産科医療崩壊 日テレ24時間テレビで「無介助出産」放映予定 というわけで産科崩壊に悩む医療関係者を始めとする当事者達がスポンサーチェックを開始した模様
毎年恒例の
日テレ24時間テレビ
で、今回は
8人目も、助産師すらつけず、素人だけがお産に立ち会う無介助分娩で生む
という家族が登場するらしい。
いや〜、日テレってどうしてこう間が悪いんだろうね。
わたしが最初に思ったのは
8人目? 下手したら子宮破裂で母子ともに危険ではないか
ということだった。どうも、「ご安産」だったらしく、mixiに御主人が
テレビ見てね
と書き込んでいるということだそうだが、それはあくまで結果論である。
当然、
「飛び込み出産」等で崩壊の危機にある産婦人科・新生児小児科関連の医療関係者
とか
助産院や自宅出産で出産時にトラブルのあった家族
には注目されていて、
すでにスポンサーチェックも開始
されているようである。
まあ、毎年、最後に
提供読み
がありますからね。今年はそこだけ録画率が高かったりして。
お産は
終わってみるまで安産かどうかはわからない
のに
無介助分娩を堂々と全国放映
するんだからな。当然
じゃ、わたしも大丈夫
と、無批判にこの放映を受け入れ
出産トラブルが起きた
場合、どうなるか日テレはわかってないだろうね。
無介助分娩での出産トラブル
の場合
飛び込み出産より酷い状態での救急搬送
ということになる。飛び込み出産は、まだ
病院内で行われる
から、たとえば大出血しても手当ての算段がつけられるだろうが、それにも限度はあり、あまりの大出血であれば、院内に備蓄している血液では足りなくなることだってある。飛び込み出産ではなく、予定していた出産でも、そうしたことは起きかねないのが出産である。ましてや、
無介助の自宅出産で難産、大出血、臍帯が首に絡んで仮死状態
などの状況が起きたとき、産婦さんの周りには
資格のある医療関係者は一人もいない
のである。当然、仮死状態の赤ちゃんは見殺し、大出血したお母さんは生命の危機にさらされるだろう。
24時間テレビの手法からすると、そうした危険を撒き散らす可能性のあるコンテンツを
感動の場面としてフィーチャーする
だろうから、今後
24時間テレビで見て、わたしも無介助の自宅出産挑戦します
という女性が増加してもおかしくはない。その中には
当然、自宅出産など適用できないリスクの高い妊婦さんも含まれると思われる
のだが、本人が
「赤ちゃんは生まれてきたいと思ったときにきちんと生まれてくるのよ」
なんて世迷い言を固く信じていたりするので、
羊水内で胎便を吸い込んで、胎内で赤ちゃんが仮死状態になっても、「自力で出産」
などという
胎児虐待
が起きるだろう。死産でも痛ましいし、ましてや重い障碍を負うことになったら
防げるはずの事故を母親の身勝手で防がず、子どもに重い障碍を負わせた
ことになるのだが、その当たり、24時間テレビでは完全にオミットするだろうな。
ま、
少子高齢化の時代、「健康に生まれてくる子どもの権利を奪う」放送テロ
ですからね。
赤ちゃんをできるだけ外界に適応できる状態で生む
のが望ましいのだが、それを
理想の出産が赤ちゃんの健康を損なう
んだから、話にならない。
理想の出産を追及して、子どもが重い障碍を負った
なんて、虐待以外の何者でもない。どうして
赤ちゃんの健康を第一に考える
ということができないのだ。
出産の主役は赤ちゃんであって母親ではない
のだ。今は
新しい生命が生まれ出ることのすばらしさ
よりも
ママになることのかっこよさが優先
されているように感じる。それっておかしくないか?
格好いいママは、当然障碍をもった赤ちゃんも格好良く育てられる
と腹をくくっているのならともかくだ。現実は綺麗事ではない。
理想の出産
には、
子どもが障碍を負う危険性
はカウントされてないだろう。そこで夢想されている赤ちゃんは
健康でかわいい赤ちゃん
だけではないのか?
無介助出産等の場合に起きた出生時のアクシデント
で、
出生前に抱いていた「理想」から外れた我が子を、自分の「理想の出産」で手に入れた
として、その
「理想の代償」を払う覚悟
はあるのか? あるいは
「理想の出産」で不幸にしてお母さんの命が失われた場合
には、
我が子が「自分が生まれたからお母さんが死んでしまった」という罪悪感に生涯さいなまれる
ということを、一度でも考えたことがあるのか?
さっきも書いたけど
安産は常に「結果論」でしかない
のだ。
この問題には、「琴子のお母さん」さんが、早くから注目して取り上げておられる。
助産師会も無介助分娩には困っているそうだ。
「琴子のお母さん」さんのblog「助産院は安全?」の日テレ24時間テレビ関連記事は以下に。
http://d.hatena.ne.jp/jyosanin/20100823
http://d.hatena.ne.jp/jyosanin/20100824
小児科の立場からは、Yosyan先生の「新小児科のつぶやき」が以下の記事で扱っておられる。
2010-08-24 はえ縄トピ
2010-08-25 24時間テレビの暴走を考える
読んで頂くとわかるんだが、最初みんな
まさか? ウソだよね?
と思っていたのである。
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コメント
「放送テロ」ですか旨い表現ですね(^^)
今後使わせて貰います
投稿: 元外科医 | 2010-08-25 23:10
はじめまして、すでに挑戦します女性は発生しています。
小町より
「無介助分娩を理解しない実母と義母」
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2010/0823/341290.htm?g=05
怒りを通り越して呆れを感じます。
投稿: camellia | 2010-08-26 15:32
うろうろドクター様などの情報では、内容が見直しになったようです。一安心。
投稿: 山口(産婦人科) | 2010-08-26 21:21
「無介助分娩」という無謀な出産の流行に警鐘を鳴らすような内容にしたほうが良いくらいですよね。
放送局は、いつからこうなってしまったんでしょう。
投稿: るるど | 2010-08-27 14:18
出産までショー化するのか
テレビは末期ですね。
投稿: ななし | 2010-08-28 12:33