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2010-08-06

厚労省が推進を図ろうとする「代替医療」の一派ホメオパシーを標榜する助産院でビタミンK欠乏によって起こる頭蓋内出血予防のために医学的に効果が実証されているビタミンK2シロップを不投与 代わりに「レメディ(毒入り砂糖玉)」の超希釈液を与え新生児が頭蓋内出血死→NHK「プロフェッショナル」にも登場した推進派の神谷助産師は「これまでレメディとビタミンK2シロップを選ばせているが、おかあさん自身がレメディを選んだ」と主張

亡くなられた赤ちゃんのご冥福をお祈りします。適切なビタミンK投与さえ行われていれば、生まれて間もない赤ちゃんの貴い命が失われる可能性が低かったと思うにつけ、ご両親のご無念はいかばかりかと拝察致します。

このところ医療系blogの一番の関心事は
 ホメオパシーを標榜する助産院で、新生児の頭蓋内出血予防のためにビタミンK2シロップを与えず、代わりに「レメディ」と呼ばれる「毒を混入した砂糖玉」をものすごく希釈したものを与えて、新生児が頭蓋内出血死した事例
で、現在、山口地裁では、民事賠償裁判が開かれている。
朝日が詳しい。


「ホメオパシー」トラブルも 日本助産師会が実態調査

2010年8月5日4時34分

【ホメオパシー特集】レメディーと呼ばれる砂糖玉。原材料名にはテンサイ糖と書かれている(写真)

 「ホメオパシー」と呼ばれる代替療法が助産師の間で広がり、トラブルも起きている。乳児が死亡したのは、ホメオパシーを使う助産師が適切な助産業務を怠ったからだとして、損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。自然なお産ブームと呼応するように、「自然治癒力が高まる」との触れ込みで人気が高まるが、科学的根拠ははっきりしない。社団法人「日本助産師会」は実態調査に乗り出した。
 新生児はビタミンK2が欠乏すると頭蓋(ずがい)内出血を起こす危険があり、生後1カ月までの間に3回、ビタミンK2シロップを与えるのが一般的だ。これに対し、ホメオパシーを取り入れている助産師の一部は、自然治癒力を高めるとして、シロップの代わりに、レメディーと呼ぶ特殊な砂糖玉を飲ませている。
 約8500人の助産師が加入する日本助産師会の地方支部では、東京、神奈川、大阪、兵庫、和歌山、広島など各地で、この療法を好意的に取り上げる講演会を企画。2008年の日本助産学会学術集会のランチョンセミナーでも、推進団体の日本ホメオパシー医学協会の会長が講演をした。同協会のホームページでは、提携先として11の助産院が紹介されている。
 日本助産師会は「問題がないか、実態を把握する必要がある」として、47支部を対象に、会員のホメオパシー実施状況やビタミンK2使用の有無をアンケートして、8月中に結果をまとめるという。
 また、通常の医療の否定につながらないよう、年内にも「助産師業務ガイドライン」を改定し、ビタミンK2の投与と予防接種の必要性について記載する考えだ。日本ホメオパシー医学協会にも、通常の医療を否定しないよう申し入れた。
 助産師会の岡本喜代子専務理事は「ホメオパシーを全面的には否定しないが、ビタミンK2の使用や予防接種を否定するなどの行為は問題があり、対応に苦慮している」と話している。
 助産師は全国に約2万8千人。医療の介入を嫌う「自然なお産ブーム」もあり、年々増えている。主に助産師が立ち会うお産は、年間約4万5千件に上る。
 テレビ番組で取り上げられたこともある有名助産師で、昨年5月から日本助産師会理事を務める神谷整子氏も、K2シロップの代わりとして、乳児にレメディーを使ってきた。
 取材に応じた神谷理事は「山口の問題で、K2のレメディーを使うのは、自重せざるを得ない」と語る。この問題を助産師会が把握した昨年秋ごろまでは、レメディーを使っていた。K2シロップを与えないことの危険性は妊産婦に説明していたというが、大半がレメディーを選んだという。
 一方で、便秘に悩む人や静脈瘤(りゅう)の妊産婦には、今もレメディーを使っているという。
 ホメオパシーをめぐっては英国の議会下院委員会が2月、「国民保健サービスの適用をやめるべきだ。根拠無しに効能を表示することも認めるべきではない」などとする勧告をまとめた。薬が効いていなくても心理的な効果で改善する「偽薬効果」以上の効能がある証拠がないからという。一方、同国政府は7月、科学的根拠の乏しさは認めつつ、地域医療では需要があることなどをあげて、この勧告を退ける方針を示している。
 日本では、長妻昭厚生労働相が1月の参院予算委で、代替医療について、自然療法、ハーブ療法などとともにホメオパシーにもふれ、「効果も含めた研究に取り組んでいきたい」と述べ、厚労省がプロジェクトチームを立ち上げている。(福井悠介、岡崎明子)
     ◇
 〈ホメオパシー〉 約200年前にドイツで生まれた療法。「症状を起こす毒」として昆虫や植物、鉱物などを溶かして水で薄め、激しく振る作業を繰り返したものを、砂糖玉にしみこませて飲む。この玉を「レメディー」と呼んでいる。100倍に薄めることを30回繰り返すなど、分子レベルで見ると元の成分はほぼ残っていない。推進団体は、この砂糖玉を飲めば、有効成分の「記憶」が症状を引き出し、自然治癒力を高めると説明している。がんやうつ病、アトピー性皮膚炎などに効くとうたう団体もある。一方で、科学的な根拠を否定する報告も相次いでいる。豪州では、重い皮膚病の娘をレメディーのみの治療で死なせたとして親が有罪となった例や、大腸がんの女性が標準的な治療を拒否して亡くなった例などが報道されている。

神谷整子助産師って、どっかで名前を聞いたことがあるな、と思ったら、
 NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の第六十回
に出てきた、あの助産師さんじゃありませんか。
こんな内容でしたね。


第60回(2007年8月28日放送) 命の神秘によりそって 助産師 神谷整子

手で診る
神谷は健診の時、母体に触れて、赤ちゃんの成長具合から母親の体調までを手で診ていく。毎回の健診で1時間以上をかけて全身を診ながら、妊娠経過に異常がないか、わずかなことにも目をとめて異変の兆しをみつけ、気になることは早期に手をうち予防する。 全身を触ることで、母親が緊張しやすいタイプなのか、リラックスがうまくできるタイプなのかなども感じ取り、お産の時に備えようとする。

経験に、頼らない
お産には常にリスクがある。時に、命に関わることもある。神谷はお産にたちあう時、いつも、自分の経験に頼らないことを信念としている。お産は百人百様。一人一人が違う。過去に同じような症状で何も問題がなかった妊婦がいたとしても、あえてそのことは忘れ、何かおかしいなと思った時には、常に、なんだろうと、疑問をもつ。経験を積むほど、自分を過信してはいけいないと、自分を戒める。

助産師=伴走者
妊娠から出産までの10か月の間、女性には精神的にも肉体的にもさまざまな変化がおとずれる。不安に陥りがちな女性たちに神谷は常に寄り添い、悩みがあれば、ともに考え、お産に向かって心身を整えていく。また、子どもが産まれた後も、子育てに悩む母親から24時間体制で電話相談に応じる。神谷は助産師を「伴走者」である、という。

プロフェッショナルとは
「私の中ではやっぱりそのときそのとき最善を尽くすことができる者というふうに私の中では思っているんですけど」神谷整子

拙blogで番組予告については書いたけど、中身を見て、感想を書く気を失った回だったな。
 2007-08-28 NHK総合 プロフェッショナル 命の神秘によりそって@8/28 22:00-22:45
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/08/nhk828_22002245_6c93.html

さて、
 ビタミンK不足で頭蓋内出血が起こる
というのは分かっているわけで、小学生でも
 だったら、赤ちゃんにビタミンKを飲ませてあげたらいいのよね?
と答えるだろう。それを
 砂糖が主成分で「薄めて使うレメディ」なる「謎の物質」がビタミンK2シロップの代わりになる
という説明をした上で
 どちらにします? 西洋医学で使う「ビタミンK2シロップ」? それともおかあさんが望む「自然なお産」の考えに沿った、ホメオパシーの「レメディ」にしますか?
と尋ねれば
 「自然なお産」を実現するべくわざわざ「ホメオパシー」を標榜する助産院を選んだおかあさん

 もちろん、西洋医学のそんなシロップよりも「レメディ」にします
と答えるのが普通じゃないのかね、神谷助産師。あくまで
 おかあさんに選ばせてますよ
というのなら、
 ビタミンK2シロップを与えないと1/700母乳哺育の場合は1/2200の確率で赤ちゃんに頭蓋内出血が起きて、死亡することもありますよ
という「医学的事実」も説明していないといけないんですがね。どうも
 レメディ使用を「自重」
なんて、朝日新聞の記者に答えているところをみると
 この問題さえなかったら「当然レメディを推進する」と考えている
ように見えますがね、ま、朝日の記者の「作文」かも知れませんがね、ええ。もっとも
 天下の神谷助産師の「おすすめ」を断ってまで「ビタミンK2シロップをお願いします」という勇気のあるおかあさんは存在しない
と思われる。そこまで言うのだったら、神谷助産師にお産取ってもらうなんて思わないでしょ。

で、ひょっとして
 神谷助産師の取り上げた赤ちゃんに新生児メレナもしくは頭蓋内出血が起きたことはない
ってことなんでしょうかね。

(追記 14:36)
山口(産婦人科医)先生からコメントを頂いて、上記の発症率を改めた。山口(産婦人科医)先生、御教示ありがとうございました。
若干古い論文だが、エーザイの"Clinician"336号(1984年)は
 新生児の医学
という特集を組んでおり、ビタミンK欠乏症についての知見について、産業医科大学小児科の白幡聡助教授(当時)が
ビタミンK欠乏症
という論文を書いておられる。この中で、白幡先生は、


 乳児ビタミンK欠乏性出血症は予後不良
 本症は、主として二つの理由から乳児の保健指導に携わっている関係者の間で大きな関心を集めている。
 そのひとつは、ほとんど母乳哺育児に発症することである。人工栄養が中心となっていた乳児哺育の流れを変えるために、二〇年程前から小児科医、産科医、助産婦、保健婦そしてマスコミも口を揃えて母乳による子育てを母親に説いてきたが、乳児にとって自然が与えてくれた最高の贈りものであるはずの母乳を飲んでいる場合に限って発症するというのであるから問題は深刻である。
 しかも、新生児メレナは七〇%以上が消化管出血であるのに対して、乳児ビタミンK欠乏性出血.症の九〇%近くは頭蓋内出血を起こす。そのため本症の止血治療それ自体は容易であるにもかかわらず、予後はきわめて不良で全治する例は半数に満たない。これが第二の問題点である。

 厚生省特別研究班の調査結果から
 厚生省心身障害研究「幼若乳児に見られるビタミンK欠乏性出血素因に関する研究」研究班(中山健太郎班長)昭和五三年から五五年までの三年間について全国調査を実施した結果では、わが国における発現頻度は、全出生四〇〇〇人に一人母乳哺育児に限ると一七〇〇人に一人と推定されている。このうち、肝機能障害、胆汁流出障害、下痢、抗生剤の長期投与などのビタミンKの欠乏をきたす誘因が認められない特発性乳児ビタミンK欠乏性出血症は七八・六%であった。したがって逆算すると、特発性乳児ビタミンK欠乏性出血症の発現頻度全出生五〇〇〇人に一人母乳栄養児二二〇〇人に一人となる。
 1.性別“男児が女児より一・八倍多い。
 2.発症年齢“生後二週からニカ月までの間に九四・九%の症例が集中している。
(以下略)

と厚生省(当時)の1978〜1980年の調査結果を基に述べられている。
 1984年、つまり今から26年前には分かっていた事実を、無視して
 「レメディ」というビタミンK不足には医学的根拠が証明されていない物質をビタミンKの代わりに与えた
のが、果たして正しい「赤ちゃんを守るお産」なのかどうか。
(追記終わり)

ビタミンK投与は、1980年前後から始まったので、いまの若いおかあさん方を生んだおばあちゃんは、ひょっとしたらビタミンK投与は知らないかも知れない。
ビタミンKは、母乳には不足している。そのため、母乳で子どもを育てていた「自然なお産」しか選択の余地がなかった時代では、ビタミンK欠乏による乳児の病気は普通にみられた。
1990年にエーザイが発行した"Clinician"の395号は「ビタミン学の新しい展開」という特集を組み、そこで秋田大学の真木正博教授(当時)が、
新生児・乳児とビタミン ビタミンK欠乏による新生児メレナ・乳児頭蓋内出血 そして母体血・母乳へのビタミンK移行などについて(PDF)
という論文を寄せておられる。新生児メレナは、
 生まれたばかりのあかちゃんがタールのような真っ黒い便をする
ことで判定される。新生児の便は、通常、母乳もしくはミルクしか飲んでないから、そんな色にはならない。これは消化管等からの出血が真っ黒な色を付けるのである。新生児メレナには真性と仮性があるが、真性は消化管からの出血が真っ黒い便になるもので、かつてはビタミンK欠乏によるものが中心だった。だいたい1980年代までの育児書には
 新生児メレナ
について、恐怖を煽る内容が書かれていたように記憶する。ビタミンK欠乏が原因だと分かるまでは、新生児メレナは、予想が付かない、非常に怖い新生児の病気として恐れられていた。同様に、ビタミンK欠乏によって、消化管以外からも出血があり、それが脳で起きると頭蓋内出血となる。これも恐ろしい新生児の病気である。今回の赤ちゃんが亡くなったのも、頭蓋内出血が原因だった。
ビタミンK欠乏による新生児メレナや頭蓋内出血を防ぐには、まず、おかあさんが出産前にビタミンKを服用することで、赤ちゃんへビタミンKが補われる。産まれた後は、適宜ビタミンK2シロップを飲ませる。特に
 母乳だけで赤ちゃんを育てている場合はビタミンK不足に注意
しなくてはならない。今回の赤ちゃんも、
 わざわざホメオパシー推進派の助産院で出産
したのだから
 おかあさん、赤ちゃんは母乳で育てましょうね
という教育を施されていると思われる。
 そうでなくてもビタミンKが欠乏する母乳のみで育てられ、ビタミンK2シロップを投与されない
となると
 産科ではビタミンK全例投与で見られなくなったはずの「新生児メレナ」やビタミンK欠乏による「頭蓋内出血」が昔と同じように起きる
ということになるのだ。粉ミルクで育てている場合は
 粉ミルクにはビタミンKが添加されている
ので、
 ビタミンK欠乏にはなりにくい
のである。だから
 母乳育児によって「起きてしまう可能性のある新生児の病気」がビタミンK欠乏による「新生児メレナ」や「頭蓋内出血」
なのである。
 絶賛されがちな「母乳育児」
だが、ビタミンK欠乏などいくつかの落とし穴がある。そして、
 母乳育児にはこうした「リスクがある」
という基本的な医学的常識を、今回係争中の助産院が知らなかったとは思えないのだ。だって
 お産のプロ
なんでしょ?

実は、ビタミンK不投与による新生児の頭蓋内出血は、産科でも2003年に静岡で起きた事がある。これは
 新生児にはスクリーニングをしてビタミンK2シロップを投与する静岡県の特殊事情
が絡んだ問題だった。一般的には、産科で生まれた赤ちゃんには、
 全例ビタミンK2シロップ投与
が行われている筈だ。
このビタミンK2シロップ投与については、東北薬科大学の中村仁教授(臨床薬剤学)がご自身のサイト"pharmacist.com"で次のように説明しておられる。


新生児に対するビタミンKの予防投与

 「乳児ビタミンK欠乏性出血症」の予防の目的で処方されるケイツーシロップについて解説します。
 乳児ビタミンK欠乏性出血症とは、生後1ヶ月前後の乳児にみられる、ビタミンK依存性凝血因子の欠乏による出血症に対する仮称です。健康乳児が突然の頭蓋内出血を主徴として発症する本症は、予後が重篤であること、母乳栄養児に多くみられる点が特徴です。1980 年に厚生省心身障害研究班で予防に関する研究が行われ、以下の勧告案が出されました。(出生24時間以内、6日目、1ヶ月後にビタミンK2シロップ 2 mg/1ml を10倍に希釈*して 2 mg/10ml として内服させる。)この予防投与法に関しては、当初その有用性に関して関連学会からまちまちの見解が出されていました。しかし、1986 ~ 1988 年と1988 ~ 1990 年の二回にわたる厚生省班研究の調査により、K2シロップ3回投与法の有用性は現時点ではほぼ確立されています。
 東北大学病院での予防投与法は、(出生後1日目、5日目にケイツーシロップ 2 mg を投与、1ヶ月検診の際に 2 mg を半量ずつ2日間で投与)となっています。

 *本シロップは高浸透圧であり、壊死性腸炎(necrotizing enterocolitis: NEC)が発症する危険性があるため。

で、ひょっとしたらビタミンK2シロップを一部助産院が投与しない原因は、この
 ビタミンK2シロップは高浸透圧であり、壊死性腸炎(necrotizing enterocolitis: NEC)が発症する危険性があるから10倍に希釈して使用
というこの前半の部分だけを取り出して
 ビタミンKシロップを飲ませると赤ちゃんがお腹を壊すことがあるんですよ
と説明しているのではないかと疑われる。てかさ
 10倍希釈を飛ばして、説明している
のなら、それって
 ほとんど医学的知識がない
ってことになる。だって
 ビタミンK2シロップの代わりに使う「レメディ」は希釈すればするほど効果がある
んでしょ? まさか
 ビタミンK2シロップの「必要欠くべからざる10倍希釈で使用」については触れない
とか、そういう説明をしてるんじゃないでしょうね?

しかし、
 レメディの希釈
って、とんでもないことになってますがね。K2シロップの10倍希釈なんて濃度はお呼びじゃないのだ。
同じ朝日の、これもよく書かれた記事
問われる真偽 ホメオパシー療法 2010年7月31日付 朝日新聞東京本社朝刊beから
では、次のように説明している。


 ホメオパシー治療は「レメディ」と呼ばれる丸薬のようなものを飲んで行う。「症状を起こす毒」を、よく振りながら水などで薄め、砂糖粒に染み込ませたものだ。薄める毒は、毒草のトリカブトや昆虫、鉱石など約3千種類。
 ホメオパシーでは「薄めるほど効く」ともされる。その薄め方は半端ではない。一般的なレメディでは、10の60乗(1兆を5回掛け合わせた数)分の1に薄める
 ここまで薄めると毒の物質は、事実上もう入っていないが「薄める時によく振ることで、毒のパターンが水に記憶される」と、協会会長の由井寅子さんは解説する。

ええっと、なんか
 水の記憶
って、どっかで聞いた懐かしいフレーズですね。(棒読み)

この「レメディ」の超希釈が有効だとするなら
 パストゥールの「純培養」の概念は嘘
ってことですね。パストゥールは、炭疽菌の純培養に際して、次のような手順を踏んだ。(シンガー『医学の歴史』より)
1. 炭疸病の血液の1滴を、中性か弱アルカリ性の尿を培地として、その50ccに植え付ける
2. 菌の繁殖に必要な時間が経過してから、培養液の1滴を無菌の尿50ccに植え付ける。(約1000分の1に希釈)
3. これを続けて、百万分の1、10億分の1に希釈
4. 10回培養(1×1000×1000×1000×1000×1000×1000×1000×1000×1000=1000の9乗=10の27乗分の1)
5. 10回培養を繰り返し、もとの血液は10の27乗分の一に希釈され、「血液の成分はすべて破壊された」が炭疽菌のみは希釈されなかった
って話なんですけど、
 薄めれば薄めるほど効果がある
って、じゃあ、これを応用するなら
 血液も薄めれば薄めるほど「効果がある」
ってことになって、
 パストゥールによる純培養では「薄められた血液の記憶が影響」
とかって誰が信用するんだか。まあ
 近代医学の否定
というよりも
 近代科学の基礎的手順も否定
しちゃうのって、すごすぎ。

おまけ。
新生児や乳児のビタミンK欠乏症についての厚生省(当時)の研究報告は以下に。
「厚生省心身障害研究報告書」 昭和61年度 新生児管理における諸問題の総合的研究 「奥山 和男」
「厚生省心身障害研究報告書」 昭和63年度 新生児管理における諸問題の総合的研究 「奥山 和男」
この時の研究を元に、現在の
 産科での新生児へのビタミンK2シロップ全例投与
が行われている。

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コメント

さすがに1/700は確率が高すぎると思われます。よそのブログでは1700から2000人に一人とされていますので。

投稿: 山口(産婦人科) | 2010-08-06 14:25

日本ホメオパシー医学協会がなにやら反論しております。
http://jphma.org/About_homoe/jphmh_oshirase0805.html

特に最後の

「100倍希釈を30回繰り返した場合、10の60乗倍希釈となり、原成分はほぼ残っていないのではなく、1分子も全く、残っていません。」

に至ってはもう笑うしかありません。医学を名乗ったカルトを宣言しているようなものです。

投稿: 南島の管屋 | 2010-08-06 16:58

ホメオパシーも完全な、理論的介入であって、自然じゃありません
もちろん、その理論が完全に破綻しているので、条理に基づかないのですが・・・・・

サラ金が、「ご利用は計画的に」ということが出来ない浪費家で経済観念のない客を商売相手にするのと同じように、医療介入を忌避する愚か者を相手に助産師が暗躍しているのが実態でしょう

「効用 = (治療効果) / (治療費用)」、「単位治療費用 =(治療費用)/(治療効果)」
と定義すれば、ホメオパシーは効用ゼロで、単位治療費用は∞です
患者利益にならないものは、積極的に排除することも、医療には必要なことです

投稿: Med_Law | 2010-08-07 04:06

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