産科医療崩壊 日テレ24時間テレビで「無介助自宅出産」放映予定(その2)出産部分については放映しない模様 1例報告たった8回の分娩でアマチュアがお産のプロよりもお産の専門家になれる筈がない→追記 K2シロップおよびワクチン不投与を現在妊娠中の女性にも推奨か→当該トピックスを削除
いろいろな方が懸念し、働きかけた結果、
日テレ24時間テレビの「無介助自宅出産」放映は「出産に関する部分」を放映しない
ことになったという。山口(産婦人科)先生、ご教示ありがとうございました。mixi等関連するところでも確認できました。
mixiの該当トピックスでは、ご主人の
YouTubeでアップしたらどうなるだろう
という発言があるんだけど、まさか、カットされる予定という無介助分娩のビデオをアップするってことじゃないだろうな。
もっとも、出産部分を放映しないというだけで、全体の内容がどうなるかは不明。
(追記)
mixiの書き込みによると、当該家庭は
・ビタミンK2シロップ不投与
・ワクチン拒否派
の可能性がある。というか
無介助分娩なのだから、助産師も小児科医もK2シロップを与える機会がない
だろう。
24時間テレビの放映内容に上記2点が含まれていないか要チェックである。
ビタミンK2投与については、
母乳哺育の2200例に1例の頻度でビタミンK不足による頭蓋内出血が起きる恐れ
があり、全例投与が推奨されている。
「自然なお産」のヒトが「母乳哺育を拒否する」はずはない
ので、ここの家庭でも、子どもはビタミンK不足による出血の危険にさらされ続けたことになる。そして、最近生まれた赤ちゃんは生後3カ月くらいまではビタミンK不足による頭蓋内出血は要注意であるから、いまもその危険にさらされ続けているのである。
現在妊娠中の方が、この「8人無介助分娩」の方達と「同調」した結果
K2シロップ不投与とワクチン拒否
を宣言されているので、
日テレが24時間テレビで放映する予定の家族は「医療ネグレクト」を他者(現在妊娠中)に教唆
したってことになるんですがね。
医療のプロでもない素人が、他人と他人の赤ちゃんを生命の危険にさらす
のって、恐ろしい話ですが、日テレはもし今後この家族の「主張」に従って
無介助分娩+K2シロップ不投与+ワクチン拒否の母子に生命の危機が訪れた場合
には
公共の電波に「感動の家族物語」としてフィーチャーした筈の主人公達が一方で「素人のこうした医療ネグレクト推奨」
しており、今後
テレビ放映によって「有名人」になり更に「素人の発言が権威化」して一人歩きする恐れ
が生じ、
「医療の素人の無責任な発言」に影響された妊婦さんや赤ちゃんが実害を受ける「公共の福祉の損失」
について、責任を取るんでしょうな。当然
24時間テレビの提供スポンサー
も、
こうした無責任な、医療に対する越権行為を当然のものとする人物の全国放映に金を出した
ってことで、社会的責任は免れないと思いますがね。
なんせ、
テレビの影響は大きい
のだ。今後
「テレビでは映せなかったけど実はね」という形で「8人無介助分娩」家族が社会的承認を受けたと勘違い
して
いよいよ「医療ネグレクト」を他人に推奨する発言・行動を拡大する
可能性無しとしないんだけど。いまmixiで行っている発言だけでは済まなくなったとき
日テレはどういう責任を取るのか
わたしは知りたい。
なお、助産師会は8/26付で
無介助分娩の危険性についての警告
を発表している。
警告! 助産師・医師の立ち会わない無介助分娩は危険です!(PDF)医師や助産師の介助なしに、夫婦だけで出産する無介助分娩(プライベート出 産とも言われています)が、あたかも自然な出産であるかのように吹聴されるケースが見受けられます。しかし、無介助分娩では緊急時の対応が間に合わず、 事故が起こることもあるため大変危険です。 数年前、育児文化研究所の推奨する無介助分娩が社会問題となりました。それ に伴う事故も起こり、開業助産師がその事故に巻き込まれる例も起こっていま す。
助産師はその業務の中で自然性を尊重し、安全な出産と母子の健康を支援しています。自然な分娩を大切にしながら、必要な時にはしかるべき医療を受けられるようにすることも2つの命を守るための大切な責務だと考えます。そのた め本会としては、安全の確保のために『助産所業務ガイドライン』を整備し、 ガイドラインを遵守した助産業務の遂行を指導徹底しています。 現在妊娠中の方、ご家族の皆様におかれましては、助産師あるいは医師の立ち会いのもと安全・安心な出産を迎えられますよう、ご理解ご協力をお願いいたします。2010 年 8 月 26 日
社団法人日本助産師会 安全対策室 安全対策委員会
まあなんか凄い文章なんですが、一応、
警告
を出したことは評価したい。
(追記終わり)
(追記その2)
mixiの当該トピックスは、先ほど全部削除され、現在、見ることが出来ない。
一応、問題の発言をキャプチャしておいた。
(12:50 追記終わり)
ところで、
うちでは8人無介助で生まれて大丈夫
ということは、普通に考えれば
1例報告
に過ぎないことに、注意しないといけない。
ある1人の女性が8人子どもを無介助で産んで、みんな無事だった
というだけのことである。これを錦の御旗の如くに掲げて
みんなが何人子どもを無介助で産んでも、全てのお産が順調で全例母子共に無事
と読み替えることはできないのだ。
ある個人の経験が「一般化される」
ことに、みな不安を懐いている。てか、
テレビ放映されることで「無介助分娩が社会権を得る」ことが問題視
されているのである。もし、
個人の成功例がすべて一般化できる
のであったら、世に数多ある
わたしは〜で〜に成功しました
という本の通りにやれば、全員望みのものを手に入れられているはずだ。そうでないことは、はっきりしているから、毎日新しい「成功本」が陸続と出版されるのである。
個人の成功例は一般化できない
のは常識だし、当然、
お産に関しても同じ
である。「成功本」が作られ、売れるのは
そこに書かれている個人名と個人の体験が「自分にも当てはまるように錯覚」させる効果
があるからだ。
成功した個人が「成功からほど遠い印象」の人物
であればあるほど、この手の「成功本」は売れるのである。
で、
うちでは8人無介助で生まれて大丈夫
という「1例報告」のみで
無介助分娩の「全能性」
を信じ切っている方がいるように、もし、
すべてのお産が同じように安全
なのなら、周産期母子健康センターなど不要なのだ。
そうではない、
お産は一回一回みんな違う
から、
250例に1回という、危険なお産から赤ちゃんとお母さんを守るため
に、日夜、産科・小児科の先生方はそれこそ命を削って闘っているのである。
病院で管理されるお産はイヤだ
という至って個人的な好悪の理由だけで、周産期のプロを嘲笑うような「自然なお産」推奨派がいたとするなら、それは
これから生まれてくるすべての赤ちゃんとそのお母さんの敵
である。
今回の「8人無介助分娩」の経験則についていうならば
たった1人の8回のお産だけで、残りすべてのお産について自信満々に語られても困る
のだ。日本ではいま毎年100万人以上の赤ちゃんが生まれてくる。そして、
産科医が1年に扱うお産の数は、日本では100例を越える
のである。前に計算したときは平均140〜150回だった。
2007-05-29 産科崩壊 「産婦人科」を標榜する36-60歳の現役医師は全国で5664人 24-35歳の若手医師は2318人(平成16年度) 全員がお産を扱うわけではない
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/05/366056642435231_f19b.html
控えめに見積もって、一人の産科医が1年に100例をお産を扱うとして、10年たてば1000例だ。26歳から10年として、36歳の産科医であれば、
1000人(双胎以上も含まれるだろうから実数はそれ以上)の赤ちゃんを取り上げてきている
のだ。
よくいる「自然なお産」推奨派の人々に
1000例のお産を取り上げたことがあるか
聞きたい。1000例お産を取っていれば、危険なお産には遭遇している可能性がある。そうではなく
100例程度の自験例で「たまたま危険なお産がなかった」だけの幸運
を根拠に
「自然なお産」は「安全」
というのは、まったくもって「幸運」だっただけである。妊婦さんがこのスローガンを信じ込んでしまい、危険なお産が誘発されるとしても、恐らくそれら
「自然なお産」は「安全」
を唱える人たちは、決して責任を取らないだろう。
「自然なお産」は250例の1回の頻度とされる「危険なお産」を救えない
のである。かつて日本の母子死亡率は高かった。それがいま
世界でもトップに近い低い水準に至った
のは、
250例の1回の危険なお産に対処する医療体制がある
からである。つまり
100万人の赤ちゃんの内、4000人は生まれてくるときに「危険なお産」
だったのである。250例に1回というと大した数ではないように見えるだろうが、
毎年4000人以上の赤ちゃんとお母さんが「危険なお産」に遭遇している
と書き直せば、
どうして周産期医療に携わる産科・小児科の先生があれほど激務なのか
が少しは理解出来るのではないか。
ところが「自然なお産」推奨派がそういう「危険なお産」を扱うと、
誤った「経験則」に従って、「危険なお産」の徴候を見過ごす
ために
手遅れに近くなってから病院に搬送
されることが多いので、いかに最先端の設備を整えた病院であったとしても、赤ちゃんやお母さんを救うことは難しくなる。
何度でもいう。
「安産」は結果論に過ぎない
のである。
(更に追記)
件のご家族は首都圏在住らしいですね。
しかも産科・小児科の医療資源が乏しい、といわれている自治体在住である。
ため息しか出ませんね。
(追記終わり 14:30)
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コメント
こんにちは。
いつも拝見しています。
今回は私のブログもご紹介くださり、有難うございました。
私のほうでもトラックバックしたかったのですが、何故かエラーが出ちゃって出来ないんです。
無介助分娩に走る人たちの思想、構造をおもうと、なかなか終わらない問題で気が重くなります…
有難うございました。
投稿: 琴子の母 | 2010-08-27 13:25
うちでは宝くじを8回買いましたが3等しか当たったことがありません
まわりのみんなもそうです
だから宝くじに1,2等は存在しないに違いありません
(参考: 2等1/1000、3等1/10)
投稿: bero | 2010-08-27 17:45