「マスコミたらい回し」とは?(その155) 何を今更毎日新聞岡田功記者「アメリカと比べて良質で安価な日本の医療崩壊を止めたい」しかも大阪発の記事で
毎日新聞大阪本社といえば
大淀病院産婦死亡事例記事
で、科学環境部が奈良支局と共に
新聞労連から第11回ジャーナリスト大賞の特別賞受賞
を貰って、大喜びしていたところである。この話については以下に。
2007-01-25「マスコミたらい回し」とは? (その39) 毎日新聞奈良支局、「大淀病院産婦死亡事例」の誤報垂れ流しキャンペーンで新聞労連の特別賞もらって誇らしげ 一方同紙連載中の「医療クライシス」は「新生児仮死」の医療訴訟を取り上げる
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/01/39_9ef9.html
奈良県南部の産科医療を破壊したこの一連の報道は、まさにマスコミの利益が地域住民の健康な生活を営む権利を侵害した
報道被害の典型
とも言えるモノであった。誤報が混じった第一報が全国を駆け抜け、大淀病院にメディアスクラムがかかり、産科診療がなくなったことは記憶に新しい。
さて、その
マスコミによる医療破壊報道の総本山ともいえる毎日新聞大阪本社
の
岡田功記者
は、自社の「輝かしいジャーナズムの勝利」の歴史を知らないらしく、次のようなコラムを書いている。
2/9付毎日新聞大阪版夕刊より。
憂楽帳:米国の医療米国留学中、激しい胃痛を訴えた妻を夜中に病院へ運び込んだ。診断もはっきりしない状態で、いきなりモルヒネの投与。1錠数千円の強力な痛み止めを処方され、病院を放り出された。「痛くなったらまた来て」と。
案の定、翌日、緊急入院となった。超音波、胃カメラ、腸カメラ……。次々に検査をしたが、それらしき病変はない。専門医に「胃炎は?」と尋ねると、「胃カメラでは判別できない」と、日本ではまずあり得ない答え。超小型カメラ内蔵のカプセルをのむ、100万円を超す最先端の検査を勧められたが、断った。2泊3日の入院費がいくらだったのか。海外留学保険のキャッシュレスサービスを利用したので知るすべもないが、救急室で点滴を1本打ってもらった知人は3000ドル(27万円)を請求されたという。
高額の医療費は、医者の診療報酬が高いからだが、その医者も年間1000万円と言われる賠償責任保険の掛け金の支払いに苦しむ。元をただせば医療訴訟の増加が原因だ。米国と比べて、日本の医療は押しなべて良質で安価だと思う。医療崩壊は食い止めたい。【岡田功】
こういうのを
マッチポンプ
というのではないのか。
これまで毎日新聞は、医療従事者、特に医師に対する反感をむき出しにした
医療記事
を数多く掲載してきた。その素晴らしい報道の数々は、多くの医療系blogで俎上に載せられてきた。今や
毎日新聞という正式名称を書くのも憚るblog
すら現れている。
で、上の能天気なコラムの問題点は
良質で安価な医療は医療従事者の技能が不当に低く算定されているところから生まれていることにまるで気がついてない
点である。日本の医師はいつ過労死してもおかしくない状況で働いている。
医師は高給取り
という誤った認識の元、新聞記者より安月給でとことんまで働かされ、疲労の中、常に
患者さんの命を守る
という、ぎりぎりの選択を迫られているのだ。同じ状況は看護師など他の医療スタッフにも当てはまる。
命を守る場で、命の守護者たちが、自分の命を軽んじられている
のが
日本の医療現場
なのだ。
毎日新聞の岡田功記者が望んでいるのは
現代の奴隷とも言える児童労働によって、労賃を不当に低く抑えた結果、安価に供給された商品を「安くて品質がいい」と買いあさる富裕な先進国の消費者心理
と全く同じモノだ。
今の日本に必要なのは
医療技術に対する適切な対価の支払い
である。
命に関わる局面で
技術や労働を不当に安く値切る
ことは、医療レベルの低下と更なる医療崩壊を招くだけである。
トヨタのプリウスブレーキ問題も、結局は
ドライバーの「乗り心地」を安全より優先した結果
起きた。
安全と乗り心地のどちらが大事か
という話は、議論するまでもない。どうしても
乗り心地を優先したい
という意図があったなら、その旨を顧客に説明して売らなくてはならない。その手間を省いてはいけないのだ。
手間は賃金
である。トヨタの販売マニュアルには、ガソリン車とのブレーキの機構の違いを説明する項目はなかったのだろう。ガソリン車のユーザーがハイブリッドカーという全く異なったシステムの車に乗る際、必要な説明をするのが本当なのだが、それが徹底していたとは思えない。つまり
トヨタはハイブリッドカーに乗り換える顧客に説明する手間=賃金を「カイゼン」した
のである。
命に関わる部分の賃金をカットし、あるいは十分な休息も与えないとすると、次に来るのは、
労働の質やサービスの低下
である。
岡田功記者は
医療スタッフによる奴隷労働体制を温存し、医療にかかる経費は、なるたけ節約したいがために、「医療崩壊は食い止めたい」
だけだろうな。
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コメント
正に何を今更!としか言いようがありませんね。
さんざん殴っておいて善人面をする。
3月1日に大淀病院訴訟の判決が出ます。それに向けての予防線でしょうか。
ちなみに最近は毎日系よりもアカヒ系が何十周か遅れの取材をしまくっているようですよ。
投稿: 奈良腐民 | 2010-02-11 13:15
「医療崩壊を食い止めたい」という希望と「日本の医療は良質で安価」という現実が両立しなくなっているのに気が付いていないという点で、やっぱり何も変わってないですよ。毎日新聞。
投稿: Seisan | 2010-02-13 11:43
毎日新聞社大阪本社 編集局 編集委員 岡田 功氏は、どうも、輝かしい歴史の時は、米国留学されて、いらしゃったようで、輝かしい歴史をご存知ないかも、30代前半のようですし。デスクを通さすに書ける位置にいるのかもしれませんし。コラムですし。 笑。
投稿: omizo | 2010-02-13 15:49
2月15日発売の週刊東洋経済にも北尾吉孝氏のインタビューが出ていますけども
マスコミの記者の水準が低すぎて話にならないという話が掲載されています
経済部なのに経営の基礎、経理の常識等全く専門分野の物さえ知らない状態で取材に来るそうです
日本版ウォール・ストリート・ジャーナルの電子版を始めていますが日経の電子版には確実に勝てると思います
品質が低いのは毎日新聞だけじゃありません
投稿: ゆりあ | 2010-02-16 17:48
しょせん、変態タブロイド紙の記者ですから。
まともに取材ができるわけもなく、
当然、まともな記事が書けるわけもなく。
奴隷労働に関しては、面白いニュースが
http://megalodon.jp/2010-0217-0130-13/headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100216-00000015-nnp-l44
投稿: nyamaju | 2010-02-17 01:43
新聞本体も本体なら、読者も読者という気がします。
まいまいクラブのコメント欄がひどすぎる。
https://my-mai.mainichi.co.jp/mymai/modules/weblog_life106/details.php?blog_id=172#comment
投稿: etwa | 2010-02-17 22:21