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2009-04-19

「マスコミたらい回し」とは?(その138)もし記者が取材中に倒れたとして、そばにいる他人が迅速に救命措置をすぐ取ってくれると信じているとしたら不思議

2009-04-18 救急医療破壊報道 宮崎日向心肺停止搬送事例の謎 救急隊の連絡の不手際が「7病院受け入れ不能」の原因と思われるのに病院が叩かれる不思議「救急隊からの連絡は、死亡していると思われるんだが」
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2009/04/7-65bf.html
の続き。

宮崎の
 「救急隊は、死んでるだろうと判断してるけど、死亡確認のために搬送依頼して断られた」件がなぜか「救命可能な人を救命可能な時間内に搬送できなかった」話にすり替わっている事例
は、
 救急隊がマスコミに公表した
らしい。
西日本新聞より。


6病院が拒否、死亡 救急搬送、心肺停止の男性 宮崎県日向市
2009年4月17日 13:33

 宮崎県日向市で乗用車を運転中に心疾患を起こしたとみられる同県門川町の男性(65)が同市内の6カ所の病院から救急搬送の受け入れを拒否されていたことが17日、分かった。男性は約一時間半後に別の病院に運ばれたが、死亡が確認された。同市消防本部が明らかにした

 市消防本部などによると、今月4日午後7時40分ごろ、日向市日知屋で通行人が脱輪した車を見つけ、119番通報。救急車が約8分後に到着したが、運転席にいた男性はすでに心肺停止状態で、救急隊員が心臓マッサージをしながら搬送する病院を探した。

 しかし、同市内で救急病院の指定を受けている3カ所の病院から「重症者用ベッドに空きがない」などとして受け入れを拒否された。このため、日向市から離れた県立延岡病院(延岡市)に連絡。受け入れる意思は示されたが、搬送時間がかかるため、まず日向市内で探すよう求められ、再び同市内で受け入れ病院を探したが、別の3カ所の病院から断られたという。

 最終的に男性は現場から約15キロ離れた同市立東郷病院に運ばれたが、午後9時15分、急性心不全で死亡が確認された。同市消防本部は「搬送の遅れと、死亡との因果関係は分からない」としている。

=2009/04/17付 西日本新聞夕刊=

さてね、
 死亡していると思われるけど死亡確認お願いします
がどうして
 救命可能な人を救命できなかった
に化けるのか。だいたいの理由が見えてきますね。
非常に悪く勘ぐれば
 救急隊が連絡ミスをしたのではない
ということを言いたいがために、
 一生懸命搬送したけど助からなかった
というポーズを公表したということじゃないのか?

なぜ、救急隊が
 明らかに脳死のタイムリミットを過ぎていると思われる、蘇生が絶望的に難しい患者さんの搬送を「救命可能なニュアンス」で公表
するのか、甚だ疑問で、要するに
 今後は搬送依頼内容を病院に信頼されなくても構わない
ということなんだろうか。

この手の
 救急隊が自分たちは「最善を尽くした」とポーズを取って病院を非難させることになる公表
をするのは、なにかしら原因があるだろう。
年度初めの事例なので、いろいろと考えてしまうな。まさか、消防本部のトップなどエライ人が代わったばっかりだったとか、そういう「政治的理由」じゃないだろうな。

で、非常にこれも疑問なんだけど
 しつこく取材活動をしていた記者が突然倒れた場合
に、
 すぐに救命に当たってくれる「親切なヒト」は現れるか
ということなのだ。今回のような
 心肺停止
であれば、
 倒れたらすぐに救命しないと、まず助からないし、助かっても多くは脳障害が残り、社会復帰どころか、自立した生活自体が難しい
わけで、結果はどうなろうとも、迅速な救命が必要だ。
しかし、日本には
 善きサマリア人の法
はない。「善きサマリア人の法」は、よく知られているように
 善意を以て救命活動に当たって、不幸にも失敗した場合、救命に当たった人はその結果の責任を問われない法
のことだ。これは日本では認められていない。
だから、救命活動をして、助かればいいけど、もしも助からなかったり、重い脳障害などがのこったら、
 救命活動をした人が「適切な救命活動をしなかった」として訴えられる恐れ
があるのだ。

マスコミ人は身内に甘い上に、何かあれば
 自分の所属するメディアをフル回転してキャンペーンを張る
ことも、一般市民では到底できない力業で
 警察を動かす
ことも、みんな知っている。
目の前でぶっ倒れている記者を助けようとして、
 もし、助からなかったり、よくない結果だったら、次に何が起こるか
は、これまでの例が示している。
少なくとも、善意で救命活動をした人が、イヤな思いをすることは間違いない。

不健康な毎日を送る記者達が、ある日突然現場で倒れたら、誰か助けてくれるだろうか。
今のような
 医療行為が成功して当たり前、失敗したらそれは「法に照らして処罰の対象」もしくは「社会的制裁を加える」
という報道姿勢が続く限り、
 失敗するくらいなら、救護できないと手を出さない方がマシ
と、周囲の人が思っても仕方がないだろうな。
 成功の見込みが万全ではないことを無理にやらない
事は、不作為にはならないだろうし、救命にはある程度の熟達が必要だ。自分の技量が不足していると思ったなら、普通は手を出さない。
 救命しようとした人が訴えられる
ことはあっても
 何もしなかった人たちを訴えるのは難しい
だろう。

ま、日本人はお人好しが多いから、救命した人が恨まれるかも知れない危険があっても、それを顧みずに救命措置を施してくれる人は現れるかも知れないけどね。

マスコミ関係者は
 自分は、一般市民には信頼されてないかも知れない
とは、一度も考えたことはなさそうだ。もし、
 信頼
があるとすれば、それはまず
 社名に対する信頼
であり
 名刺に対する信頼
だ。
名刺は命までは保証してくれないだろう。

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コメント

>何もしなかった人たちを訴えるのは難しい

その場にいた人々は、何もせずに病人を見捨てて立ち去った等、幾らでも、書きそうな気が...

投稿: att460 | 2009-04-19 11:31

善意で救命措置を始めたら、観衆が携帯で記念撮影でしょう
あとで裁判になったら、その写真が「この措置が適切でなかった」と証拠採用されるね

投稿: こんた | 2009-04-19 22:41

最近は、AED講習がはやっていますが
もし救命に失敗して訴えられたら、
救命に失敗したら訴えられることを教えなかったと
講習の講師&主催者を訴えるべきなんでしょうね。

投稿: nyamaju | 2009-04-20 00:24

いつも興味深く拝読しております。
ところで本日4月20日は珊瑚記念日です。
http://asahilog.hp.infoseek.co.jp/
是非多くの方々に思い出していただきたくご迷惑と承知しながらお知らせ申し上げます。

>日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない。だけどこれは、
>将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。
>百年単位で育ってきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、
>すさんだ心の……。
> にしても、一体「K・Y」ってだれだ。

捏造、自虐、お前が(ry等々、今にして思えば全ての要素が詰め込まれた、味わいの深い文章です。

投稿: アルゴン金 | 2009-04-20 11:42

2chの一部を補足資料のために投稿しておきます。

65 :名無しさん@九周年:2009/04/17(金) 13:05:28 ID:4+DWfN9lO
…あの~
…一応、当事者の一人なんですが


救急隊からの連絡は
「発見時既に死亡していると思われたが、一応蘇生と死亡確認だけでもしてくれんか?」だったぞ?

投稿: なんちゃって救急医 | 2009-04-21 08:37

>同市消防本部は「搬送の遅れと、死亡との因果関係は分からない」としている。
発見時にすでに死亡状態(それを、心肺停止なんて書くから話がややこしくなる。これは、熱血バカの救急医たちが「DOA
(Dead on arrive;到着時死亡)を海外かぶれして「CPA(cardio pulmonary arrest;心肺停止(状態)」と言い出したせいもあるが。)であったのだから、死体移送の遅れは患者の生命予後に全く影響していない、と言い切らない時点で、田舎消防の考え方がはっきりしましたね。たいへん勉強になるいい事例です。

投稿: 東大寺 | 2009-04-21 18:01

すみません、前エントリーの存在を確認せずに、上記コメントを入れました。

まあ、私も、まず助かる見込みのない心肺停止症例に対して心肺蘇生処置を行います。(行わざるを得ません。だって、どうせ助かりませんなんて態度をとったら・・・・)

でも、いったん蘇生処置が始まったら、複数の医療スタッフが30分以上かかりきり、必然的に他の診療が一時停止、ましてや、他の救急車を新規に受けることは物理的に不可能。

死を断念しない社会の風潮が、医療リソースを逼迫しているといわざるを得ません。

救命士に死亡確認の権限を与えてもよいのではないかとさえ思います。

投稿: なんちゃって救急医 | 2009-04-21 22:05

  聖地の田舎消防って…。
 「医者の代わりはいくらでもいる」「病院に焼きを入れました」というノリで発表しているのかしら。というか、公式記録に「焼きを入れました」って、どんだけ…。

> 千葉県松戸市消防局の元消防士の男性4人が、訓練での過酷な「しごき」や 「いじめ」を受けて退職を余儀なくされたなどとして、市に計1210万円の損害賠償を求めた訴訟を地裁松戸支部に起こした。

 訴状によると、原告らは2005年4月採用。06年3月27日から 約2か月間、10人で参加した市独自の集中訓練で、指導者の判断により 過酷な「しごき」などを受け、原告1人が訓練期間中に退職。他の原告3人も 訓練で受けた心の傷や、その後の職場でのいじめなどの影響で07~08年に相次いで退職したとしている。(中略)

 一方、原告側の請求で地裁支部が証拠保全決定した06年の訓練に関する指導記録では、「焼き入れました」「代わりはいくらでもいる」などの記述が 残されていたほか、発熱や足の負傷などのあった原告などの消防士にも厳しい訓練を実施していた実態が明らかになり、市は「行き過ぎがあったとみられる」と して、関係者の処分を検討している。 (読売新聞より引用) 

投稿: 東大寺 | 2009-04-23 01:14

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