人呼んで「赤松口蹄疫」 宮崎県口蹄疫は4/20の発生から33日間で14万頭殺処分決定のパンデミック規模(その31)昨夜の会見に見る「山田農水副大臣の迷走」擬似患畜である49頭の種牛をあたかも感染牛として「ウイルスをまき散らしている」
宮崎県が懇願している
49頭の種牛の助命
なのだが、疫学的には
擬似患畜扱い
になっているため、直ちに殺処分する、というのが家畜伝染病予防法の定めるところである。家畜伝染病予防法第十六条に次のようにある。
第十六条 次に掲げる家畜の所有者は、家畜防疫員の指示に従い、直ちに当該家畜を殺さなければならない。ただし、農林水産省令で定める場合には、この限りでない。
一 牛疫、牛肺疫、口蹄疫又はアフリカ豚コレラの患畜
二 牛疫、口蹄疫又はアフリカ豚コレラの疑似患畜
2 前項の家畜の所有者は、同項ただし書の場合を除き、同項の指示があるまでは、当該家畜を殺してはならない。
3 家畜防疫員は、第一項ただし書の場合を除き、家畜伝染病のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、同項の家畜について、同項の指示に代えて、自らこれを殺すことができる。
ところで、山田農水副大臣の昨日の会見は
49頭を殺処分にしろ
というところだけが
明確
で、
49頭の現在の健康状況も把握してない
上に
他の口蹄疫蔓延に対する措置
についての
認識が滅茶苦茶
な
迷走会見
になっている。てか
49頭殺処分ということ以外は実は理解してない
のではないか、と疑われちゃうのは、こうしたところで、
国の口蹄疫対策現地本部長ともあろう人物が家畜伝染病予防法に対する理解の浅さを露呈
するからで、
最初から、自分も飼っている長崎牛のライバル「宮崎牛を潰す」気だったんじゃないか
と、不信感をもって見られる原因になっている。
ちょっと長いけど、昨日の会見を引用する。農水省のサイトより。
ともかく
最初から、あるまじき発言
が出る。
山田農林水産副大臣臨時記者会見概要日時 平成22年5月24日(月曜日)18時00分~18時40分 於:本省会見室
(略)
記者 (種牛)49頭の処分について、方向性ですね、これは、どういう形に、今時点でなっているのかということを伺います。まず、そこからお願いします。副大臣 これは、家伝法に従って、当然、直ちに殺処分。
今でも、生き残っていて、ウイルスをまき散らしていることは許されない
ことだと、私の方は、それが分かった時点で、県には申し上げております。
今回、戻ってまいりまして、大臣に、その扱いをご相談させていただきました。大臣も、「それは直ちに殺処分だよね」と、「それは法律に従ってやるしかない」と。官邸も心配されているということでしたので、先ほど官房長官にも、総理にも、そのように申し上げさせていただきました。
ええと、
49頭については、同じ農場の別な場所で肥育されていた生育牛の感染が確認されてから「抗体検査」もPCR検査もされてないので「感染しているかどうか不明」
である。したがって
ウイルスをまき散らしている
というのは、
悪意を持ったミスリード
であることは間違いない。
ところで、FNNのニュース動画ではこの
「(49頭の種牛は)家伝法(家畜伝染病予防法)に従って、直ちに殺処分と。今でも生き残っていて、ウイルスをまき散らしていることは、許されないことだと」
という発言の後に
「日本の畜産の危機だと思っております。特例措置を別途、認めていくというのは、そう簡単にはいかない」
という発言をつなげて編集しているが、下に引用した
それから数問後の記者からの質問に答えたものを編集して繋いでる
である。
その後のやりとりは、まあ
疫学的に見れば普通
のやりとり。
記者 49頭の種牛のことなんですけれども、ここに、エース級の6頭、1頭亡くなりましたけれども、特例措置を、49頭にも当てはまるように要請があったと思います。家伝法に基づけば、エース級にしても、49頭にしても、どっちにしても殺処分の対象になるわけなのですが、今回、49頭の特例措置を設けなかった理由を、もう一度お願いいたします。副大臣 それは、法律に従ったまでで、当然のことだと私は思っております。口蹄疫の場合は、これだけ恐ろしい病気ですから、家伝法では、同居の牛、これを疑似患畜として、直ちに処分するということになってます。殺処分することになってます。
そうしないと、繁殖牛を、本当に家族の一員みたいに飼っている農家も数多くありますし、そういった、得難い、もう、次にこんないい繁殖牛は出ないというような繁殖牛だって、手放さなければいけませんし、いろいろなことを考えますと、やっぱり、公共機関たる、県とか、町とか、国は、そこは、率先して法を守るという遵法性というのは貫かなければいけないと、そう考えております。記者 感染拡大の観点から、殺処分が必要であると、特例措置を認められないということでいいですね。
副大臣 はい。大臣も、その趣旨でご了解いただきました。
記者 しかし、地元では、エース級の5頭と同じような特例をというご意見も、要望も強いかと思うのですが、その辺、地元への説得というか、理解を得られれば、いかがでしょうか。
副大臣 地元には理解していただかなければなりませんが、やはり、私は、本当に日本の畜産の危機だと思っております。
だから、こんな時に、やはり、それは、県も、市も、町も、国も、率先して、一致してやらなくてはいけない時に、できるだけ、特例措置を、別途認めていくということは、やはり、なかなか、そう簡単じゃないと思いますし、そうすべきじゃないと、私は思っております。
この後は
牧牛をしている人物とは思えない謎の発言
が出る。
記者 これで、宮崎県の種牛が、少なくとも、5頭だけになってしまうと、最悪の場合はなくなってしまうということが、宮崎県、あるいは日本の畜産に与える影響について、どのようにお考えかということと、あと、それに関連して、何か、民間でも、宮崎県内、6頭、種雄牛がいるという話もあるのですけれども、この事実関係について・・・。副大臣 民間の種牛も、この10キロの範囲内におります。それは、いろいろありますが、種牛は、各都道府県も、それぞれ、いい種牛を競って持ってますが、国の家畜改良センターでも、大変いい種牛を揃えております。和牛の系統も、いろいろ合わせると49系統になるそうですが、その中でも、本当に、肉牛の種牛の系統というのは、限られておりますし、その中で、今の、「忠富士」が、こうして殺処分されたからといっても、宮崎に対しては、「忠富士」その他の5頭の精液も残っていることですし、さらに、また、いろいろな支援は、大臣とも相談して、十分やっていかせていただきたいと、そう思っております。
記者 民間の種牛なんですけれども、まだ感染していないものの、ワクチン接種で殺処分ということになるのでしょうか。
副大臣 10キロ以内でしたら、当然、そうさせていただかなければいけないと思ってます。
種牛を育てる困難について、わざと
あたかも種牛の「ゼロからのスタートが容易」であるかのミスリード
をしてるとしか思えないんですが。というか
山田副大臣の発言
って
宮崎の畜産・酪農家を労る視点が徹底徹尾欠如していて「思いやり」の欠片もない
のが特徴だ。つか
同じ牧畜を営む人間だと思ってない
ようにしか聞こえてこない。
で、
5頭の種牛については「危ない」と認識
している。
記者 5頭の種牛についてなんですけれども、法律上は、もう殺処分対象と考えると、先ほど、おっしゃいましたが・・・。副大臣 5頭について、私は殺処分の対象と考えているわけじゃありません。今、経過観察をやっているところですから。大臣も、経過観察して、しばらく見ようということですから。
記者 移動の状況、同じトラックに積み込まれていて危険だとか、同じ畜舎の中で、仕切りだけであったとかいう状況を考えると、5頭も感染する可能性が高いというふうに思うのですが、それを残すという特別措置は認められるものなのでしょうか。
副大臣 これから、感染の可能性は、私も十分高いと思ってます。それについては、大臣としては、県民の気持ち考えれば、何とか特例措置を認めたのだから、もう少し観察をして、状況を見てみたいというお気持ちがあられるのじゃないかと思ってます。
記者 だとすると、何頭目が出た時点で、種牛5頭のですね、それの2頭目が出たら残りの4頭も殺処分すると、そういう判断をくだすことになるのでしょうか。
副大臣 どういうことになるか、極めて大事な問題ですので、もし、2頭目が出れば、その時点で、すぐにでも大臣と相談させていただきたいとそう思ってます。
ということで
2頭目の種牛の「感染確認」待ち
って話だ。あと5日間、確認されなければ無罪放免だが、祈るような気持で待つしかないな。
もし、2頭目の感染が確認されたら
宮崎牛の県が所有する優秀な種牛全滅
という事態に陥ることは、山田副大臣は十分承知している。
迷走が始まるのは
出荷される牛や豚についての発言
からである。
記者 10キロから20キロの出荷は、6月4日まで続けるのか、6月4日まで止めるということになるのですか。副大臣 今のところ、10キロ-20キロについては、えびのの方も、制限、搬出制限が、かかっていますから、6月4日過ぎたら、どこの地区でも同じように、えびのも自由にできるものだと思ってます。
10キロから20キロの間は、ちょっと失礼いたしました、10キロから20キロの間は、えびの地区でも今でも出荷している。搬出だけが止められているだけだね。ちょっと正確に言ってくれ、私が間違っているのなら。事務方 成体、生きたもので、10キロ-20キロの外に出すのは、そうですけれど、肉にしたものは・・・。
副大臣 えびのの方でも、10キロから20キロは、搬出制限、禁止ですが、ちょっと私も誤解しておったようですが、成体での搬出禁止だから、既に、精肉として処理したものについては、そのまま通用していると思ってます。
てか、
現地対策本部長がこの誤解
って、なんか凄い不安になるんですが。何やってたのよ。
更に、
法律上、殺処分待ちの間に死んだ家畜は補償対象になるのか
という質問については
超法規的解釈
が飛び出す。
記者 殺処分の埋却地が見つからずに、殺処分が遅れてしまっているので、例えば、一週間埋めることができないという中で、口蹄疫のウィルスによって、飼っている間に死んでしまった子豚が出てきてしまっていると、それはつまり、殺処分をした患畜として対象になるのか、補償の対象になるのかどうかという。副大臣 それは、疑似患畜として殺処分しなければいけない豚ですから、それが、自ら亡くなったとしても、これは、当然、殺処分の対象になり得る豚。
事務方 すいません、よろしいですか。
副大臣 それはできないのか。
事務方 法律上は、生きているものを殺すから殺処分になりますので、死んでしまいますと、それは殺処分対象には、厳密に言うと、ならないと思います。
副大臣 厳密に言うと、ならないというわけか。
事務方 法律上の解釈としましては。
副大臣 法律上の解釈はそうらしいのですが、私は、そうは思いませんので、できるだけ、現実に即した、実情に即した対応をできないか、検討しようと思います。
記者 つまり、確認ですけれども、一週間、埋却地が見つからずに、苦労して埋却地を見つけようと思っていたのだけれども、見つからないがために、その間に亡くなってしまった、例えば、自分のところが500頭のうち10頭がそういう形で亡くなっても、それは、殺処分をする対象が500頭であれば、500頭に対して補償がされるように措置する・・・。
副大臣 それが、補償ができるような形でできないか、検討させてもらいたいと思います。
この
家畜伝染病予防法に関するまだらな「理解」
って、一体何なんだ?
口蹄疫の擬似患畜である49頭の種牛は「法律に従ってさっさと殺せ」
と言いつつ
法律上は「死んだ家畜には認められない殺処分」を「殺処分待ちで死んだ家畜にも認めて補償したい」
という
法解釈の恣意性
が、
現地対策本部長山田農水副大臣の発言に対する「信憑性」を損なっている
んだがな。
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コメント
山田副大臣は中国から子牛を輸入する為に、宮崎の種牛には絶滅してもらったほうが都合がいいみたいですよ?
リンク先の経歴欄に下記の記述が
>1972(昭和47)年 有限会社鬼岳牧場を設立。
> 将来は牛だけでなく、中国の青島から子牛を輸入して日本の食肉基地としての”大牧場”を志す。
投稿: 通りすがり | 2010-05-25 08:42
官僚から教わるなんて、政治家の矜持としてできない!(キリッ
投稿: ちょ | 2010-05-25 21:23