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2008-12-23

産科崩壊 NICUを増設すると、勤務する産科医・新生児科医・看護師も自然に増える? 箱だけ増やしても、稼働しないNICU増設計画の愚

厚労省もマスコミも
 周産期を預かる産科医と新生児科医や看護師は「NICUに自然に沸くボウフラ」
だとでも思っているとしか思えない。極めて専門性の高い技術者である、産科医と新生児科医は、
 10年以上のキャリアを経て、ようやく1人前になれる職能
であることを無視している。
見出しが香ばしい財経新聞より。


2008年12月19日 11:12更新 もう妊婦を断らない、厚生労働省、新生児集中治療室を1.5倍に増床

 東京都内で起きた妊婦死亡問題を受け、再発防止策を検討していた厚生労働省の有識者懇談会は18日、全国の医療機関の新生児集中治療室(NICU)を現在より最大5割増やすとした報告書案を大筋でまとめた。妊婦死亡問題が起きた時に、受け入れを断った理由が、NICUの満床が多かったことを考慮してのこと。

 産科救急に関して、総合周産期センターが拠点だが、今まで脳出血などの脳疾患や心疾患を合併した重症妊婦を受け入れが困難で問題となることが多かった。しかし総合周産期センターは本来、相当規模の母体・胎児集中治療管理室を含む産科病棟及び新生児集中治療管理室を含む新生児病棟を備え、常時の母体及び新生児搬送受入体制を有し、合併症妊娠、重症妊娠中毒症、切迫早産、胎児異常等母体又は児におけるリスクの高い妊娠に対する医療及び高度な新生児医療等の周産期医療を行うことができる医療施設をいう。今後、母子の救急の整備が必要になる。

 同省は今後、今まで出生1万人当たり20床としていたNICUの必要病床数を、1万人当たり25-30床に増やし、それに伴い医師確保に整備も進めていくとした。

えええええええええ。
今だって
 周産期医療に携わる産科医・新生児科医の不足は深刻
なのに、
 これからどうやって「促成栽培」
するつもりなのかと。なおかつ、
 NICUに不足している看護師
も、どうやって手配するつもりなのかと。
 医療スタッフが集められなくて「NICUは作ったモノの、稼働しない施設」
の実態について、厚労省のこの有識者懇談会は、ちゃんと調べた上で発言しているのか?

NICU増床を手放しで喜んでいるマスコミは、
 ベッドが患者を治療する
と、素敵すぎる勘違いをして、全く反省しない。よく、
 ベッドが空いていれば助かった
と、あたかも
 ベッドが患者を治療する
ような書き方をするが、本来は
 患者さん一人につき必要な医療スタッフが不足しているから、受け入れられない
のである。
 ベッドがヒトを治せるなら、フランスベッドの工場に運べば、全員助かる
と、よく揶揄されているけど、そのとおりだ。
 手が足りなくて、見殺しにする方がベター
だというのなら、マスコミはその責任を取って頂きたい。もし、手不足なのにムリに受け入れて、不幸にして患者さんが亡くなった場合、どうせ
 「監視の目が届かず死亡」
とかという記事を書き散らして、センセーショナルに騒ぎ立てるだけだろう。要するに
 マスコミによる「医療事故誘因」マッチポンプ
以外の要素を
 ベッドがなくても、受け入れろ論
には見いだすことは出来ない。いっとくけど、自分が交通事故に遭って多発外傷で搬送されたときに、
 ベッドがなくても、受け入れてくれ
と思うのかね、マスコミの記者諸賢は。
 適切な処置を受けられず、放置されてもいい、病院の屋根の下で死なせてくれれば
って意味なんだけど、分かって書いているのかな?
実際に最近あった
 ベッドがなくても受け入れた事例
は、こちら。
 2008-05-14「マスコミたらい回し」とは?(その120) 中国四川省[シ文]川大震災に見る「ベッドがない」状態
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/05/120_17c3.html
この時、
 ガス壊疽が発生
したのは、記憶に新しい。
中央日報より。


<四川大地震>感染から12時間で死亡「ガス壊疽」広がる

中国・四川大地震の被災地各地では山崩れなどが続き、被害が増加しつづけている。その上、四川省では致命的な伝染病が広がっている。

四川省衛生当局は18日「致命的な伝染病のガス壊疽(えそ)に感染した患者58人が成都の各病院で隔離、治療を受けている」と明らかにした。

世界保健機関(WHO)は大地震の発生以降、2次災害として同病流行の可能性を深く懸念してきた。ガス壊疽を発症した患者は、華西病院、四川省人民病院などで治療を受けている。

問題は成都軍区総合病院などほかの病院に入院した患者の中にも類似の症状を見せる患者が少なくなく、感染者がさらに増える見通しだという点だ。華西病院伝染病センターの唐紅主任は「被災地でガス壊疽に感染した患者5人が14日に入院して以来、患者数が増えつづけている」と話している。

四川大地震から7日目となり、埋没した地区全域にわたり収拾できずにいる遺体の腐敗がひどく、第2の伝染病流行も懸念されている。

◇ガス壊疽=負傷などで生じた傷口などが壊疽菌に感染して発症する。大きな負傷や手術などで血の供給が弱まったところで感染を起こして発症するケースが多い。感染後にバクテリアが送りだす毒性物質がガスを作り、組織が壊死(えし)していく。したがって、ほかの壊疽とは違って、皮下組織にガスがたまり傷を押すと圧力により音が出るのが特徴だ。1-4日の潜伏期を経て発症すれば12時間以内に死亡する。呼吸器でなく人体外部にある傷を通じて伝染されるが、いったん感染した場合、急速に広がることから死亡率が非常に高い。

中央日報 Joins.com
2008.05.20 09:08:45

日本の病院で「ベッドなしで受け入れ」た場合、さすがにガス壊疽までは発生しないだろうが、当然、感染症リスクは幾何級数的に高まる。
感情論で、疾病が快癒するなら、誰でも治せる。
医学は科学技術であり、それを操るのは一人一人の熟達した手技を身につけた医師や看護師なのだ。機械が治すのでも、薬が治すのでもない。徹底した衛生管理の下に、最善と思われる治療を尽くすことが
 NICUを必要とするかよわい周産期の赤ちゃんと、出産が契機となって大きなダメージを受けたお母さんを救う唯一の方法
だ。

いくらNICUを増床したところで、すぐに任に着ける医師は見つからないだろう。これから若い先生方が修行して、ひとかどの実力を備えるようになるには、今から10年はかかる。
その間に、たぶん、稼働しないNICUのために
 ハコモノ予算
が費やされ、
 稼働しないNICUががらんとした周産期医療センターにいくつもある光景
が、NHKのニュースなどで映されるだろう。
 医師が足りません、看護師が足りません、助けて下さい
とマスコミは叫ぶかも知れないが、その前に
 周産期医療に現在携わっている医療スタッフの労働条件の改善
がなされない限り、前線の先生方が過労や病で倒れて離脱することはあっても、大きく増えることはないだろう。
精神主義で持ちこたえられる時期はとっくに過ぎた。今のままの苛酷な待遇が一向に改善されないのであれば、あとは
 玉砕するか、前線から離脱するか
しか道は残っていない。

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