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2009-05-26

豚インフルエンザ 押谷仁東北大教授「新型インフルエンザではウイルス性肺炎が死因となり、亡くなるのは子どもと20代〜50代の成人という若い世代で、基礎疾患がなくても少数が重症化。日本で死亡例が出るとしたらこれから1カ月後。その時重症者を管理するICUのベッドと人工呼吸器は確実に不足。ウイルス性肺炎でARDS(急性呼吸窮迫症候群)を起こすとほとんど救命できない」@5/20 緊急報告会講演より

PCR検査に掛ける規準が曖昧なため、発生数が正確に把握できていない日本。今のところ軽症例だけで済んでおり、見かけ上の発生数は鈍化しているため、
 新型インフルエンザは終息する
という希望的観測が溢れている。
これは疫学的に正しいのか。過去のどのインフルエンザも、
 中心となる爆発的流行期間は4週間
と言われている。日本国内での感染例が報告されてから、まだ4週間経っていない。

WHOのアドバイザーを務める押谷仁東北大教授が5/20の緊急報告会で講演を行っている。
その内容が『日経トレンディ』に掲載された。
押谷教授は、
 今後1カ月で、日本では死者が出る可能性があるが、その時重症者を治療するベッドは不足する
と、日本の新型インフルエンザ対策の不備を指摘した。
以下に適宜引用する。


WHOアドバイザーが語る新型インフルエンザ対策で今すべきこと
2009年05月25日

 2009年5月20日、WHO(世界保健機関)で新型インフルエンザ対策に取り組む押谷 仁(おしたに・ひとし)東北大学教授が、一時帰国の機会に緊急報告会*を開催。新型インフルエンザの現状と、これからの課題について語った。
 今回の新型インフルエンザについて、まだ分かっていないことも多いが、見えてきたものも多い。今分かっていることは何か、これからどうするべきなのか。押谷教授の講演から紹介しよう。
 インフルエンザの被害は、「どのくらい感染が広がりやすいか」と「どのくらい重い症状がでるか」という2つのファクターを掛け合わせて決まる。今回の新型インフルエンザは弱毒性だといわれているが、感染力は高い。また割合は低くても一定の割合で重症化する例があり、しかも重症化すると治療が非常に困難だ。
 いたずらに恐怖心をあおるのはよくないが、「軽症だからかかっても大丈夫」とみんなが油断すれば、リスクが高い人を中心に、相当数の死者が出る可能性がある。若い世代に重症化する人が多いことも、社会的にはインパクトが大きいだろう。
 今回の新型インフルエンザは通常のインフルエンザよりもやや潜伏期間が長く、1日から7日といわれている。また軽症で熱も出ないという人が、かなり多い。症状が出なくて入国時のチェックなどをすり抜けてしまうことが、感染を拡大させている。
(略)
 現時点では、かなりのスピードで感染が広がっていて、ここ数週間から数カ月で世界的に感染拡大が起こるのは、避けられない状況だ。
(略)
 関西では、おそらくゴールデンウィークかゴールデンウィーク明けくらいに数人が起点になって感染が拡大したと考えられる。2週間で二百数十人に広がったことになるが、軽症例が見逃されていると考えれば、現在の感染者数の実態は、おそらく1000人を超えている
 通常のインフルエンザと同じような規模で流行が起きるとすれば、日本で500万人から1000万人が感染する。また、もし一気にパンデミックに突入すると、日本でも2000万人から3000万人が感染するというのも、考えられない話ではない。
(略)
 今重症化しているのは、小さな子どもと20代から50代までの成人だ。10代の感染例は多いが、今のところ重症化例は少ない。
 子どもは、たいていは基礎疾患を持った子どもで、成人も、糖尿病や心臓病の基礎疾患を持った人が多い。ぜんそくもかなり大きな危険因子といわれている。それから妊婦、特に妊娠後期の妊婦が重症化しやすい。このような人たちは、通常のインフルエンザでもハイリスクといわれている。
 これ以外に、実はもう一つ重症化しているグループがいる。若くて基礎疾患を持たない健康な人達が、割合は少ないが重症化しているのだ。どのくらいの割合かまだ正確にはわかっていないが、確かにそういう人たちがいる。
(略)
▼重症化が見られる例
・先天性疾患など基礎疾患を持つ子ども
・糖尿病、心臓病、喘息などの疾患を持つ20代から50代の成人
・妊婦、特に妊娠後期の人
基礎疾患がない健康な20代から50代の成人

 重症化の頻度は低いが、重症化した人達は、我々が恐れていたH5N1型に近い状態になる。正確な病態はまだわかっていないが、基本的にはウイルス性肺炎で、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)という重症の肺の障害を起こす。ウイルス性肺炎は、現在日本や米国の高度な医療でも、治療が非常にむずかしいARDSになるとX線検査では肺が真っ白になる。肺に空気が入っていかなくなり、呼吸不全で亡くなっていく。このような状態になってから抗ウイルス薬で治療しても、救命は難しい
 弱毒性といわれるのに、なぜこのようなことが起こるのか。若い人達はウイルスに対してほとんど免疫を持っていない。そのため、ウイルスが体内に入ったとき、呼吸器を中心として、おそらく通常のインフルエンザよりもずっと速く体内で増殖する。それをコントロールできなくなった人達が重症化していると考えれば、説明ができると考えている。
(略)
 今の日本はニューヨークと同じで、このまま数万人規模の感染に拡大すると、重症化する人が出てくるだろう。その中から死亡者が出てくるのは、1カ月くらい先になる。致死率が通常のインフルエンザと同じ0.1%だとしても、100万人の小流行で1000人が亡くなり、1000万人が感染すると1万人が亡くなることになる。
 通常の季節性インフルエンザでも1万人から3万人が亡くなることは、時々起きている。しかし、季節性インフルエンザで亡くなるのは、非常に重篤な基礎疾患を持っていたり、80代や90代の高齢の人達だ。また、大半はインフルエンザをきっかけに脳梗塞や心筋梗塞を起こして死亡するケースで、インフルエンザが直接の死因となることは少ない
 今回のウイルスはそれとは異なり、ウイルス性の肺炎で、インフルエンザが直接の死因になる。しかも亡くなっているのは、子どもと20代から50代の成人だ。死亡数は同じでも、より若い世代が亡くなれば、社会的なインパクトが違うと考える。
 現在の日本が抱える医療の弱点を突かれて、被害が拡大する恐れがある。
 重症化してウイルス性肺炎を起こした人はICU(集中治療室)で人工呼吸器を使う必要がある。しかし日本では医療の効率化が進められ、ICUのベッド数や人工呼吸器の数が、非常に限られている。地域によってはICUがないところがあり、都市圏でも十分とは言えない
 重症化しやすい人には妊婦が含まれているが、現在は産科医不足が大きな問題になっている。この中で重症化する妊婦が続出したら、どうなるか。また、妊婦が重症化して帝王切開をした場合、未熟児のためのNICU(新生児ICU)が必要だが、NICUもいまの日本では不足している。
 世界的には、どのような影響があるだろうか。今後、発展途上国に感染が広がると、大きな被害が起こる可能性がある。今回、高齢者は重症化しにくいが、途上国では高齢者の割合は少ない。また途上国では、大人も子どもも基礎疾患を持ちながら、コントロールされていない人達が大勢いる。医療体制が不十分で抗ウイルス剤の備蓄はなく、ワクチン生産体制もない。もし年末にかけて大きな流行が起こるとすれば、先進国ではワクチン供給が間に合うが、途上国へは行き渡らない。
(略)
 鳥インフルエンザで心配されていたように、日本で何十万人も死ぬということは、今回のインフルエンザでは、おそらくない。ただ、どうしても一定の割合で重症化する人がいる。
 重症化しやすいハイリスクの人たちは、できるだけ感染しないように気をつけるべきだ。また、リスクが高くない人も、感染を拡大しないように、努力しよう。もし、みんなが「軽症だからかかってもかまわない」と思っていると、感染がどんどん広がってしまう。割合は少なくても分母が大きくなると、重症化する人も増えてくる。すると、その中に自分の家族や知人が含まれてくるかもしれない。感染しないように手洗いをするとか、感染したら外出しないなど、みんなで地域社会を守るために、一人ひとりが感染を拡大させない努力をすることが重要だ。

政府は沈静化を狙っているのかも知れないが、
 死亡者が出るとしたらこれからの話
であり、今のような
 終息ムードを煽って、感染への警戒を緩めるマスコミ報道
が続くと
 これから感染者数の拡大と共に一気に重症者が増え、その時はICUも人工呼吸器もNICUも足りない
ことになる。
怖いのは
 インフルエンザウイルスが原因となる肺炎に罹るヒトが少ないとはいえ一定数いる
ということで、こうなると厳重な管理の上、濃厚医療を施しても助からない場合が少なくないことなのだ。
押谷教授が懸念するとおりに
 比較的体力があり、季節性インフルエンザでは死亡しにくいはずの基礎疾患のない20〜50代の成人が、治療の手を尽くしたのに死亡
ということになると、インフルエンザによる肺炎の管理の難しさを知らないマスコミが
 あたかも「病院の落ち度があった」ように騒ぎ立てる
だろう。
もし、そんな報道の暴力が巻き起こることになったら、最前線の現場はもう持ちこたえられない。

そうでなくても
 ICUも人工呼吸器もNICUも今のままでも足りない
のだ。
 ICUや人工呼吸器、NICUを必要としているのは新型インフルエンザの患者さんだけではない
のである。つまり
 通常の医療体制でもICUや人工呼吸器、NICUは不足しているのに、新たに新型インフルエンザというファクターが増えて、更に不足に拍車を掛ける
ことになるのだ。
ICUも人工呼吸器もNICUもこれ以上増やすことは出来ない。
 たとえ機械や設備を増やしても、そこで治療に当たる医師を始めとする医療スタッフがいない
のだ。

医療崩壊の最後の引き金は、新型インフルエンザが引くことになる可能性がある。

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» 新型インフルエンザと産婦人科 [産科医療のこれから]
(関連目次)→新型インフルエンザについても集めてみましたo(^-^)o      [続きを読む]

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