慌てると碌でない
文字を手で書くのが苦手だ。目が悪いのと、手がどうもちゃんと動いてないらしいのと、その両方が原因。見えない方の目も右目、運動に軽い障碍があるらしいのも右側。まったく本人は気がついてなかったのだが、学部の頃、元鍼灸師でリハビリの先生をやってた先輩が
お前、右側に軽い痙攣があるな
と気がついた。道理で子どもの頃、異様に不器用だった筈だ。軽い痙攣はたぶん生まれつきなんだろうと思うんだけど、それを生活できるレベルにまで下げるように、知らずにリハビリしていたのが、子どもの頃だったってことだもん。親や身内には、あまりにも不器用でできないのが、わざとふざけてやらないのだと思われたらしく、殴られたり、箸で叩かれたりしたけど、まあ、まさか目の前の子どもの身体の右側が運動すると軽い痙攣を起こすなんて、普通は気がつかないもんなあ。今でも、精神的なショックがあると、とたんに右手がひどく震えて字が書けなくなる。痙攣を鎮めるには、ちょっとした手間が掛かるので、パソコンが主流になって、右手でペンを持たなくてもよくなったのはありがたい。
そんなこんなで、本当は少しは書道の勉強もしたいのだが、思うに任せない。祖母も叔母も、書家といっていい腕前だから、筆でもうちょっとまともな字を書きたいのだが、いつも途中で挫折してしまう。
今の商売だと、楷書だけでなく、行書・草書・隷書・篆文くらいは読めないと時々困ったことになる。特に篆文は蔵書印を解読するときに必要な知識なのだが、書道をやらないもので、その辺りの知識がごろっと抜け落ちている。『五體字類』でお茶を濁すより他はない。
3月の台湾での調査でも、うっかり『五體字類』を忘れていったので、難儀した。
今朝、半分寝ぼけながら、ベッドでマシンを立ち上げたら、絵巻物の研究者である旧友から
落款を読んで欲しい
という依頼が来ていた。絵巻物だと、仮名主体だもんなあ。
寝ぼけつつ、ざっと見て釈文を送った。辞書を引いてあとで確認したら、また返事すると書き添えた。
さて、本格的に起き出してから、『五體字類』を確認すると、やっぱり一文字間違って読んでいたので、訂正を送った。訂正を送るときに、元の画像から問題の文字を切り抜いて、どう読むかを図説したものをPhotoshopで作った。そこまでは良かったんだけど、画像を加工した後、セーブしないでそのまま送ったので、加工前の画像を送ってしまった。間抜けすぎるよな。もう一度、セーブし直した画像を送り直した。
釈文を間違ったから、慌てて訂正を送ったのが良くなかったな。慌てると碌でない。
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