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2010-04-20

研究を国民に還元しよう 「1000万円以上の研究費を貰ったら市民や小中学生にレクチャー等を」という素案

科学研究費など、研究者には
 国から手当てされる研究費
が、審査によって支給される。その内、
 総額1000万円を越える研究については、市民や小中学生にレクチャー等の形で還元しろ
という話。朝日より。


研究費1千万円→市民講座を年1回 研究者に義務化?案
2010年4月19日18時42分

 国から1千万円の研究費をもらったら年1回、子どもや市民に自分の研究をわかりやすく説明する――来年度以降、研究者がこんな必要に迫られる可能性が出てきた。
 政府の総合科学技術会議の調査会で2011年度から始まる科学技術基本計画の素案が示され、「1千万円以上の研究費を得た研究者には、小中学校や市民講座でのレクチャーなどの科学・技術コミュニケーション活動への貢献を求める」との文言が盛り込まれた。
 発表する研究論文には、一般向けにもわかりやすい数百字程度の説明を添付することも求める。内閣府の津村啓介政務官(科学技術担当)は「これから研究費を交付する方にお願いすることを考えている」と話し、具体的な制度の検討に入ったことを明らかにした。
 内閣府によると、英国では一部の研究費で1年に1回、一般向けに内容を説明することを求めている、という。3月に大阪で開かれた総合科学技術会議の地方開催で傍聴者から、こうした制度の導入の必要性が指摘され、検討するきっかけになった。
 文部科学省の科学研究費補助金だけでも、年5万人の研究代表者に平均300万円支給され、データベースによると1千万円以上の支給が採択された研究が年間1万件前後あり、対象は相当数に上りそうだ。
 昨年の事業仕分けで科学事業に厳しい判定が相次ぎ、科学界からは反発を招いた。津村政務官は「科学者と国民のコミュニケーション不足を痛感した」といい、「民主党の科学政策が見えないとの批判があるが、面白いアイデアはすぐに実行に移している」とアピールしている。(行方史郎)

さて、現実問題として
 文系と理系では貰う科研費の額が一桁違う
のである。実験に研究費をつぎ込めばつぎ込むほど、実験の精度が上がり、結果が期待できる理系はともかく
 資金が生命線
だが、文系の場合は、国際的な共同研究や大規模な調査を行う場合を除いて、総額1000万円の研究費を貰うような大規模プロジェクトはそんなに多くない。特に人文系はそうだろう。エライ先生でも、一番総額が少ない
 文科省科研の基盤C(総額500万円以下)
でまかなっておられたりする。
制度について付言しておくと、いわゆる文科省科研というのは、正しくは
 日本学術振興会の科学研究費補助金
であり、いろんなジャンルがあるのだが、最も応募者が多いのは秋の募集で、特に
 基盤研究S 総額5000万円以上〜2億円 期間は原則5年
 基盤研究A 総額2000万円以上〜5000万円 期間は3〜5年
 基盤研究B 総額500以上〜2000万円 期間は3〜5年
 基盤研究C 総額500万円以下 期間は3〜5年
に応募が集中する。この中でも
 総額500万円以下の基盤Cに応募が多い
のである。

しかし、一般市民や小中学生が聞いて面白い研究は、どう考えても研究費の総額1000万円を越える研究者がごく少数しかいない、文系の方に多いかも知れないね。
この頃の大学は、教える側と教わる側の
 教育課程の違いに基づく教育内容格差が甚だしい
ので、特に一般教養〜学部程度では、教える側は
 教育内容格差を埋める努力
をしなくては授業が成立しない。従って、多くの文系教員は常日頃から
 難しい内容をわかりやすく説明する努力を怠らない
と思うのだが、どうだろうか。
 1000万円以上の研究費を貰ったら、市民・小中学生向けレクチャーをしろ
と言われても、文系の研究者はそれほどたじろがないし、困らないだろうと思う。但し、上述のように、1000万円以上の研究費を貰っている研究者というのは文系ではごくごく限られるから、自主的に取り組むのでない限り、こうした
 市民・子ども達への研究の還元
は行われないだろう。

もったいないよね、といつも思っている。

ところで、高額の研究費を必要とする
 最先端の科学・医学研究
の場合、
 市民や子ども達がわかるように説明する
のが、かなり難しい。この場合は、研究要員に一人
 レクチャー要員を入れておく
とか、そういうことになるのかな。
 ウソにならないように、普通の人達にわかるように「翻訳」
するのには、実は実験や論文とは別なテクニックを必要とする。文系はともかく、理系の場合、たとえばiPS細胞研究の山中先生のようなごくごく一部の卓越した研究者を除いて、「翻訳」の訓練を受けた人がメンバーにいないと、なかなか言葉を伝えにくいのではないか。

で、以下は単なる推測なんだけど、
 1000万円以上の研究費を貰っている、特に理系の研究班
には、
 説明要員
が必須となった場合、
 リストラされた科学系出版社員もしくは科学系記者が仕事を求めてやってくる
ってことがあるかも。どのみち科研費では、そうした仕事は
 研究協力者扱い
で、大した「謝礼」を稼げない。となると
 説明要員派遣事業
みたいのを始める人が出てくるかな。ただ、東京以外では、ペイしないような悪寒。
1000万円以上の研究費をもらっている研究班(もしくは個人)が1万件以上ある、というのなら、その内1/3でも説明要員を求めたら、結構な需要。ただし、科研の謝礼の額は決まっているので、1回の額は大したことにはならないから、説明要員を組織化して派遣し、細かくカスリを稼ぐしかない。
雇ってくれるとしたら、5000万円以上貰っている基盤Sクラスかな。
ただ、研究費の実態を知らないヒトに説明しておくけれども
 科研の謝礼は本当に微々たるモノ
なので、これを商売にするのはかなりキツイように思う。研究者なら耐えられるけど、そうじゃないヒト、特に高給に慣れたヒトには辛い額である。高給に慣れたヒトからみると
 1回の飲み代にもならない額
しか支給されないからね。もちろん
 科研費の不正については厳しくチェックされる
ので、
 影でこっそり上乗せ
なんて出来ない。ま、その辺り
 マスコミは科研費の不正を常に報道
してるから、よく知ってるでしょ?

まあ望ましいのは、
 ラボ出身者で、こうした仕事に適した人物を説明要員にする
って感じかな。それならラボのやりたいことも分かるだろうし、あとは
 訓練
である。
 

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