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2009-11-02

豚インフルエンザ 死亡した2歳児へのリレンザ投与って?→厚労省は点滴用抗インフルエンザ薬「ペラミビル」の早期承認を→リレンザは懸濁液にして吸入が可能だが普通はタミフルドライシロップ→追記あり

亡くなられたお子さんのご冥福をお祈り致します。

2歳の子どもが新型インフルエンザで亡くなった。
朝日の記事を読むと、次のように書いてある。


新型インフルで盛岡の2歳女児死亡 国内最年少

2009年11月1日18時27分

 盛岡市は1日、新型インフルエンザに感染した盛岡市在住の女児(2)が同日死亡した、と発表した。厚生労働省によると、新型インフルに感染した患者や感染が疑われた患者の死亡例としては国内最年少。女児に基礎疾患はなかった。
 盛岡市保健所によると、女児は10月29日午後8時ごろに体温が39度台まで上がり、まもなく呼吸が停止した。救急車で盛岡市内の病院に搬送されたが、1日午前6時20分に多臓器不全で死亡が確認された。

この女の子は
 10/29夜に呼吸停止が起きたために、搬送された
のである。ところが、地元の河北新報には次のような不思議なことが書いてある。


新型インフル 盛岡の2歳女児死亡 国内最年少の死者

 盛岡市保健所は1日、新型インフルエンザに感染した盛岡市の女児(2)が同日、死亡したと発表した。保健所によると、女児に基礎疾患はなかった。新型インフルによる死者としては国内最年少。岩手県内の死者は初めて。
 保健所によると、女児は10月29日夜、39度台の発熱で市内の病院に救急搬送され、簡易検査でA型陽性と判明したためリレンザの投与を受けた。30日の詳細(PCR)検査で新型インフルエンザ感染が確認された。1日早朝、多臓器不全のため死亡した。感染経路は不明という。
(以下略)

朝日では
 呼吸停止で搬送
とあり、搬送後も呼吸器の状態が普通ではなかったのではないかと疑われるのだが、河北新報では
 リレンザの投与を受けた
と書いてある。リレンザは
 強く吸い込む必要がある薬剤
だ。わたしも2000年に中国・貴州でインフルエンザに感染したときに服用したが、吸い込み方にはコツがあり、かなり強く吸い込む必要がある。大人でも、リレンザが上手に吸い込めなかったために、ウイルスの増殖を抑えられなかったのではないかと疑われる死亡例が最近あった。沖縄で24歳の女性が亡くなった事例だ。9/16付読売より。


持病ない24歳死亡…沖縄、新型インフル感染女性

 沖縄県は15日、新型インフルエンザに感染した同県南風原(はえばる)町の女性(24)が死亡したと発表した。女性に持病はなく、基礎疾患のない人が新型インフルエンザに感染し、重症化して死亡した初のケースとみられる。厚生労働省によると、国内の死者は疑い例を含めて14人目で20歳代は初めて。これまでの死者は慢性腎不全などの持病があったケースがほとんどだった。

 沖縄県によると、女性は8月26日に38・8度の熱が出て、民間病院での簡易検査でA型と診断された。自宅で治療薬リレンザを服用して療養したが、呼吸困難に陥ったため、同31日に再受診。ウイルス性肺炎の発症が確認され、県立病院に緊急入院した。同日、PCR検査(遺伝子検査)で新型に感染していることが判明。集中治療室で人工呼吸器を装着して治療を受けたが、くも膜下出血を起こし、15日午前11時過ぎに死亡した。同県医務課は、新型インフルエンザが悪化し、急性肺炎とくも膜下出血を併発したとみている。

 同課によると、女性は母親と弟の3人暮らし。母親と弟も同時期に発症したが、タミフルを服用し回復。女性はカプセル状の薬が苦手だったため、民間病院が粉末状の吸入薬リレンザを処方したという。同課は「リレンザは吸入力が弱いと、十分効果が得られないリスクがある」と説明している。
(以下略)

自発呼吸がある段階の大人でも、リレンザの吸入は難しいことがあるのだ。

この点について、internalmedicine先生がblog「内科開業医のお勉強日記」で疑問を呈しておられる。詳しくは以下を御覧下さい。
 乳児または4歳以下の幼児に対するリレンザ投与って・・・

なぜ、
 小さい子どもでは吸入が難しいと思われるリレンザを盛岡の病院が投与したか
は、わからないし、
 確実にリレンザの効果を得られる「方法」がどういうものであったか
も不明だ。それとも
 子どもにタミフルは禁忌、という判断でリレンザを使った
ということなのだろうか。

呼吸停止で搬送されているから、搬送された時点で、
 カプセル剤のタミフルの投与は無理
という判断だったのか。それならなおのこと
 強く吸い込む必要があるリレンザの投与も無理
だったのではなかったのかと考えられる。

現在、塩野義が承認申請準備中の
 点滴用抗インフルエンザ薬「ペラミビル」
が間に合っていれば、あるいは救えたかも知れないと思うと胸が痛む。
ペラミビルはこんな薬剤だ。9/15付朝日より。


点滴用インフル新薬、初の国産申請へ タミフル並み効能

2009年9月15日10時49分

 【ワシントン=勝田敏彦】抗インフルエンザ薬のタミフル、リレンザに次ぐ「第3の薬」として期待される「ペラミビル」ついて、塩野義製薬(大阪市)は、サンフランシスコで開かれた国際会議で「1回の点滴でタミフルを5日間飲むのと同程度の効き目が臨床試験(治験)で得られた」と報告した。11月までに厚生労働省に承認申請して、来秋の発売をめざす

 日本はタミフルとリレンザを備蓄しているが、いずれも輸入に頼っている。承認されれば、初の国産のインフルエンザ薬になる。タミフルには、耐性を持つ新型の豚インフルエンザウイルスがあることが報告されている。

 飲み薬のタミフル、吸入薬のリレンザに対して、ペラミビルは点滴薬で、重症患者に対しても投与できることでも関心を集めてきた。

 ペラミビルは、ウイルスの増殖を妨げる働きがあり、米製薬会社がインフルエンザ用の筋肉注射薬として開発し、実験では新型インフルに対して効果を示すことがわかっている。塩野義製薬は点滴薬として開発中で、日本、韓国、台湾で1099人の季節性インフルエンザ患者を対象にした最終段階の試験を行った。

 その結果、症状の回復までかかった時間は、タミフルとほぼ同じかやや短い時間だった。

 ペラミビルは06年、米食品医薬品局(FDA)から承認を急ぐべき薬の一つとして指定を受けている。

いまのスケジュールで行くと、ペラミビルが実際に使われるようになるのは、来年秋だ。
厚労省は、出来る限り早く、承認を検討して欲しい。もっとも
 服用も吸入もできない「弱い人間」は「新型インフルエンザで死んでも構わない」
と厚労省が考えているなら、当然不作為が起きて、承認までには果てしなく時間がかかるだろう。

長妻厚労相は
 新型インフルエンザ対策にはほとんど冷淡なのではないか
と思われるくらい、ワクチン接種のスケジュールが滅茶苦茶になっている。政権交代が、そうでなくても混乱する新型インフルエンザ対策の混乱に拍車を掛けているのだが、
 医療について不得意
なのは分かったから
 人命のかかっているスケジュールは出来る限り早期に交通整理
して頂きたい。このまま混乱が続くようだと
 「ミスター年金」長妻厚労相は、新型インフルエンザには無策で、みすみす多くの患者を見殺しにした
と言われかねない状況だ。だいたい
 年金担当大臣じゃ「役不足」だから「厚労相にしろ」
とねじ込んだと噂されている長妻厚労相である。当初の厚労相候補を蹴散らしてまで
 厚労相の座に就いたからには、責任を全う
して頂かないと困りますがね。そうでなくても
 厚労省の官僚は、長妻厚労相の足を引っ張ろうと画策している
と言われているわけで、
 このまま厚労官僚の術中に陥る
ようでは、
 国民の福祉が、著しく阻害される
のである。しっかりしてくれ、長妻厚労相。
反長妻派の厚労官僚は
 長妻厚労相のクビを飛ばすためなら、国民の100人や200人、新型インフルエンザで死んでも構わない
くらいに思っているんじゃないのか。くだらない政争のために、国民の健康と福祉をあずかる官庁の官僚の不作為が起き、みすみす国民の命が損なわれるようなことが今後起きるのかも知れないと思うと、心が暗くなりますな。

続き。(12:21)
suzan先生から貴重なコメントを頂いたので再掲する。


呼吸器がついている場合、呼吸器を使って気管内に薬剤投与する場合があります。
ぜんそく合併患者に全身麻酔の手術を行っている最中に発作が起きた場合など、
麻酔科医師が粉薬を投与している場面を見たことがありますので。

意識がない患者さんでは確かに錠剤は投与できないですね。
粉薬であるリレンザ使用も、他に方法があれば行わなかったでしょう。

suzan先生、ご教示ありがとうございました。
 粉薬であるリレンザしか、意識がない状態だと選択肢がない
というのは、実に難しい状況ですよね。

また、Seisan先生からも、貴重なコメントを頂いたので再掲する。


リレンザの投与ですが、あの微粉末を生理食塩水で溶解(正確には懸濁と言いますが)して、吸入器で吸入させるという方法があります。
一応、適用外の用法および、適用年齢ではありませんが、有効であるという報告は複数見られます。
特に、全身状態が悪く、内服困難例では有効です。あるいは、薬を飲んでくれない乳幼児などには有効ですね。
ただ、ペラミビルも当初は「小児への適用なし」になる可能性が高いと考えます(使えない、ではないのがややこしいところで…(^_^;))
ちなみに、タミフルは10歳代が慎重投与であり、1歳から10歳未満までは適用があります。20歳以上の成人にも適用があります。今年は10代でも使用可能と言われています。
リレンザは6歳以上で適用ありです。
また、ペラミビルも待ち遠しい薬ですが、作用機序はタミフル・リレンザと変わらない「ノイラミニターゼ合成阻害薬」になります。つまりいずれは耐性の心配が必要になる。
それに比べてT-705(治験ほぼ終了)という薬は、インフルエンザウイルスの増殖ができなくなるようにする薬なので、耐性が理論上できない(耐性ウイルスが発生しない)というメリットがあります。これも早ければ来年には出ると思います。

あと、現在の患者発生規模を考えると、インフルエンザの死亡者が43人、というのは(少なくとも日本においては)季節性インフルエンザの今までの流行と比較しても決して多くありません。年齢分布はやや低年齢に広がっているのが気になりますが。

Seisan先生、ご教示ありがとうございます。なるほど、いわゆる「裏技」のようなやり方だけど、懸濁液にする方法で吸入が可能なのですね。
ご紹介頂いた
 T-705
は、耐性ウイルスが出ないのですか。「次の決め手」として承認が待たれますね。厚労省が承認スケジュールを早めてくれるといいのですが。
Seisan先生のご指摘通り、今のところの死亡数は多いとは言えないでしょうが、医療資源が疲弊する恐れのある今後はどうなるか、ちょっと気がかりです。今は
 現場のぎりぎりの努力で、なんとか早期に手を打てているのが功を奏している
のではないかと推察しています。現場で治療に当たられている先生方、医療スタッフの方々には頭が下がります。

(追記 11/3 10:32)
kiku先生から貴重なコメントを頂いたので再掲する。


2才児ならタミフルのドライシロップが普通だろうと思うのですが…嚥下不能でも懸濁して胃管から流せばいいだけだし。

kiku先生、ご教示ありがとうございます。
確かに、タミフルドライシロップがあるのに、なぜ、リレンザを投与したかはよくわかりませんね。

こちらは札幌のNPOが運営している「ウェブシティさっぽろ」より。
 子どものインフルエンザとタミフル・ドライシロップ

普通の患者さんにタミフルドライシロップが処方されたときの与え方が説明されている。
(追記おわり)
(さらに追記 11/4 02:30)
ニート小児科医先生から貴重なコメントを頂いたので再掲する。ニート小児科医先生、ご教示ありがとうございます。


リレンザは今のところ耐性豚インフルエンザウイルスの報告がない、季節性インフルエンザに関して言えば解熱まで若干期間が短いなどタミフルに比べてもメリットがありますし、この女の子のように急激に多臓器不全になるようでは胃に投与しても吸収してくれない(吐いてしまう、既に消化管に出血してしまっているなど)可能性も高そうです。短時間で多臓器不全になるような劇症例では、おそらくどのような治療でも厳しいだろうとは思います…詳細が分からない報道しか出ていませんのでこれ以上は何とも言えません。

なるほど、呼吸停止で搬送された後の状態が、かなり思わしくない場合、ドライシロップでは、吸収できない可能性もあるのですね。
(追記おわり)

今回の新型インフルエンザでは、
 悪化する場合は、急速に症状が重くなるのが特徴
で、不幸にして亡くなられた2歳のお嬢ちゃんも、その例に漏れなかった。早急な抗インフルエンザ薬の投与で、ウイルスの増殖を抑えることが鍵を握るようなのだが、このお嬢ちゃんは呼吸停止の段階で、すでにかなりの量のインフルエンザウイルスが肺で増殖していたかも知れない。もし、そうだったとすると、まだ承認されてないペラミビルが使えたとしても、抗インフルエンザ薬の出番はもうほとんどなかったと言っていいだろう。
治療法が限られていて、手を尽くすにも選択の余地が乏しいのが、現在の状況だ。

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コメント

呼吸器がついている場合、呼吸器を使って気管内に薬剤投与する場合があります。
ぜんそく合併患者に全身麻酔の手術を行っている最中に発作が起きた場合など、
麻酔科医師が粉薬を投与している場面を見たことがありますので。

意識がない患者さんでは確かに錠剤は投与できないですね。
粉薬であるリレンザ使用も、他に方法があれば行わなかったでしょう。

投稿: suzan | 2009-11-02 11:52

リレンザの投与ですが、あの微粉末を生理食塩水で溶解(正確には懸濁と言いますが)して、吸入器で吸入させるという方法があります。
一応、適用外の用法および、適用年齢ではありませんが、有効であるという報告は複数見られます。
特に、全身状態が悪く、内服困難例では有効です。あるいは、薬を飲んでくれない乳幼児などには有効ですね。
ただ、ペラミビルも当初は「小児への適用なし」になる可能性が高いと考えます(使えない、ではないのがややこしいところで…(^_^;))
ちなみに、タミフルは10歳代が慎重投与であり、1歳から10歳未満までは適用があります。20歳以上の成人にも適用があります。今年は10代でも使用可能と言われています。
リレンザは6歳以上で適用ありです。
また、ペラミビルも待ち遠しい薬ですが、作用機序はタミフル・リレンザと変わらない「ノイラミニターゼ合成阻害薬」になります。つまりいずれは耐性の心配が必要になる。
それに比べてT-705(治験ほぼ終了)という薬は、インフルエンザウイルスの増殖ができなくなるようにする薬なので、耐性が理論上できない(耐性ウイルスが発生しない)というメリットがあります。これも早ければ来年には出ると思います。

あと、現在の患者発生規模を考えると、インフルエンザの死亡者が43人、というのは(少なくとも日本においては)季節性インフルエンザの今までの流行と比較しても決して多くありません。年齢分布はやや低年齢に広がっているのが気になりますが。

投稿: Seisan | 2009-11-02 12:25

いつも拝見させていただいております。
私は医療は詳しくないのですが、見ているサイトでこんな話もありましたので一応コメントまで。

http://nxc.jp/tarunai/index.php?action=pages_view_main&active_action=multidatabase_view_main_detail&content_id=2870multidatabase_id=44&block_id=546#_546
http://infectious-diseases.jwatch.org/cgi/content/full/2009/1028/1

Zanamivir (Relenza) Must Not Be Given by Nebulization
(Journal Watch Infectious Diseases October 28, 2009)
(米国)ザナミビル(リレンザ)は人工呼吸器のネブライザーから投与してはならない

投稿: nni | 2009-11-03 04:03

2才児ならタミフルのドライシロップが普通だろうと思うのですが…嚥下不能でも懸濁して胃管から流せばいいだけだし。

投稿: kiku | 2009-11-03 09:51

リレンザは今のところ耐性豚インフルエンザウイルスの報告がない、季節性インフルエンザに関して言えば解熱まで若干期間が短いなどタミフルに比べてもメリットがありますし、この女の子のように急激に多臓器不全になるようでは胃に投与しても吸収してくれない(吐いてしまう、既に消化管に出血してしまっているなど)可能性も高そうです。短時間で多臓器不全になるような劇症例では、おそらくどのような治療でも厳しいだろうとは思います…詳細が分からない報道しか出ていませんのでこれ以上は何とも言えません。

投稿: ニート小児科医 | 2009-11-03 19:36

Seisan先生

リレンザは、シアル酸アナログによるノイラミニダーゼに対する拮抗阻害薬なので、
ノイラミニダーゼの合成を阻害する「ノイラミニターゼ合成阻害薬」ではなく、「ノイラミニターゼ阻害薬」ですね。

弘法も筆の誤りでしょうか?

投稿: 可愛 | 2009-11-04 22:05

短時間で多臓器不全になるような劇症例で、一か八かでリレンザを注射するような医師は日本にはいないでしょうね。結果が悪ければ、訴訟されたり、逮捕されたりのリスクがありますから。

http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2637447/4530819

投稿: kame | 2009-11-09 17:59

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