杏雨書屋 特別展示会(4/19〜4/24)・研究講演会(4/24 12:30〜14:30)(その2)
2010-03-17 杏雨書屋 特別展示会(4/19〜4/24)・研究講演会(4/24 12:30〜14:30)
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2010/03/419424424-12301.html
の続き。
李盛鐸旧蔵『敦煌秘笈』の現在の所蔵者である杏雨書屋によるすばらしい展示を見、明大の岡野誠先生、斯界の泰斗の池田温先生の講演を聴く。
講演会は、普段の倍くらいの人数が集まった。今回は『敦煌秘笈』の医学文献以外を公開するということもあり、
日本中の敦煌学研究をやっている人達
も当然やってきていた。(あとでちょっと困ったことが起きる)杏雨書屋の講演会は、医学史関係が多いのだが、今回は広く東洋史・文献学等、敦煌研究だけでなく、隣接する分野からの研究者を含む人々の関心を集めたようだ。
岡野先生の講演はわかりやすく、今回展示された『開元律疏議』の写本の成り立ちから語り起こし、杏雨書屋の講演ということを考慮して、医学史関係では北宋時代、反乱者区希範を解剖した『五蔵図』についてあまり知られていない石刻資料について言及、最後は「人を食う話」でまとめられた。食人は、東洋史では桑原隲藏以来の伝統的テーマである。ただ、悪しき風習として知られる割股について、「[圭リ]股」という言葉は使ってらっしゃらなかったが、どうなんだろう。わたしは最初に「[圭リ]股」という言葉で、この
親の死病を治療するために、子どもが自分の股の肉を割いて薬とする悪習
を知ったのだが。当然ながら、股の肉を切り取った子どもは以後、歩行に困難を来すと思われるし、場合によっては死に至るのだけれども。
池田先生は、ご高齢であることによる不自由さを自ら嘆かれてから、講演の主題に入った。若干、時間を勘違いされていたようで、予定稿の恐らく1/3ほどを残しての切り上げとなった。レジュメは準備されず、今回の展示図録を元に、解説をされた。
さすが池田先生、という、今回の展示に関する突っ込みがあって、いろんな意味で面白かった。
で、杏雨書屋に移動。
改装後第一弾の展示、ということで気合い入りまくり。
李盛鐸旧蔵『敦煌秘笈』は、展示目録の東野治之先生の解説にもあるように
李盛鐸のハンコが押してあるのは全部ニセモノ
という立場を取る人もあったのだが、現物を見ると、そこまで悪いものとは思えなかった。もっとも、大英図書館やフランスのBiblioteque Nationalや北京図書館等で現物をつぶさに調査した経験がないから、わたしの目は当てにはならないのだが。
ところで「困ったこと」というのは、修学旅行気分で来ているどこかの大学の院生諸君が、展示を見て議論するのはいいのだが、その文書が展示してある前で、文書を背にしてああだこうだと言っていたことで、他の参観者がその場所にある文書が見られず、邪魔になっていた。何度かそういうことがあったのだが、特に
折衝府杖身等牒
の前で
これはオレの文書、今度の発表じゃまだこれ使わないけど
とか言ってた君達のグループ、少し反省するように。関西訛りで話すメンバーが一人もいなかったので、恐らく関東からきたグループだと思う。敦煌文書の論文を書く研究室なんて、国内にそんなにたくさんないわけで、どの先生の弟子かなんてすぐにバレる。笑われるのは君ではなく、院生の躾がなってない、ってことで指導責任を問われる先生なんだからね。
たぶん関西の大学の院生かと思うのだが、
李山之売屋契
の前で、「李山々(文書名は李山之になっているが、「之」と踊り字はマニュスクリプトでは見分けにくい)」の下に振ってあるのは
チベット文字だ
と言っていた。ホントにチベット文字なのか、わたしは唐代チベット文字の字体が分からないのでそこは不明だったのだが、いい指摘だと思った。ちなみに件の院生君は、武内紹人先生にチベット語を習ったようで、
一時期、敦煌では漢人の間でもチベット文字を使うのが格好いいというので流行った
という武内説を披露していた。
フリガナのように下に記されている文字は
「山」の下も同一の文字
なので、文書内の人名は「山之」ではなく「山々」である。文書名は「李山々売屋契」とするのが良いかと思う。
一応、帰ってからいろいろ見てるんだけど、漢字の音価から考えるに、どちらかというとデーヴァナーガリに近い系統の文字じゃないのかなあ。ただ、当時の敦煌での「山」の音価がどうで、チベット文字で転写するときの音価がどうで字体がどうだったかってことまではまだ調べてないので、単なるわたしの勘違いかも知れない。この辺り、勉強不足なので、どなたかご存じの方があればご教示願えれば幸いである。
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