「マスコミたらい回し」とは?(その158)毎日新聞が製薬会社に広告出稿を要請
放置医先生からコメントでご教示を頂き、検索したら、本当にそうだった。
医薬経済社のサイトより。
毎日新聞 日薬連・評議員に医療報道への「理解」求める文書毎日新聞社が自社の医療報道に理解を求める朝比奈豊社長名の文書を、日本製薬団体連合会の評議員に配布した。複数の関係者によると、数年前の医療報道で一部医師から強い批判の声があがり、現場MRへの忠告、あるいはネットへの書き込み、電子メールの送付などで、同社への広告出稿をけん制する動きが活発化。製薬企業のほとんどが出稿を停止し、いまだ半数以上、停止状態が続いているという。
文書によると同社は06年8月、奈良県で意識不明になった妊婦を転送する病院が見つからず、大阪府内の病院で死亡した事故を、産科救急の不備、周産期医療の現状と課題などを交えて報じたところ、一部医師の間で「毎日新聞の報道が医療を崩壊させた」との批判が起きた。
複数の関係者によるとこれを皮切りに、同社に広告出稿する製薬企業にも、批判の矛先が向くようになり、 10社程度あった製薬企業の毎日新聞への広告のほとんどが出稿を停止。いまも数社を除いて出稿停止が続いている。 背景には、現場MRに対する直接の忠告、2チャンネルなどネットの書き込み、電子メールの送付などで、 広告出稿をけん制する動きがあったという。
毎日新聞社は今回の文書で、「医療態勢が崩壊していた現実を報道したのであって、報道が崩壊させたわけではない」と 説明する一方、「医療報道をさらに充実させ、毎日新聞の医療に向けた姿勢をより鮮明にするよう心掛けてきた」と強調。
奈良県の医療事故報道に対する批判を「謙虚に受け止め、医療報道を深化」させた結果、 「低医療費政策」と「医師数抑制策」の問題点を強く訴える報道で、成果を出したと訴えている。
文書配布は日薬連の木村政之理事長に毎日新聞社の役員らが要請、木村理事長が竹中登一会長に相談したうえ、 認められた。「広告出稿の障害をできるだけ取り除きたいという思いがある」(毎日新聞関係者)という。
ええと、
毎日新聞は大淀病院産婦死亡事例で行った自分たちの報道が今でも「正しい」と信じている
ようですね。
はっきり言ってしまえば
大淀病院産婦死亡事例以降の「医師叩き」に偏した医療関連報道に対する怒り
が、医療従事者の中に強くある、というのが本当だと思いますが。毎日新聞が貶めたのは医師だけではない。英語で事実無根の内容を世界に発信して、日本の看護師の名誉を傷つけた
2008年のWaiWai問題
のことを、朝比奈社長はよもやお忘れではあるまい。
この記事をみると
医療関係者だけが毎日新聞に対して批判的
ように見えるけど、
毎日新聞に広告出稿する会社への「問い合わせ」を行っている方々
は、
一般市民の中にもいらっしゃる
みたいですよ。
おまけ。
奈良支局は「スクープ」として手放しで「大淀病院産婦死亡事例報道」を自画自賛
していた。2006年10月22日付毎日新聞奈良版より。亡くなられた産婦さんの実名は伏せておく。
支局長からの手紙:遺族と医師の間で /奈良
今年8月、大淀町立大淀病院に入院した五條市の****さん(32)が容体急変後、搬送先探しに手間取り大阪府内の転送先で男児を出産後、脳内出血のため亡くなりました。
結果的には本紙のスクープになったのですが、第一報の原稿を本社に放した後、背筋を伸ばされるような思いに駆られました。
「もし遺族に会えてなかったら……」
というのは、今回の一件はほとんど手掛かりがないところから取材を始め、かなり時間を費やして事のあらましをどうにかつかみました。当然ながら関係した病院のガードは固く、医師の口は重い。何度足を運んでもミスや責任を認めるコメントは取れませんでした。なにより肝心の遺族の氏名や所在が分からない。
「これ以上は無理」
「必要最低限の要素で、書こうか」
本社デスクと一時はそう考えました。
そこへ基礎取材を続けていた記者から「遺族が判明しました」の連絡。記者が取材の趣旨を説明に向かうと、それまでいくら調べても出てこなかった**さんの症状、それに対する病院の対応が明らかになりました。それがないと関係者にいくつもの矛盾点を突く再取材へと展開しませんでした。
さらに、患者、遺族は「名前と写真が出ても構わない」とおっしゃいました。「新聞、テレビ取材が殺到しますよ」と、私たちが気遣うのも承知の上の勇気ある決断でした。
情報公開条例や個人情報保護法を理由に県警、地検、県、市町村などの匿名広報が加速するなか、記事とともに母子の写真、遺族名が全国に伝わり、多くの反響が寄せられています。それは実名と写真という遺族の「怒りの力」によるものに他なりません。
支局の記者たちも、ジグソーパズルのピースを一つずつ集めるような作業のなかで、ぼやっとしていたニュースの輪郭がくっきりと見えた感覚があったに違いありません。手掛かりある限り、あきらめないで当事者に迫って直接取材するという基本がいかに大切で、記事の信頼性を支えるか。取材報告を読みながら、身にしみました。
改めて、お亡くなりになった****さんのご冥福をお祈りします。【奈良支局長・井上朗】毎日新聞 2006年10月22日
愛するご家族を失ったご遺族が怒りに燃えるのは、人間として当然の感情である。しかし
報道機関が、家族を喪って間もない個人の怒りを利用して、公共財である地域公立病院の一医師にメディアスクラムを敢行
したのが
大淀病院産婦死亡事例報道
の紛れもない一面である。そのことを反省せず、
医療態勢が崩壊していた現実を報道したのであって、報道が崩壊させたわけではない
と弁明し、
奈良県の医療事故報道に対する批判を「謙虚に受け止め、医療報道を深化」させた結果、 「低医療費政策」と「医師数抑制策」の問題点を強く訴える報道で、成果を出した
と言いつのるのは、片腹痛い。メディアスクラムは、
2007年の奈良高槻産婦搬送事例
でも同様に起こり、この時、矢面に立たされた奈良県立医大産婦人科教室には、研修医が入局を辞退するという明かな報道被害があった。
毎日新聞のこれまでの報道姿勢が正しい、とみんなが考えるなら、上記記事で毎日新聞が推測しているような
医療従事者による広告出稿への牽制
なんて起きていないだろう。長く高度な専門教育を経て、常に鍛錬を怠らないのが医療従事者であり、彼らは日々の医療行為のなかで
よりよいものは積極的に取り入れ、誤りがあれば正す
ことを繰り返し、自らの技術を高めている。もし、
医療従事者が製薬会社の広告出稿を牽制しているから、毎日新聞には広告が掲載されず、得られるべき広告収入が入らない
と本当に考えているならば、
なぜ医療従事者が不信感を持っているのか
ということを、もう一度毎日新聞は考えて頂きたい。
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コメント
毎日新聞がまともな報道をしていて、広告媒体として有用だったら、製薬会社が抜けた穴を競って他社が奪い取るはずなのだけれど?
一時、毎日新聞のHPを始めとする広告が一斉になくなったのは、医療を巡る虚偽報道、煽動報道だけが理由ではあるまいに。
医療提供者の信用を失わせた紙面を作った人物も、表彰されて評価されているようですから、再評価するところから初めてみたら如何かと思う。
懲罰的昇進をさせるのであれば、それだけの人物評価しかできない組織だということになるでしょう。
「怒りの力」を受けた反社会的メディアは消えてもらって、歴史に刻み込むべきだというのが、私見です。
投稿: Med_Law | 2010-03-19 16:44
取り上げていただき本当にありがとうございます。毎日新聞に全く反省する姿勢が無く、影響力のある貴ブログにて取り上げていただけたらと思いコメントさせていただきました。ssd先生の褌で千秋楽結びの一番をとらせていただいた様な状況であり、ハンドルネームまで出していただき本当に恐縮です。
大淀や大野の産科医師の名誉回復報道を行い、多くの医療従事者の納得できる記事を書き続ければ広告のみならず、毎日新聞を潰すなという運動ですら医療従事者からおきうると思っているのですが,そんな人情の機微は毎日新聞にはわからないのでしょうね。(患者さんが読むからといって毎日をとり続けている病院を知っています。文句を言った医師も「患者さんが・・・」といわれ黙ったそうです。)
投稿: 放置医 | 2010-03-19 17:47
そもそも、毎日新聞のレベルの低さを自覚していないところが一番の問題では?
週刊東洋経済2010 年2月20日号(2月15日発売)690円「新聞・テレビ 断末魔 」で
SBIグループ代表の北尾氏もインタビューに答えていますが新聞記者を始め記者と呼ばれる人たちの不勉強さは
余りあると、
日経BPのWebでも久保利英明元東京第二弁護士会会長も新聞記者は不勉強とコラムに書いている
本当にある程度の知性と教養のある人にとってはましてや、自分の働いているフィールドについて書かれた時
新聞という媒体の不勉強さは小学生の作文程度でしか無かったりする
高級品だと「朝日新聞の広告」には反響があるが「毎日新聞の広告」には反響が無いというデータも有ります
有効でない広告手段にお金を払わないのは当然だと思うのですが
朝比奈氏にとっては広告とは当然のように自社に出稿されるものであるとお考えのようですね
まるでヤクザか恐喝を習慣にしている不良高校生のようですね
呆れました
投稿: ゆりあ | 2010-03-19 18:44
不買や電凸の主力は一般人でしょう。
己の敵が自分たちが叩きつぶしたはずの医療者だけって思ってるあたりが痛いです。
急激な収入の低迷が何によって起きたのか理解できてない。
懲罰的昇進を素で行えるだけのことはありますね。
ホント期待を裏切らない集団です。
投稿: すぴか | 2010-03-20 00:27
まず最初にマルチ投稿お詫びします。
医療系ブログには、まったくあがらない話題ですが、
まったくマスコミで報道されないままに、議会で議決されそうだった危険な(運用の仕方次第では日本のマンガアニメ小説ゲームなどソフト関連全滅)な東京都の条例が継続審議になったということです。
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20100319_hijituzai_seisyounen/
GIGAZINEのまとめ
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1003/19/news048.html
都の青少年育成条例、継続審議が決定 6月に先送り
マンガアニメを心から愛する一人として、(ブラックジャックを読んで私は医学部に入りました。)そして、生きていくために必須なものがなくならないように、日本の将来のために、へんてこな法律ができないことを祈ります。
投稿: 麻酔科医 | 2010-03-20 16:05
昨日、日本製薬団体連合会に毎日の配布文書をおねがいしたところ、ただいま、FAXで、お送り頂きました。
Yosyan先生のところにもかきこみましたが、Iori3様はその内容に興味がおありでしょうか?
投稿: aqua2020 | 2010-03-24 14:22