2008年の学力不足大学生の話だから今はもっと大変
小学校で習うはずの
日本史の基本的内容
が、大学生から失われて久しい。てか、ゆとり教育の頃は
長岡京遷都は中学までで教えてなかった
という驚愕の事実を知ったのは、2002年だったか。あれから8年、いま大学教育は
昭和40〜50年代の高校生を教えているようなレベル
になっている。昭和40〜50年代は小学校から始まる詰め込み教育の最盛期だったから、高校生でも、すげー生意気な奴はたくさんいた。
アメリカに交換留学とかすると、
大学で数学や物理の授業を受けてきた
というのは珍しくなかった。アメリカの大学の教養で教える中身と高校の数学I/IIBや物理Iが同程度くらいだったから、向こうの高校で数学とか物理を受けると、詰まらんというのが日本からの留学生の本音だったのかも知れないが、大学に行かせてくれるかどうかは現地の高校での判断なので、
少しでも優秀な人材には、より進んだ学習環境を与える基準が出来ている
という点で、アメリカのシステムは優れている。これは高校に限らず、いろんなところであるようで、例えば
ピアノが得意な小学生
が、より高度なレッスンを受けられるように地域が支援するシステムがあったりする。日本では、こうした
優秀な人材
は
自助努力
だけで、やっていかなければならないことと比較すると、移民社会であるアメリカでは
いかに人材を発見し、社会が育てるか
が
国を発展させる鍵だ
という自覚が常にあった、ということだろう。
人材には替えがない
ということを日本は無視し続けてきた。むしろ
人材を浪費することを誇る風潮
があるくらいだ。少子高齢化が高速度で進む日本では、それはすでに
時代錯誤の害悪
でしかない。しかし、社会の上層に居座る「ベビーブーム世代」は、
自分たちが競争して来た記憶だけに頼っている
から、こうした
少ない人材を拾い集める努力
を怠っても、問題ないと勘違いしっぱなしなのである。
共同より。
学力不足に大学の65%が対応 08年度、文科省調査高校レベルの補習を実施するなど、新入生の学力不足に配慮した措置を取っている大学が年々増え、2008年度は全体の65%に上ったことが26日、文部科学省の調査で分かった。
「ゆとり教育」で学習内容が削減され、学力試験を課さない多様な推薦入試も進み、「数学が分からない経済学部生」や「生物未履修の医学部生」らへの対応に苦慮する大学も多いとされる。
文科省も「専攻分野に不可欠な基礎学力を身に着けずに進学した学生が増えている」とみており、「少子化で大学に入りやすくなったことも影響しているのではないか」としている。
調査は、昨年12月~今年1月、大学院大を除く全国の国公私立大723校を対象に実施。学力不足のほか、高校で対象科目を履修していない学生や帰国子女らに対し、「配慮している」と答えた大学は、国立70校、公立35校、私立368校の計473校に達した。07年度より10校、06年度より37校それぞれ増えた。
配慮した内容を複数回答で尋ねると、「学力別のクラス分け」が282校で最多。次いで「補習授業」が264校、理系科目に多い「既習組・未習組に分けた授業」も120校に上った。2010/07/26 10:12
生物未履修の医学生など甘いわ。
化学未履修の薬学部生
とか、信じられないかも知れないが、今は普通にいる。てか
生物未履修の医学生
って、昔から一定数いるでしょ? 国立の有名どころの医学部、たとえば北大だったと思うけど、共通一次時代には
物理・化学縛りの二次試験を課していた
ので、生物を取ってない医学生は、別に珍しくない。医学部へ行くレベルの学生なら、高校レベルの生物のリカバーは教養段階で出来るだろうけど。困るのは
物理・化学・数学を取ってない学生を入れてしまった理系の大学
で、基礎教育以前の地点から始めないと行けない。あと
医学部でも物理取ってない奴は困る
というのが昔から定説で、
生物・化学で札医の入試を突破した
知り合いがいたが、彼の場合は、
点数の取りやすい順に試験科目に指定した
そうなので、別に物理〇で医学部に入ったわけではなかった。物理〇で来られると、これまた困ることがいろいろ起きる。
二次試験で、数学や理科をちゃんと課している京大工学部だって、近年の学力低下はとてつもないレベルと言われて久しいのだから、最初から受験科目に入れてない大学で何が起こるかは想像が付く。
結局
アメリカの大学のように、入学レベルでは大したことない地点から、一流の研究者の卵にまで持っていく
ためには
修業年限を4年にせず、一定の基準を満たすまで卒業させないシステム
にするしかないんだけど、日本では文科省がそれをやらせないから、難しい。アメリカのように
入学するより卒業する方が難しいシステム
にしないと、
「学士」という名の「高校生に毛が生えた程度の若者」の大量生産
をするだけになってしまう。特に
高校レベルをクリアできずに卒業する学生
というのは、本当に困る。
大学の「品質保証」書が「卒業証明書」
だった筈なんだが、その辺り、すごくいい加減になって、もう10年以上は経っている。
学生のレベルが下がると、基礎教育以前の段階で人的パワーが必要なんだけど
大学はこの10年ずっと「後任不補充」
が続いているから、人手不足で、こうした「基礎教育以前」は
外部からの非常勤教員に任せる
しかない。外部からの非常勤に任せた場合、学部との
どの程度まで鍛えるかの共通認識が出来ているかどうか
が鍵だが、普通の大学は、非常勤教員は、この手の
教育カリキュラムの会議に呼ばない
から、たぶん
丸投げ
で、超いい加減なことになっている恐れがある。つまりは
戦略的な「学力不足の学生の底上げ」が出来ている大学はごく少数
ってことで、補習の時間が増えたからと言って
学生のレベルが大学の要求水準まで上がるわけではない
のである。要するに
基礎教育をおろそかにしてきたツケ
と
高等教育そのものに国家が金を渋ってきたツケ
が、一挙にここで出てしまっていて、
日本の高等教育での教育水準の低下
は、学生の側でも、教員の側でも、覆うべくもない状況になりつつある。
モチベーションの上がらない補習を続ければ、学生だって教員だってイヤになるだろう。要は
教育には金も時間もかかるものだ
という認識に立ち戻って、
ゆとり教育は「国の施策」だったのだから、「ゆとり教育のツケ」を時限的に国が大学に払うシステム
にしないと、この問題は根本的な解決をすることはなく
大学生の水準低下は、大学院の水準低下、ひいては日本の研究の水準低下に向かう
ことになる。結局
教育に金を惜しむことで、日本の未来を食いつぶしている
のが
今の高等教育施策
である。この分で行くと
日本は国際競争力を、予想されるより早期に失い、巨大な借金塗れの無力な小国に転落
するものと思われる。
ついでに、小学校以上の教員についていうならば
すでにゆとり教育世代が教員になっている
わけで、
教育課程がすかすかで、抽斗の少ないゆとり教育世代の教員は、自分が受けた以上の教育を子どもにするのに力不足
ということが、実際に起きつつある。
習ってないことを教える
というのが難しいらしいのだが、これが
例えば各地の、秀才だったはずの教育大卒の「先生」の実態
なわけで、本人達が自覚的に取り組まない限り、
初等中等教育の教育力低下も進む
ことになる。なんせ
ゆとり教育世代が「中堅教員」や「管理職」になるのがこれから
の話なのだ。学校というところは
自分より優秀な若い教員や生徒を年上の教員がダメにする風潮
のある閉鎖的社会だから
ゆとり教育世代の教員が、今後どういう振る舞いをするか
によって、日本の初等中等教育の水準も更に困ったことになりかねない。
ゆとり教育世代以後の「再編された教育を受けた若い世代」が教育の仕事に就いた
とき、はたして
管理職や先輩の「ゆとり教育世代」教員が、嫉妬故に彼らを阻害しない
とは、まったく保証されないのだ。
寺脇研の罪は重い。
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コメント
90年代前半に某大学に入りましたが、受験科目以外をろくすっぽ勉強しなかったため、随所で挫折しました。高校物理も剛体の力学が無くなった後?だったため、教科書だけで勉強していると”モーメント”という単語に出会うことなく終わってしまい、大学入ってから困惑した記憶が。。。なにせ教える側は高校時代に教わってきた人ばかりだから、知ってるはずとして説明しますので。
大人になってから自習しようと本を買ってますが、手付かず。子供が本棚あさって読んでくれればいいなあ。
投稿: みっちゃん | 2010-07-26 11:44
一回書いたのですが、spam認定されたみたいなので、もういっかい。
生物未履修の医学生
でした。
物理化学で受験しましたので。
高校生物は暗記科目なので、別に知らなくても困りません。
大学入って勉強して、生物ってこんなに面白いのか、と。
物理化学知っていると生物勉強するのに役立つので、生物とらない方がいいんじゃないかと思います。
投稿: physician | 2010-07-28 13:10
わたしも物理化学選択の医学生でした。友人は大半が物理化学だったような。十数年前のへっぽこ地方大学の医学部の話。
高校程度の生物であれば、正直必要ないかも。物理の方が大事な気がします。
投稿: emp | 2010-07-29 00:54
Sorry for your inconvenience.
Now I visited in China, so I cannot input by Japanese. (I can read in Japanese.) If any problems, I will write comments after returned Japan.
I think this origin problem is "AO" system. Since 1990's some university started "AO" without paper examinence due to keep more students and more income...
投稿: SY1698 | 2010-07-29 00:57
検索から来ました。今更ですが。。。
本当に必要な内容は遅かれ早かれまなばないといけないわけで、学ぶ時期が遅くなっただけ。例えば中学の内容が高校へ、高校の内容が大学へと移行されただけ。
最近はそもそも高校で開講していなかったり、時間が被ってたりで学びたくても学べないことも多い。憲法で保証された学ぶ権利を侵害している。高校でも勉強したい人は、1日12時間授業で、120単位ぐらい取れるようにして欲しい。教員は交代制でいいだろう。アメリカの大学へ行くには成績証明書が必要なので、高校で必要な科目が開講されなかったりすると受験資格を喪失することになる。江沢洋の本のカリキュラムをみるかぎり90年代ですら全盛期の半分ぐらいしかないのだから、ゆとり世代は昭和40-50年代の3割程度しか習っていないのではないか?塾へ行くより古本屋でこれらの世代の参考書を漁って勉強した方が格安でいいだろう。
しかも日本の教育では横のつながりが軽視され、中学から学部レベルの理系科目で顕著だ。物理や化学での数学の制約とか、生物の教科書でイオンを書くと検定に通らないとかは狂っているとしか言いようがない。歴史教科書問題は議論になるのにこれらに比べ理系の教科書問題は議論にすらほとんど上がらないから、政治家や文科省の好き放題だ。力学でもケプラー諸法則をニュートン力学がら導出することすらやらない。戦前の教科書のほうがレベルが高い。教科書は行間を埋めるものなのに、行間が埋めれない論理の飛躍のある悪書や、行間のない小学生でもわかるぐらい丁寧な本も最近の学生は読まない。物理未履修の物理学科生など普通に存在する。その結果一昔前の高校の参考書のような大学教科書が氾濫し、ブルバキやランダウなどの高級な本の多くが絶版となり転売屋が跋扈し、国全体の知的レベルが低下した。昔は日本語でも理系の名著が多く読めたがもはや入手困難になってしまった。
投稿: erstea | 2013-01-14 07:08