、しつこいくらいに連絡を入れるクセ
をつけてないといけない。そこまでマメにやって初めて、
じゃ、今度取材に伺いますね
という発言を引き出せる。
メディアを味方に付けよう
と思うなら、普段から、
メディアの中の人たちを「耕す」作業
をしておかないとね。それには手間も時間も掛かる。
(追記終わり)
メディアに露出する覚悟があるのであれば、
編集権はメディア側にある
ことを勘案して、取材に臨むのが基本だ。
大体、最初に取材にくるPDは
人たらし
である。そうなるように訓練されている。
ヒトに取材を掛ける場合、
取材対象に嫌われたら、番組そのものが成立しない
わけだから、ともかく、所期の目的を達するまでは、PDは、絶対に、出演交渉相手に
悪い話
はしないものだ。PDは信用されるために
相手の話をともかく聞く
のである。相手の話を聞いているからと言って
相手の話を納得しているわけではない
のである。たぶん、あまりメディアの取材を受けたことがないと、
話を聞いてくれているから、自分の意見に賛同してくれているのだろう
と誤解するのだろうな。はっきり言うが
話を聞いていたとしても、話し手の意見に賛同しているわけではない
のだ。この辺りが、メディア取材をあまり受けたことのない人が陥りやすい誤解である。
続き。
例えば、NHKのど自慢という、定番公開番組を制作する場合、予選で出場者を決めた後、翌日の本選=本放送に向けて、
番組の賑やかしになる出場者(サカナなどと呼ばれている)
と
鐘が鳴る合格予定の出場者(予選の実力であらかた目星は付いているが、当日、アガってしまって全くダメだったりするので、若干多めに見積もる)
の間に
普通の出場者(鐘一個とか二個とか)
を組み合わせるように、歌う順番を決める。合格予定候補があまりに少ないような会場では
ボロがでない内に鐘を鳴らす
などして、ゲタを履かせることもある。さすがに合格者が一人では、番組として成立しないからね。
こうした仕掛けをしておいて、毎週、あの
演出があるようには見えない「NHKのど自慢」
が放映されているって訳だ。
「のど自慢」でも、最低この程度の演出はする。
それが
意見を求める討論番組
であるならば、
最初の取材で「ああ、それイイですね」
と担当PDが口にしたのと同趣旨の発言を
テレビカメラの前で発言してほしい
というのが、NHKが、出演依頼を掛けてくる理由である。カメラの回ったときに、事前にPDとの打ち合わせで「それイイですね」と言われたのと全く違う主旨の発言をしても、それはカットされるだろう。もし、残して貰えたなら、それは相当ラッキーだったとしか思えない。
要するに、
NHKが求めているのは、その場で自由に発言する人物
なのではなく、事前の取材で
NHKが「これなら放送素材に使える」と判断した「発言」をしてくれる人物
なのだ。
この辺りを見極めないと
自分の発言を取り上げなかった、けしからん
ということになるわけだ。
テレビが求めているのは
カメラの前で、事前の打ち合わせ通りの内容を、カメラを振ったタイミングで発言してくれる人物
だ。決して
いつものあなた
なのではない。
メディアに露出するのなら、まず
自分をどう見せるか
という戦略を練ってからじゃないと、たぶん、うまくいかない。メディアが求めているのは
メディアに見えている「自分」
だ。その点では、タレント医師を除いた、一般の医師は、そうした
メディアでの自己演出
に長けているとは言えないかもね。
タレント医師に一日の長があるとすれば
メディアにおける自分の見せ方を常に工夫し、視聴者の抱いているイメージとブレないように演出することを怠らない点
だろう。
自分が商品
である以上、自己演出と、一度作ったイメージの一定期間の保持は、タレントの義務である。そうした
作られた自分のイメージが一人歩き
することがイヤならば、一切、メディアに露出しないことである。
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コメント
マスゴミの奴ら、取材を受けたら好き勝手に書きやがりますからね。
私なんか子供の頃、
取材を受けたばかりに、ほとんど捏造に近いようなレベルまで編集した上で報道され、
社会的に抹殺された祖父の隠居後の話し相手をよくしていたものだから、
最初から奴らは恥知らずな嘘つきとしか思っていませんが、
奴らに対して幻想を抱いている日本人の多いこと。
投稿: nyamaju | 2008-12-24 11:13
http://hello.ap.teacup.com/sodateru/
2008/12/23
「Nスペ「医療再建」の闇をあばく! ①〜③」
投稿: 麻酔科医 | 2008-12-24 19:52
番組の途中で、新葛飾病院の医療メディエーター豊田郁子さんがおられたのに全く発言がなかったのが不思議でした。(途中、観覧席をアップで写していたのに)
正直言えば、勝村氏のような意味不明の主張をしている人にコメンテーターなどさせずに、豊田さんに代わってもらった方が、問題点の整理が簡単だったでしょう。
正直、出演していた勤務医については失望しています。問題意識はあるのかと!
市民・行政・開業医・病院経営者に囲まれて、求められるのは更に過剰な勤務医への労働強化しかないのに、どうしてまともな反論ができないのだろう。
まあ、適切な反論があったとしても、編集されてしまっていたら伝わりようもないし、NHKには伝える気もなかったのだから、出演しただけで批判を浴びるのは可哀想かもしれませんが・・・
投稿: Med_Law | 2008-12-24 22:33
やはりマスコミがやってるのは
「調査」ではなく「取材」なんですね。
先入観によるミスリードの無きよう常に細心の注意を払いつつ調べ精査するのが調査。
先入観で叩けそう、ウケそうと決めた標的のネタ材料を取ってくるだけの取材。
全く次元が違う。
勘違いしてる記者本人だけでなく我々一般人も
記者は「調査」をやってくれるとつい期待してしまうけど、
客のウケるネタしか出来ないんだから所詮彼らは
理性ある調査人ではなく感情と勢いだけが売りの若手芸人でしかない。
投稿: 製造業 | 2008-12-25 16:34
某公共放送のディレクターさんと、お話をしたことがあるのですが
(取材ではなく、話を聞きたいということでしたので電話でお話を・・)
話しやすかったという印象の裏には、記事にあるような事情もあったんですね・・
P.S
「医療破壊報道 毎日新聞西部(九州)本社の藤清隆記者「全国各地で救急搬送を拒否した病院は患者を捨てた」と暴言」の記事へのトラックバックも、こちらに送ってしまったようで、2つもTBが貼られていて申し訳ございませんm(__)m
投稿: パン | 2009-01-04 22:07