パトリシア・コーンウェル『検屍官』シリーズ続編が出ないわけ
講談社の年末ドル箱のシリーズ翻訳小説だった
パトリシア・コーンウェル『検屍官』シリーズ
なのだが、最近続編が出ていないようだ。
去年の11月頃から、突然FOX/FOX crime/AXNなどの
アメリカの犯罪モノドラマ
に嵌ったのだが、よく見ていると
かつてパトリシア・コーンウェルが『検屍官』シリーズで描写していた鑑識の手技
が、
家庭で見られるドラマで再現されている
のである。それも、『検屍官』シリーズでは、
あたかも大事のように描写されていた「鑑識の上級テクニック」
が、
ドラマではごく普通の一こまとして流れている
のである。
これじゃあ
大量のリサーチャーを雇って『検屍官』シリーズを書き続けるメリットはない
よなあ。
なおかつ、テレビ局の方が、資金にモノを言わせて、
より先端的な鑑識手法
を繰り出してきているし、『検屍官』シリーズでは
スカーペッタがなんでも中心
だけど、TVのこの手の犯罪モノは
チームによる解決がメイン
だ。
まさに、時流は
パトリシア・コーンウェルの「経験」やリサーチを追い越してしまった
わけで、
小説としてこれから何か新しいことが出来るか
というと、結構難しい。
だってさあ、"BONES"あたりだと
腐乱死体の詳細な描写をビジュアルでやってしまう
わけで、パトリシア・コーンウェルが『検屍官』シリーズを書き始めた頃は
さすがにTVじゃ放映できないだろう
というような場面が
あっさりと、特殊技術などでTVドラマで再現されている
のである。最近見た
"BONES"第三シリーズの第14話
なんて
腐乱死体の頭蓋骨から溶け落ちる目玉に虫が群がっている
という極めてリアルなグロいシーンを流していた。『検屍官』シリーズがわりとよく取り上げた
性犯罪の被害者
は、"LAW & ORDER SVU"とか"CSI"の各シリーズなんかに普通に出てくる。
そういう意味では
検視と鑑識について、新たに文字で何かやろうとする
のは、難しい時代になっちゃってるわけで、そもそも最初の物語世界を破壊して続けようとした最近の『検屍官』シリーズは、
歴史的役目は終わっちゃった
ってことなんだろうなあ。
突然若返ったケイ・スカーペッタよりも、テレビシリーズのBONES(テンペランス・ブレナン)の方が、よっぽど若々しくて、ある部分は欠落していて、共感が持ちやすいだろうしなあ。
ともかくも
一人の主人公にあれこれ詰め込む『検屍官』シリーズの手法
は、
優れた才能が結集して鑑識活動に当たるTVシリーズ
よりは、時代遅れになった、ってことだな。
| 固定リンク
« ネットのウイルスを監視するIPA(独立行政法人 情報処理機構)職員、Winny/Shareの殺人系ウイルス(通称 シャレタマ)に感染し、個人情報をネットにばらまく(その11)IPA職員の流出させたファイルがマスコミや野党へ | トップページ | 栗山千明ファン必見! NHK土曜時代劇「浪花の華」@総合 土曜日19:30-20:00 »
コメント
その昔、読んでましたが、あまりにマンネリ化してしまったので、途中で読むのやめちゃいました。
あまりに主人公以外が悪人だらけで...。
投稿: physician | 2009-01-11 01:01
古い記事へのコメントで恐縮ですが。
邦訳は15作目の「異邦人」までしか出ていないようですが、原著ではその後1作刊行されており、もうすぐさらなる続編も刊行されるようです。なぜ邦訳のほうがストップしているのかが気になるところですが、貴殿のおっしゃることも理由のひとつかもしれませんね。
投稿: しつこいファン | 2009-09-24 02:11
しつこいファンさんも書いていらっしゃいますが、続編は出てますよ。
2008年に"Scarpetta" --- 今これを原文で読んでいます♪
2009年に"Scarpetta Factor" --- 10月20日発売で、予約しました。
日本で訳本が出ないのは、いつも翻訳を担当していらっしゃる相原真理子さんの都合でしょうかねぇ。
活字で読むのと映像で見る楽しさは、全く違うと思います。
簡単なひとつの例をあげれば、
目で見てしまうと自分の想像力は使えませんが、活字で読むと自分の世界が頭に広がる楽しみがあります。
そのほかにも、活字は活字、映像は映像で、それぞれの良さがあると思います。
映像が進んだから、コーンウェルの本に魅力がなくなった・・・というのは、
「活字を読む」というたのしさを知らないで、ただ内容だけで読んでいる人だと思います。
そういう人は、コーンウェルがどうのこうのより、ただ、本離れしていくんでしょうねぇ。
投稿: Lucy | 2009-10-08 19:58