「マスコミたらい回し」とは?(その154) 一番忙しい病院は取材も受けられないからマスコミは報道しない
青森でNICUを支え、日夜闘う畏友網塚貴介先生から、意外な話を耳にした。
網塚先生の奮闘振りは、高校同期の間では知れ渡っていて、医師だろうと医師でなかろうと、みんな
頼むよ、網塚、過労で死ぬなよ
と心の底から祈っている。その網塚先生が
僕より忙しい先生が同期生にいる
というのだ。
その先生は、現在首都圏の医療崩壊地域で働いている。いくら首都圏と雖も、医療資源の疎密は甚だしく、彼の働いている地域の名を耳にすれば
ああ
と、ちょっと医療崩壊事情に詳しい方なら分かるだろうという地域だ。その地域の国公立病院で
日夜、小児科とNICUの掛け持ちで多忙を極めている
という。
彼とは高校の頃、同級生で、Tくん、と呼んでいた。だから、ここでもTくんと呼ぶ。
Tくん、大丈夫か
実に心配だ。
Tくんの出身大学は首都圏の大学ではない。たぶん、出身大学から、人事的なバックアップは望めないだろう。
国公立病院で、小児科とNICUを掛け持ちしているTくんは、わたしからすると過密勤務で健康が懸念される網塚先生から見ても
僕より余程ハードな毎日みたいです
と心配されている勤務体制らしい。とはいえ人口の多い首都圏の国公立病院の小児科ともなれば、地域から、昼夜・平日と休日とを問わず、NICUへの救急搬送を含めて、患者の子どもたちが押し寄せているだろう事は想像に難くない。
当然、あまりの多忙のために
マスコミの取材は受けてない
ようだ。取材も受けられないほどの多忙は、現場を疲弊させていることだろう。
高校の頃のTくんは、ムーミンみたいなのんびりした印象で、同級生達を和ませていた。彼が小児科に進んだことは意外ではないが、日々激烈な勤務をこなしているのかと思うと、言葉にならない。
病院のサイトを見たら、少年の頃の面影を残しているTくんが紹介されていた。
ググったら、今年1月付で、ファーストオーサーの論文が出ていた。Tくん、ホントに大丈夫か。
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コメント
むしろ、過労で倒れて欲しいくらいです
網塚先生もそうですが、この手の人が頑張る限り、普通の人は小児科やNICUには近づきません。
病院経営者には、本来解決するべき問題点が上がってこないので、”問題が無い”として無視し、先送りします
”余りの多忙”であっても、実は誰からも大した評価は受けている訳じゃないし、待遇も悪い。この手の人達がストイックに待遇改善を求めないから、下っ端は更に悲惨な目にあっても声も出せない。
目の前の患者さんばかり見ていて、将来の患者さんを救う担い手を排除しているのが今のヒューマニズムに溢れた小児科医の人達です。
美しい善意によって、医療システムの軋みのエネルギーが大震災レベルまで蓄積されていきます。
投稿: Med_Law | 2010-02-11 00:04